ハリウッド製作の「南京事件」映画の顛末と反日ネットワーク、あと産経が少し吹かしすぎかもという話

こんなニュースがあったわけですが。
国際 南京攻略描く米映画制作情報 在米反日団体が昨年流布(Sankei Web (03/07 08:17))

中国当局と密接に連携≫
【ワシントン=古森義久】日本軍の南京攻略を描く映画が米国ハリウッドの著名俳優、クリント・イーストウッド氏の監督で制作されるという中国発の報道が同氏の代理人によって否定されたが、その情報は最初、米国内に拠点をおき中国当局と密接に連携する反日団体から公式の「プレス発表」として宣伝されていたことが判明した。
南京虐殺を題材とするハリウッド映画が『南京・クリスマス・1937』というタイトルでイーストウッド監督、女優メリル・ストリープ出演で制作される」との情報は上海の新聞「文匯報」が一月十八日付で報じたが、米国内の中国関連動向に詳しい専門家は、同趣旨の情報が「第二次大戦アジア史保存連盟」(ALPHA)という組織のロサンゼルス支部が公表した昨年12月10日付の「プレス発表」に記されていると指摘した。ウェブサイトに残る「発表」には「ハリウッドがついに『紫金山が燃えるとき』という小説を原作に『南京・クリスマス・1937』という映画を制作する」とある。
在米中国人を主体とするALPHAは活動目的について「日本は侵略や虐殺に対し公式謝罪も賠償もしておらず、その実行を求める」としており、中国当局が関与する「世界抗日戦争史実維護連合会」傘下にある。日本政府や企業を常に糾弾し、事実に反する主張で日本を攻撃する点では明確な反日団体といえる。
母体となる「連合会」は中国国営の新華社通信につながるサイトを持ち、中国主要都市で当局の支援を得て集会を開くなど、中国政府と密接なきずなを持つといえる。ALPHAは90年代後半、アイリス・チャン著の「ザ・レイプ・オブ・南京」の宣伝・販売に協力した実績もある。こうした政治的組織が「文匯報」より1カ月以上も前に「南京事件のハリウッド映画制作」の情報を流していたことは、この虚報が中国当局の意図をにじませたプロパガンダだった可能性をさらに高めることとなった。
なお、日本軍の南京攻略を主題とした「紫金山が燃えるとき」は昨年夏に米中両国で出版されたが、著者で南京出身の在米中国人文学者、祁寿華氏自身は、ALPHAの「発表」は事実に反すると強調していた。@ネットビュー
【2006/03/07 東京朝刊から】

とにかく中国語が読めないので、「上海の新聞「文匯報」」に掲載されたというテキストに言及することができなかったわけなのでした。で、今回、「「第二次大戦アジア史保存連盟」(ALPHA)という組織のロサンゼルス支部」というのが出て来たので、元テキストを探してみようと思った次第。まぁ情報元の「米国内の中国関連動向に詳しい専門家」にもかなり興味を持ちましたが、どうやって調べたらいいかは分からない。
「第二次大戦アジア史保存連盟」(ALPHA)というのは、こんなことやってた団体だっていうのは見つかりました。
韓中などアジア系米国人、24日ロサンゼルスで反日デモ朝鮮日報 Chosunilbo (Japanese Edition)2005年4月22日)

韓中などアジア系米国人、24日ロサンゼルスで反日デモ
 
中国内の反日デモが今週末、米国ロサンゼルスに飛び火する。
中国系人権運動団体「第2次大戦保存連合会(ALPHA-LA)などロサンゼルスに基盤を置くアジア系移民・人権運動団体は今月24日午前10時、ロサンゼルス市庁前で日本の歴史歪曲と第2次大戦時の日本による蛮行に対する日本政府の謝罪、国連安全保障理事会常任理事国入り阻止に向けた「連帯デモ」を行う。
今度の反日デモは中国、フィリピン系はもちろん、良心的な日系、ロサンゼルス韓人会など約1000人が参加する計画だ。
しかしロバート・チェンALPHA-LA代表は21日、「今度のデモは単純な反日感情の表出デモではなく平和的街頭イベントとして行う」としている。
サンフランシスコに基盤を置く他の中国系団体「グローバルアライアンス」(世界抗日戦争史実維護連合会)は第2次大戦時の強制労役で不当に労働力を搾取した日本企業のうち、三菱グループの名を取り上げ、全ての製品に対する不買運動に突入すると発表した。

