映画『トゥモロー・ワールド』は、あなたが押井守さんなら必見のすごい映画でした

これは以下の日記の、ほんの少し続きです。
TVドラマやアニメの「カメラ」はあまり動かない
 
ということで、なんかいい評判が妙な形で耳に入っている映画『トゥモロー・ワールド』を見てきました。
あらすじはこのあたりです(あまりネタバレしてません)。
あらすじ 解説 トゥモロー・ワールド - goo 映画
子供が生まれなくなった未来の、荒廃した世界を舞台に、銃と(なぜか)犬が出まくりの映画なので、別にぼくがこの日記で「必見!」なんて言わなくても、押井守さんは多分もう見ていて、大喜びしていると思います。
ブリティッシュな音楽(ぼくには「ルビー・チューズデイ」と「クリムゾン・キングの宮殿」しかわかりませんでした)と、それにふさわしい、ほとんど青空やきれいな壁などは出てこない素晴らしい映画で、まぁ基本的には暗くて嫌な映画なんで、間違ってもデートとかではいかないようにしてください。映画オタク臭い野郎が、一人で平日に見るのがいいと思います。
しかし話の内容よりもすごいのは演出、カメラワークなのです。
(以下、たいしたことないけど、少しネタバレあり)



以下のところでネタバレしてるのでぼくも言及しますが、
超映画批評『トゥモロー・ワールド』90点(100点満点中)

最大の見所としては、なんと言ってもクライマックスに用意された戦闘シーンがあげられる。なんと8分間、一回もカットせず、戦場を逃げ回る主人公を手持ちカメラで追いつづけるこの恐るべき演出は、今後あらゆる映画の戦争シーンについて、『トゥモロー・ワールド前、トゥモロー・ワールド後』と分けられてしまうのではと思うほどに凄まじい。

この部分、ネタバレがあっても唖然とすること間違いなしのすごい映像でした。
何しろ、撮っているカメラのレンズに血痕(本当は違うだろうけど)がついても、そのまま撮り続けるというものすごさ。こう、主人公たちがあれこれあってテロリストたちに、処刑されそうになるわけですよ。そこにいきなり銃声が聞こえて(他にも銃が撃たれるシーンがあるんですが、その「音」を聞くためだけにでも、ぜひ映画館で見ることをおすすめします)、テロ鎮圧の政府の軍隊が市街戦を始める。もう、撃ちまくりの逃げまくりで、逃げる主人公をカメラが追いかけるの何の*1。ええと、これは何かゲームのシーンでものすごく既視感があるんだけど何だったっけ。店頭デモで見たのであまり覚えてない。「バトルフィールド2」の市街戦かな。武器持たないリアル・バトルフィールド
いやとにかく最初の、主人公がさえないバー(コーヒーショップだったかな)を出て、路上の治安状態がよくない映像を映して、一息入れているところにテロリストの爆破テロでその店がぶっ飛ばされて、というところまでワンカットで撮っている冒頭ですでに、これは並大抵の映画ではない臭がただよいます。



(以上、ネタバレ終わり)
まぁ、『プラダを着た悪魔』のほうは、一部炎上サイトが紹介しているとおり、普通にヒットしているみたいですが、別にぼくは映画会社の人に頼まれたわけでないにもかかわらず(頼まれたら、もっとせっせと褒めてもいいですよ)、『トゥモロー・ワールド』は見ておいて損はなかった映画だったと言っておきます。この監督の他の映画も見たくなるぐらいに。
Alfonso Cuaron (アルフォンソ・キュアロン) - goo 映画
なお、この映画の話の、未来世界のディティールはあまり気にしすぎないほうがいいです(気にしすぎると気になりすぎるようになります)。
こんな映画のカット割は、本当に見たことなかったですよ。
 

*1:この映画は「カメラをかついで主人公の後から写す」という映像がやたら多い演出なので、なんか見終わると「荒廃したイギリスの街と主人公の尻」ばかり見ていたような印象になります。