小泉首相の記者会見を、各メディアはどのように伝えているか

今回の解散の評価は、世論は割と政府(小泉首相)側を支持しているような気がするので、
首相の衆院解散、「賛成」48% 本社世論調査朝日新聞

2005年08月10日00時00分
 
郵政民営化法案が参院本会議で否決され、小泉首相衆院の解散・総選挙に踏み切った直後の8日夜から9日にかけて、朝日新聞社は緊急の全国世論調査を実施した。今回、首相が解散したことに48%が賛成し、反対の34%を上回った。廃案に終わったものの、首相の郵政民営化への取り組みを55%が「評価する」とし、53%が「今後も民営化を目指すべきだ」と答えた。9月11日の投票を控え、望む政権の形では、「自民中心」(38%)が「民主中心」(28%)を上回った。
内閣支持率は46%で、前回7月調査の41%から上がった。
解散を断行した首相の政治手法について、自民党内には「強権的」との見方があるが、自民支持層の60%は解散に賛成と回答。民主支持層(51%)など他党の支持層より多く、首相の行動に理解を示した形だ。
首相の郵政民営化への取り組みについて、「評価する」と答えた人は自民支持層が最も多く82%。「今後も民営化を目指すべきだ」との答えも自民支持層で71%と、一番多かった。
一方、党の方針に反して法案に反対した自民党国会議員の行動には、「共感しない」(47%)が「共感する」(34%)より多く、自民支持層では「共感しない」が58%にのぼった。
法案が参院で否決されたこと自体は、「良かった」(40%)と「良くなかった」(40%)で見方が二分された。
総選挙には82%が「関心がある」と回答。郵政民営化が主要な争点になるかを聞いたところ、67%が「争点になる」と答えた。投票先については「まだ決めていない」が38%と最多で、自民29%、民主15%、公明2%などとなっている。
政権選択では「自民中心」が「民主中心」を引き離しているが、無党派層では「民主中心」を期待する人が「自民中心」を大きく上回った。
首相が解散直後の記者会見で「総選挙の争点にはしない」と明言した靖国神社の参拝については、「続けた方がよい」が41%に対し、「やめた方がよい」が47%だった。6月調査では36%対52%で、引き続き、中止を求める意見が継続を求める意見を上回っている。

    ◇

調査方法 8、9の両日、全国の有権者を対象に「朝日RDD」方式で電話調査した。対象者の選び方は無作為3段抽出法。有効回答は973人、回答率は58%。

「解散は当然」52%、首相続投は賛否二分…読売調査(読売新聞)

読売新聞社は、衆院解散直後の8日夕から9日夜にかけて緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。
小泉首相衆院を解散したことを「当然だ」と思う人が5割を超えたものの、郵政民営化関連法案の採決では、首相の強引な政治手法に批判的な人が少なくなく、選挙後、首相が続投すべきかどうかについても、賛否が二分されるなど、無党派層を中心に、小泉人気の陰りを浮き彫りにする形となった。
参院での同法案否決を受けて、首相が衆院を解散したことについて、「当然だと思う」52%が、「そうは思わない」35%を上回った。
しかし、法案採決で、反対や棄権をした自民党議員が相次いだことについて、「首相の方が問題」と思う人39%と、造反した「自民党議員の方が問題」と思う人41%とが、ほぼ拮抗(きっこう)した。自民支持層では、造反議員への批判が57%と多かったものの、選挙のカギを握る無党派層では「首相の方が問題」が43%と多数派だった。
また、衆院選の結果、自民党を中心とする政権が続くことになった場合、小泉首相が続投するのがよいかどうかでも、「続ける方がよい」46%と、「そうは思わない」43%が、ほぼ2分する形となった。特に、無党派層では続投反対が53%に上った。
一方、衆院選後の政権選択では、「自民党中心の政権」が43%で、「民主党中心」は33%。また、投票の際、郵政法案をめぐる対応を判断材料にすると答えた人は61%に達した。
 
(2005年8月10日2時23分 読売新聞)

小泉内閣支持率上昇47・3%(日刊スポーツ)