チョソン・ドットコム

こちらの記事だと、ALPHA(ALPHA-LA)の日本名は「第二次大戦アジア史保存連盟」じゃなくて「第2次大戦保存連合会」になってますな(「アジア史」というのが抜けてる)。
あと、こんなのとか。
12月8日に当たり日本の国連安保理事会常任理事国入りに反対し、戦争の被害者への謝罪と個人賠償を求める国際共同声明(2004年)

今日、日本が東南アジア各地や真珠湾を奇襲し、アジア太平洋における第2次世界大戦が開始された1941年12月8日から63年を迎えました。
今年9月小泉首相は国連総会において日本が安全保障理事会常任理事国入りを求める考えを明らかにし、各国に協力を求めましたが、私たちは日本の国連安保理事会常任理事国入りに強く反対します。国連が2回にわたる大戦の反省に基づいて設立され、日本がまだ敵国条項を適用されているのは知られるとおりですが、かつての敵国、とりわけいまも戦争被害に苦しむ被害者をかかえる諸国との和解が実現していないからです。
来年は「戦後60年」になりますが、いまだに日本の法廷では約30件のアジア各地の戦争被害者によって日本政府を相手取った訴訟が行われています。韓国・米国でも訴訟が行なわれています。日本は、日本が犯した戦争犯罪に対する責任を果たしていません。「慰安婦」、強制連行・強制労働被害者、虐殺被害者、POW・民間抑留者、細菌戦被害者、在外被爆者などの戦争被害者と支援者を代表して、日本が、国連安全保障理事会常任理事国への参加を表明する前に、謝罪と賠償をすみやかに行うことを強く求めます。
2004年12月8日

賛同団体(日本・23団体):

日本の過去の清算を求める国際連帯協議会日本委員会 代表 土屋公献
(中略)
個人(10人):
(中略)
伊吹由歌子(元教員)

と、何やらおなじみのかたがたが出て来てまして、
「バターン死の行進」に関する文芸春秋テキストへの、サイモン・ウィーゼンタール・センターの抗議についてもう少し掘ってみる
盧武鉉大統領訪日に際する日韓両首脳への要請書 (2003年6月5日)
リストの続きに、こんな感じで載ってました。

海外:
米国:Historical Justice Now, L.A.
Alliance to Preserve the History of World War II in Asia - Los Angeles (ALPHA-LA);

で、「ALPHA-LA」のサイトですが、
Alliance to Preserve the History of WWII in Asia - Los Angeles | Home
産経新聞の記事になっているテキストは、ここにありました。
alpha-la's Rape of Nanking Memorial

As a part of a series of Southland's commemoration of the 60th anniversary of V-E day and V-J day, ALPHA-LA proudly announce its annual memorial of Nanking Massacre-1937, so called "the Rape of Nanking", where 300,000+ Chinese, mostly civilians were slaughtered in a 6 weeks of continuous "Kill all, Burn all, and Rape all" policy of the Japanese Imperial Army. This year marks the 68th anniversary and ALPHA-LA brings it back alive to Monterey Park: memorial, documentary film pre-view, eye-witness account testimonials, exhibit, and musical performances. That is why Hollywood finally will make a Gerard Green's $25 million production "Nanking-Christmas,1937" based on the novel "Purple Mountain burns", so as Bill Guttentag's "Rape of Nanking" documentary and Patrick Kaipatrick's "American Goddess".

ただ、このテキストの中には「南京虐殺を題材とするハリウッド映画が『南京・クリスマス・1937』というタイトルでイーストウッド監督、女優メリル・ストリープ出演で制作される」という情報は含まれていないので(探しかたが悪いのかな)、産経新聞の「同趣旨の情報」という記述は、少し作りすぎ(吹かしすぎ)の印象がありました。
ALPHA-LAの当該テキストを書いた人は「Robert」さんというらしいんですが、
Alliance to Preserve the History of WWII in Asia - Los Angeles:Robert
これが「ロバート・チェンALPHA-LA代表」と同一人物かどうかも未調査ではあります。
やはり、「文匯報」のテキストを、何らかの形で読まないと、いろいろ分からないことが多すぎるという感じです。
まぁ、これが「読売新聞のフカシ」(過剰反応?)であることは、むしろ左寄りのサイトのほうが早くから言及していたわけで、
「CLick for Anti War 最新メモ」(1月20日)
ALPHA-LAが「中国当局と密接に連携する反日団体」と言っても、どの程度まで「密接」なのか、についてはもう少し落ち着いて考えたり調べたりしてもいいかも、と俺は判断しています。