「キリシタンが日本の娘を奴隷として50万人も買った」という既知外テキストを信じている人がまさかいようとは

以下のエントリーですが、
はてなブックマーク - 株式日記と経済展望:キリシタンが日本の娘を50万人も海外に奴隷として売った事
コメント欄見てびっくりしたよ。

2006年02月08日 takahata_kazuo 『[history][宗教][情報/印象操作・捏造]単なる異教弾圧であり日本の後進性として教えられているキリスト教弾圧には理があった、と。キリスト教宣教師等の犯罪・日本への悪影響を説明している。』

2006年02月07日 blanc2005 『[歴史] いつの時代も・・・。人間って・・・。白人は・・・。そして秀吉を見直す。』

とか。いやそんなこと絶対にありませんから。
元ネタテキストはこちら。
株式日記と経済展望:キリシタンが日本の娘を50万人も海外に奴隷として売った事

しかし、アルメイダが行ったのは、善事ばかりではなく、悪事もありました。それは奴隷売買を仲介したことです。わた〕まここで、鬼塚英昭著「天皇のロザリオ」P249〜257から、部分的に引用したいと思います。

徳富蘇峰の『近世日本国民史』の初版に、秀吉の朝鮮出兵従軍記者の見聞録がのっている。『キリシタン大名、小名、豪族たちが、火薬がほしいぱかりに女たちを南蛮船に運び、獣のごとく縛って船内に押し込むゆえに、女たちが泣き叫ぴ、わめくさま地獄のごとし』。ザヴィエルは日本をヨーロッパの帝国主義に売り渡す役割を演じ、ユダヤ人でマラーノ(改宗ユダヤ人)のアルメイダは、日本に火薬を売り込み、交換に日本女性を奴隷船に連れこんで海外で売りさばいたボスの中のボスであつた。
キリシタン大名の大友、大村、有馬の甥たちが、天正少年使節団として、ローマ法王のもとにいったが、その報告書を見ると、キリシタン大名の悪行が世界に及んでいることが証明されよう。
『行く先々で日本女性がどこまでいっても沢山目につく。ヨーロッパ各地で50万という。肌白くみめよき日本の娘たちが秘所まるだしにつながれ、もてあそばれ、奴隷らの国にまで転売されていくのを正視できない。鉄の伽をはめられ、同国人をかかる遠い地に売り払う徒への憤りも、もともとなれど、白人文明でありながら、何故同じ人間を奴隷にいたす。ポルトガル人の教会や師父が硝石(火薬の原料)と交換し、インドやアフリカまで売っている』と。
日本のカトリック教徒たち(プロテスタントもふくめて)は、キリシタン殉教者の悲劇を語り継ぐ。しかし、かの少年使節団の書いた(50万人の悲劇)を、火薬一樽で50人の娘が売られていった悲劇をどうして語り継ごうとしないのか。キリシタン大名たちに神杜・仏閣を焼かれた悲劇の歴史を無視し続けるのか。
数千万人の黒人奴隷がアメリカ大陸に運ばれ、数百万人の原住民が殺され、数十万人の日本娘が世界中に売られた事実を、今こそ、日本のキリスト教徒たちは考え、語り継がれよ。その勇気があれぱの話だが」。

うわぁ、これって何てユダヤ人の陰謀? 火薬なんて別に、人身売買しなくても普通に作れますから。
本願寺側から見た信長と鉄砲

日本の戦国時代は世界一の鉄砲技術と鉄砲保有国だったといわれている(ノエル・ペリン著川勝平太訳『鉄砲をすてた日本人』(紀伊国屋書店1984))。しかし「鉄砲も火薬なければただの筒」。戦国時代以来、明治21年まで塩硝産地であった富山県東砺波郡平村で全国的に散逸した資料を集約した報告書『塩硝一硝石と黒色火薬)全国資料文庫収蔵総合目録』(1995)、平村郷土館一がある。これによると鉄砲伝来当初には、火薬のひとつの原料である硝石を、堺の商人を通じて外国から輸入したが、まもなく本願寺の仲介で国産化した。それは日本独自のすぐれた技術だったとある。

もう少し正確な資料もあると思いますが、少なくとも「秀吉の朝鮮出兵従軍記者」の生きていた時代には、火薬は自国で生産できたと思います。
で、人力検索はてなでも、こんな質問があったり。
16世紀、キリシタン大名が、日本の若い女性を奴隷として南アジア、アメリカなどに大量に売り渡したといいますが、こうした日本人による日本人奴隷取引について詳しくわかる書籍、文献を教えてください。
で、こんなのが出てきたり。

http://www.pavc.ne.jp/~ryu/cgi-bin/jiji.cgi
太田龍の時事寸評
鬼塚英昭著(自費出版
 「天皇のロザリオ」(平成十六年十月、四百十五頁)
URLのサイトにあります。

あっこの「太田龍」って人知ってるよ! ちょうど今読んでる『ユダヤ陰謀説の正体』(松浦寛・ちくま新書)に出てくるんですが、
太田龍 - Wikipedia

太田 龍(太田 竜、おおた りゅう、1930年 - )は、日本のユダヤ陰謀論者。 本名、栗原登一(くりはら といち)。 東京理科大中退。樺太豊原町出身。元日本革命的共産主義者同盟第四インターナショナル日本支部)の一員。

新左翼系のユダヤ陰謀論者と関係があろうとは。(補足:右旋回して、今は元・新左翼だそうです。コメント欄参照)
週刊日本新聞
まぁ、オチはこんなところで。
【ザ】キリシタンが日本の娘を50万人も海外に売飛ばした事は教えない日本の歴史教科書

16世紀の日本の人口は、900万人〜1000万人。女性人口は500万人程度。
寿命が50年ほどで年齢別階層がほぼ同じであったとすれば、12歳から22歳までの女性人口は、100万人である。
そのうちの半分に当たる50万人が奴隷として売りに出されたら、国内の文献に何も記されないだろうか?
若い娘の半分が消えた大事件である
随分面白い話だ。(爆笑)

「年齢別階層がほぼ同じ」ということはないと思いますが、まぁ「12歳から22歳までの女性人口」が約250万人ぐらいだとしても、それの50万人が売られる、なんてことはちょっとね。
ただ、このすごい説も、ちゃんと『天皇のロザリオ』(鬼塚英昭・自費出版)と、『近世日本国民史』(徳富蘇峰)に目を通してみないと完全否定できないのが何ともかんとも。ちゃんとした資料によると、「日本人50万人拉致説」が正しかったことがわかるかも知れないし(俺の感じとしては、その数字には無理があるにしても、数百〜数千人が「売られた」という可能性は否定できないです)。
ていうか、鬼塚英昭さんの本、猛烈に読みたいぞ。
 
これは以下の日記に続きます。
「50万人もの日本の若い女性がキリシタンや大名によって売り飛ばされた」という証拠の史料はなかなか見つかりませんでした
アルゼンチンに「日本人奴隷」は本当にいたのか