「遺憾」を「謝罪」と翻訳するという、珍しい例をローマ法王の発言関係に見たりするわけですが

これは以下の日記の続きです。
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20060921/pope
 
こんなのがありました。
ローマ法王が自ら遺憾の意(NIKKEI NET:国際 ニュース)

【ロンドン=野沢正憲】ローマ法王ベネディクト16世は17日、イスラム教徒とその預言者ムハンマドらを侮辱したと受け取られた自らのドイツでの発言にイスラム各国で反発が相次いでいることについて、「極めて残念に思う」と述べた。法王自身が謝罪を表明したのは初めて。
法王別荘地があるローマ近郊のカステル・ガンドルフォで、日曜の祈りに集まった信者らを前に述べた。ドイツでの発言がイスラム社会の反発を招いて以来、法王が一般の前に姿を見せたのは初めて。法王は「(発言は)中世の文章からの引用であり、私自身の考えを表したものではない」と釈明したバチカンローマ法王庁)は16日に、法王の遺憾の意を伝える声明を発表していた。
ロイター通信によると、法王の17日の発言に対しエジプトのイスラム原理主義組織、ムスリム同胞団の幹部は「明確な謝罪にはなっていない」と不満を述べ、より踏み込んだ謝罪をするよう求めた。アフリカ東部ソマリアの首都モガディシオでは同日、イタリア出身のカトリック尼僧と警備員が撃たれ、死亡した。 (22:05)

ローマ法王「聖戦思想」神学講義と釈明の要旨-世界からニュース:イザ!

ローマ法王庁の釈明の要旨は次の通り。

宗教間の対話を好むという法王の立場は明確だ。法王は昨年のイスラム教代表との会合で、キリスト教徒とイスラム教徒の対話は軽んじることはできないと断言している。
レーゲンスブルク大学で引用したビザンチン帝国皇帝の発言は法王の意見ではない。法王は一般的な宗教と暴力の関係を学術的な文脈で使用したまでだ。ただ、暴力のために宗教を動機とすることは拒絶する。
(法王は)発言がイスラム教徒を攻撃するかのように聞こえたことを非常に遺憾に思っている。神への侮辱と、神聖なものを軽視することを自由の行使だとする風潮を排除するよう西洋文化に警鐘を鳴らすことが法王の務めだと思う。(ベルリン 黒沢潤)

「遺憾」とは「残念」とほぼ同義語で、「謝罪」とは全然関係のない言葉なわけですが。
以下のテキストって謝罪?
官房長官発表

○ 北朝鮮による弾道ミサイルの発射事案に係る我国の当面の対応について
今般の北朝鮮による弾道ミサイル又は飛翔体の発射は、我が国の安全保障に直接関わることであり、極めて憂慮すべきことである。また、本件は、日朝平壌宣言に違反し、かつ、六者会合共同声明と相容れない行為であり、国際社会の平和と安全及び大量破壊兵器の不拡散の観点からも極めて遺憾である。この観点より、北朝鮮に対し、毅然とした厳しい対応をとることが必要であり、具体的に以下の措置をとることを決定した。

一応、ローマ法王庁の公式テキスト。
STATEMENT BY CARD. TARCISIO BERTONE, S.D.B., SECRETARY OF STATE(Saturday, 16 September 2006)

The Holy Father thus sincerely regrets that certain passages of his address could have sounded offensive to the sensitivities of the Muslim faithful, and should have been interpreted in a manner that in no way corresponds to his intentions. Indeed it was he who, before the religious fervor of Muslim believers, warned secularized Western culture to guard against "the contempt for God and the cynicism that considers mockery of the sacred to be an exercise of freedom".

ということで、次の人は引き続き間違っているように、ぼくには思えました。
はてなブックマーク - Yahoo!ニュース - 時事通信 - イスラムは「邪悪」と発言=ローマ法王発言に怒り広がる
最初のテキスト。

2006年09月16日 fu12345 すぐに謝罪したようだね。

訂正したテキスト。

2006年09月16日 fu12345 報道の事実関係は正確。ローマ法王庁もすぐに謝罪したようだね。

やはり「謝罪」ではなくて「釈明」と訳すのが適切ではないかと。
で、法王による2006年9月17日の「公式謝罪」。
Castel Gandolfo - Angelus, 17 September 2006

At this time, I wish also to add that I am deeply sorry for the reactions in some countries to a few passages of my address at the University of Regensburg, which were considered offensive to the sensibility of Muslims. These in fact were a quotation from a medieval text, which do not in any way express my personal thought.

これは「I am deeply sorry」と言っているので、「謝罪」という判断で間違いはないと思います。
この場合は「どういう行為」に対して謝罪してるのか、ということになりますが、「誤解を招くような発言」に対する謝罪ですか。
16日にローマ法王庁が「遺憾」と言う。
17日にローマ法王が「(誤解を招くようなことを言ったことに関して)深く謝罪する」と言う。
ローマ法王庁」の「謝罪」は、まだぼくには確認できません(確認できたのは、法王の限定謝罪)。
id:fu12345の人は、現在のコメントを「ローマ法王庁もすぐに釈明したようだね」と改めるか、「2006年09月17日」以降の日付でブックマークを登録し直して「ローマ法王も謝罪したようだね」(「すぐに」ではないので、この語句は不要でしょう)とするか、がいいんじゃないかと思いました。
「報道の事実関係」は、時事通信の「暴力を容認する宗教であるかのような発言」という部分は正確なので、コメント的には特に問題はないと思います。勘違いされやすそうな発言をした法王の発言を、勘違いされやすそうな形で報道した、というだけのことでしょう。