郵政民営化関連法案の参院否決と衆院解散を受け、共同通信社が8日夜から9日にかけて実施した全国緊急電話世論調査で、小泉内閣の支持率は47・3%と7月調査の42・6%を4・7ポイント上回った。郵政民営化については賛成が51・6%と反対の31・1%を超えた。
小泉首相衆院解散・総選挙に踏み切った対応の是非に関しては「良かった」が54・4%、「悪かった」は35・0%と過半数が評価した。郵政法案をめぐる自民党議員の造反については「大いに理解できる」「ある程度理解できる」を合わせて52・5%。「あまり理解できない」「全く理解できない」の計44・6%を上回った。
総選挙でどの政党の候補者に投票する意向か聞いたところ、自民党が37・4%で、民主党の22・8%を引き離した。公明党は3・4%、共産党は2・3%、社民党は1・4%で、無所属の候補者に投票するとの回答は8・0%。
 
[2005/8/10/10:16 紙面から]

ここらへんの流れを見て、テレビのように動きの軽いマス・メディアでは、2005年8月10日の朝からは、一部のコメンテイターを除いては「反・小泉」的な姿勢を強く打ち出す姿勢を示さないで、亀井派(反・小泉派)の難儀ぶりをネタにしているかな、という印象ですか。
多分10日の夕刊・11日の朝刊がそれに追従して、週刊誌は、通常だったら来週発売の号から「郵政民営化反対議員批判」に立ち位置を変えた記事を載せると思うんですが、来週はどの雑誌もお盆休みなので、雑誌のほうは一週間まるまる体制の立て直し・様子見、という感じでしょうか。
こういうテレビ・新聞・週刊誌の、記事構成における微妙なずれというのがなかなか面白いところです。小泉訪朝のときもそうだったなぁ、となつかしく思ったり。
で、「世論」の流れが見える前の、衆議院解散後すぐにおこなわれた首相記者会見を、新聞はどう記事にしたか、というのを、ちょっと時代の証言として載せておきます。元テキスト、というか記者会見全文は「首相官邸」のホームページに掲載されています。
小泉内閣総理大臣記者会見[衆議院解散を受けて]
新聞がこの「全文」を載せているところがないのは、スペースの問題として仕方ないかも知れませんが、ネット上でこのテキストにリンクを貼っている新聞社のサイトがないのはちょっと報道の姿勢としてはいかがなものかと。
毎度のことながら、新聞の情報は二次情報でしかないので、今回の場合は、首相を批判したい人も擁護したい人も、「首相が何と言ったか」ということに関する元ソースに当たるようにしましょう。
情報を流す側による印象操作部分は太字にしておきます。掲載は記事作成と思われる日時順。
首相、「郵政民営化の是非を争点に」会見で表明朝日新聞)2005年08月08日22時21分

小泉首相自民党総裁)は8日夜、首相官邸衆院解散を受けて記者会見した。首相は自民党内の郵政民営化反対派との連携の可能性を否定し、総選挙の勝敗ラインについて「自民、公明両党合わせて過半数」を明示し、郵政民営化の是非を選挙の争点に据える考えを改めて表明した。ただ、靖国神社参拝問題については「争点にするつもりはない」と語った。
首相は「今回の解散は郵政解散だ。郵政民営化に賛成してくれるのか反対するのか、はっきりと国民に問いたい」と述べた。
首相は解散に至った経緯について「小泉内閣の本丸と位置づけてきた郵政民営化法案が参院で否決された。国会は郵政民営化が必要ないという判断を下した」と説明。「この改革ができなくて、どんな大改革ができるのか」と主張した。
そのうえで、法案に反対した野党や自民党の反対派を「なぜ郵政3事業だけ、公務員でなければ駄目というのか。民主党までが対案も出してくれない。自民党抵抗勢力と一緒になって廃案にした」と批判した。
また、衆院本会議で法案に反対した37人については「本当に自民党は改革政党になったのか。自民党郵政民営化に賛成する議員しか公認しない」と述べた。ただ、欠席・棄権した議員については「郵政民営化に賛成すれば公認する」と述べた。
反対派の非公認によって分裂選挙に陥り、野党に転落する可能性については「勝てないと思っている人もいるだろう。率直に言って選挙はやってみないとわからない」と語った。また、「自民党公明党過半数を得れば、国会を再度開いて法案を成立するよう努力したい」と述べ、郵政民営化法案の再提出に意欲を示した。
一方、「参院本会議の否決によって衆院を解散することはおかしい」との批判については「(郵政民営化は)小泉内閣が発足してから改革の本丸としてきた。否決は小泉内閣不信任である。小泉内閣構造改革を否定された」と説明した。

靖国にこだわっているのが朝日新聞らしいですが、「語った・述べた・主張した」というような紹介のしかたは中立的でそんなに悪い印象はありませんでした。
政治 自民分裂「造反者公認せず」 小泉首相明言(産経・共同)08/08 23:45

≪自公で過半数割れなら退陣≫
 
衆院は8日夜の本会議で解散された。選挙戦は郵政民営化を争点に自民、民主両党の2大政党が対決、有権者に政権選択を問う激しい選挙戦がスタートする。
2003年11月以来となる衆院選日程は「30日公示、9月11日投票」と決まった。首相は同日夜の記者会見で「『郵政解散』だ。民営化に賛成するのか、反対するのか国民に問いたい」と強調、自民、公明両党で過半数を獲得できない場合は退陣する、と明言した
首相は会見で、衆院本会議採決で同法案に反対した自民党議員を公認しないと明言。同党の分裂選挙が確定したが、一方で欠席・棄権者については民営化に賛成すれば公認はあり得ると指摘した。首相は自民、公明両党で過半数を得れば、次期国会に民営化法案を再提出する考えを示した。
参院本会議の投票結果は、賛成108票、反対125票だった。自民党からの反対は22人、欠席・棄権は8人に上った。小泉首相は役員会で造反議員の選挙区にも候補を擁立する考えを明らかにした。(共同)

これは産経新聞に掲載された共同通信のテキスト、という感じです。
小泉首相:わが身はガリレオ 郵政民営化の正当性を強調毎日新聞)2005年8月8日 23時29分 (最終更新時間 8月8日 23時49分)

衆院解散後、記者会見に臨んだ小泉純一郎首相は自分を、地動説を唱えて処罰された中世イタリアの天文学者ガリレオにたとえて「それでも地球は動く」と言ってみせた。郵政民営化は地動説、郵政民営化反対は天動説というわけだ。「いまだに(否決を)信じられません。もう一度、国民に問いたい」。総選挙で“地動説”の正しさを証明すると強調した。
この夜の首相はいつものクールビズと打って変わって、濃紺のスーツに鮮やかなブルーのネクタイ姿で決めた。だが約25分間の会見中、「純ちゃんスマイル」はなく、終始表情をこわばらせたままだった。
否決・廃案がよほどショックだったのか「私はあえて国民に聞いてみたい」「反対する候補者を公認しない」と郵政民営化を争点に選挙を戦うと繰り返した。しかし、勝算を問われると、強気を続けてきた会見で初めてわずかな弱気が出た。「率直に言って、やってみなければ分からないと思います」【青島顕】
 
毎日新聞 2005年8月8日 23時29分 (最終更新時間 8月8日 23時49分)

この「青島顕」さんという記者は、かなり物語を作っているようです。無味乾燥なほかの新聞記事と比べると、これはこれで面白いんですけどね。
ガリレオ引き合い…首相、是非を国民に聞きたい(読売新聞)2005年8月9日1時35分

ガリレオは、それでも地球は動くと言った」――8日午後8時半から首相官邸で会見に臨んだ小泉首相は、地動説を唱えたイタリアの物理学者ガリレオ・ガリレイを引きあいに出し、衆院解散の正当性を強調した。
ガリレオは天動説が「常識」だった時代に1人地動説を唱えたために宗教裁判にかけられた。首相はその境遇を、自らに例え、「国会で郵政民営化は必要ないという結論を出されたが、もう一度、国民に聞いてみたい」と訴えた。その上で、「なぜ郵政だけ公務員でないといけないのか」「反対勢力は公務員の特権、身分を守ろうとしている」と強い口調で持論を繰り返した
総選挙の行方に関しては「やってみなければ分からない」とも。また衆院本会議の法案採決の際、棄権したり欠席したりした議員についても「(郵政民営化に)賛成するなら公認も考えたい」と話すなど胸の内もにじませた

朝日新聞の「述べた」がメインのテキストと比べると、これも主観が感じられるテキストです。ただ、もう少し客観的なテキストが読売新聞の場合はあったのかもしれません。
『郵政』一途 解散一直線 首相『それでも地球は動く』東京新聞)(日時不明)

郵政民営化への一途(いちず)な思いから、ついに小泉純一郎首相は八日、本当に衆院を解散してのけた。“郵政”だけが国政の重大事ではないが、参院本会議での大差の法案否決を目の当たりにした首相の決断に、ためらいはうかがえなかった。9・11総選挙の対立軸は自民党内に見いだすべきか、野党との間に探すべきか−。そして連立の行方は? 有権者には分かりにくさばかりをはらんで急展開した永田町発“コイズミの大乱”を、だれもがあっけにとられるような思いで見守った。 
「四百年前、ガリレオ・ガリレイは地球が動くという地動説を発表して有罪判決を受けた。彼は『それでも地球は動く』と言った−」
八日午後八時半から記者会見に臨んだ小泉首相は、ほおを紅潮させて語気を強め、自らをイタリアの物理学者ガリレオになぞらえた。
「なぜ、こんなに反対するのか理解できない」「なぜ、郵政三事業だけは民営化反対なのか」。三十分近くにわたった会見の間、何度も「なぜ」と大声を上げながら、ドン、ドンと激しく演台をたたいた
「いまだに信じられません」「これでは手と足を縛って泳げということ」「おかしいじゃないですか」。強烈な言葉が次から次へと口をつく
解散を「郵政解散です」と言い切り「賛成してくれるのか、反対なのか、ハッキリと国民の皆さんに問いたい」と声を張り上げた。会見前の午後七時すぎに開かれた衆院本会議では、小泉首相は口を真一文字に結び、一点を見据え、解散が宣言されても表情をまったく変えなかった。立ち上がって何度も何度も頭を下げ、静かに議場を後にした。臨時閣議の前までは吹っ切れたような笑みもみられたが、その後、本会議、会見と厳しい表情が緩むことはまったくなかった。
(後半略)

これはなかなか、すごい物語に仕上げています。週刊誌のような媒体なら割とあるようなテキストですが、新聞では少し珍しいのでは。同じ「事実(記者会見)」を伝えるのにも、記者の主観がどの程度影響するか、よくわかると思います。
こういう報道のしかたは、少し昔の時代のテクニック、という印象を持ちました(と、俺の主観を加えてみたり)。
自公過半数なら次期国会に法案再提出スポニチ)(2005年08月09日)

小泉首相は午後8時半すぎからの記者会見で、衆院選で自民、公明両党が過半数議席を獲得できれば、次期国会に郵政民営化関連法案を再提出し、成立を目指す意向を明らかにした。
濃紺のスーツに青のネクタイを締め、鬼気迫る表情。「約400年前、ガリレオ・ガリレイは地動説を発表し有罪判決を受けたが“それでも地球は動く”と言った。わたしは今、国会で郵政民営化は必要ないとの結論を出されたが、もう一度国民に聞いてみたい」。天動説が主流の中で異端児扱いされた天文学者に自らの立場を重ね合わせ、郵政民営化の正当性を強調した。
また「小泉内閣が発足してから構造改革の本丸として位置づけてきた。なぜこれだけ反対するのか理解できない」と反対派を厳しく批判。法案に反対した民主党に対しても「郵政民営化の対案ぐらい出してくれると思っていたが、自民党抵抗勢力と一緒になって廃案にした」と指摘した。
その上で「本当に行財政改革をやるなら郵政民営化に賛成しなければならない。反対するのは、手足を縛って泳げというようなものだ」と強調した。
[ 2005年08月09日付 紙面記事 ]

記者が書く記事の、「事実」と「主観」のバランス的には、これくらいが俺の好みかな、とも思いました。
まぁ、元テキストに当たるのが容易になったからこそ、こういうテキストも楽しめる、とは言えますが。