北海道江差町の民家のガラス戸は本当に衝撃波で割れたのか

こんなニュースがあったわけですが、
米軍機訓練で乳児が軽傷 衝撃波によるガラス破損で福井新聞

米軍機訓練で乳児が軽傷 衝撃波によるガラス破損で
12月05日午後00時08分
 
北海道江差町で昨年9月、米軍三沢基地青森県三沢市)のF16戦闘機飛行訓練による衝撃波で民家の窓ガラスが割れ、飛び散った破片で乳児が軽傷を負っていたことが5日、分かった。
道によると、1997年以降、北海道と周辺海域で米軍機による事故やトラブルは今回を含め計12件起きたが、日本側でけが人が出たのは初めてという。
札幌防衛施設局によると、事故は昨年9月9日午後零時半ごろ発生。ごう音とともにベランダのガラス戸が割れ、昼寝していた男の乳児の上に破片が飛び散り、顔に1週間の軽傷を負った。
事故後、駐札幌米総領事が乳児の家族に謝罪し、同施設局が日米地位協定に基づいて家族に賠償金を支払った。道は、同施設局などに対し原因究明と再発防止を要請した。

これは共同通信が全国に配信した誤報、というか勘違い情報っぽいです。
あれこれ調べてみたら、第一報は「しんぶん赤旗」かな。
米軍機の衝撃波で事故/ガラス割れ乳児らケガ/昨年・北海道江差町

2006年12月5日(火)「しんぶん赤旗
 
北海道・江差町で昨年、米軍三沢基地所属のF16戦闘機の訓練中に発生した衝撃波で割れた窓ガラスの破片で、生後四カ月の乳児とその家族が負傷していたことが、四日、日本共産党北海道議団の調査で明らかになりました。真下紀子道議が五日の北海道議会一般質問で取り上げます。
事故は二〇〇五年九月九日、道南の桧山管内江差町で起きました。引っ越し作業中の被害者家族が昼食をとっていた際、米軍機によってごう音とともに衝撃波が発生し、ベランダのガラス戸が倒れ、割れたガラスで負傷したというものです。「米軍機の訓練の影響で人身事故が起きたのは道内では初めて」(北海道危機管理局)です。
道の資料によると、米軍機が過去十年間で起こした事件・事故は十一件。全国的に問題となった桧山管内上ノ国町の大崎小学校訓練標的事件など、うち九件が低空飛行訓練によるものです。衝撃波によるガラス破損被害は今回を含め、四回も発生しています。
真下議員は「北海道で初めて起こった米軍機訓練に伴う人身事故なのに、道は、口頭でしか、防衛施設局と米軍に事故防止の要請をしていません。さらに、事故発生時にマスコミに広報していなかったのは、事態認識と対応について疑問を持たざるを得ません。議会で厳しく追及します」と語っています。

要するに、「ベランダのガラス戸が割れ」た原因は、別に衝撃波で割れたんじゃなくて、衝撃波で倒れたため、みたいです。
道議会でどのようなやりとりがあるか・あったかは、「会議録」のほうで見られるようになったらまたチェックしてみます。ということで、私的メモ。
北海道議会の公式ホームページ Hokkaido Prefectural Government
これだけ聞いてみました。
12月5日の本会議
1:33あたりから質問
1:54あたりから回答
2:34あたりから再質問
2:42あたりから再回答
2:49あたりから再再質問(これが一番具体的)
2:54あたりから再再回答
なんで共産党がこれを特別問題視しているかというと、どうも「米軍機訓練の千歳基地移転」に関する話があるみたいですな。
在日米軍再編によるF−15戦闘機等訓練の航空自衛隊千歳基地移転について(1)
あと、つい最近もこんな事件があったわけで。
報道機関提供情報 詳細:米軍三沢基地所属F−16戦闘機の函館空港への緊急着陸について青森県
やっぱ議会って面白いです。会議録からの引用は今後ももう少しマメにやってみよう。
議会の録音聞いて確認できたのは、「四回も発生して」いるという、「衝撃波によるガラス破損被害」の具体的な地名と、「家族もその手当てのために負傷した」ということですが、これらについてはまた、会議録が公開されてから言うかもしれません。。
しんぶん赤旗」よりくわしいのは北海道新聞でした。
米軍機訓練で乳児けが 江差の民家、窓割れる 昨年9月 道など発表せず

米軍機訓練で乳児けが 江差の民家、窓割れる 昨年9月 道など発表せず  2006/12/05 06:592006年12月日
 
江差】昨年九月、桧山管内江差町で、飛行訓練中の米軍F16戦闘機(青森県三沢基地所属)の衝撃波により民家のガラス戸が割れ、破片が室内で寝ていた生後三カ月の男の乳児の顔に当たり、約一週間の切り傷を負わせていたことが四日、分かった。また、過去五年間に民家などのガラス破損事故は他に四件あり、いずれも未発表だったことも明らかになり、米軍機による損害が毎年のように繰り返されている実態が浮き彫りになった。
在日米軍再編に伴うF15戦闘機訓練の空自千歳基地移転は確実視されており、それが実現すれば、こうした被害はさらに広がる恐れが強いとみられている。共産党は五日の道議会一般質問で道の対応をただす。
乳児がけがをした事故が起きたのは昨年九月九日午後零時半ごろ。江差町新栄町の民家で、ごう音とともにガラス戸のサッシが倒れ、はめ込まれていた二枚のガラスのうち一枚(横七十九センチ、縦八十九センチ)が割れ、昼寝中の男児の上にガラスの破片が飛び散り、鼻の横に傷がついた。
住民からの届け出を受け、札幌防衛施設局が調査し、米軍機による事故と判明。札幌防衛施設局は「どんな訓練かは把握していない」としている。
道によると、過去十年間で、米軍機によるトラブルにより道内でけが人が出たのは初めて。今回の事故後、駐札幌米国総領事は江差町を訪れて家族に謝罪し、日米地位協定に基づいて札幌防衛施設局が乳児の家族に賠償金を支払った。
このほか、渡島管内八雲町の建物(二○○一年)、同管内森町のホテルと民家の物置(○二年)、江差町の民家(○三年)の三カ所でガラスが破損。胆振管内洞爺湖町(当時は洞爺村)では○二年、米軍機の低空飛行に驚いた競走馬が暴走し柵に激突して骨折した。
道によると、過去十年に道内で発生した米軍機による事故やトラブルは、今回明らかになった五件を含め十二件。ほとんどが道南に集中しており、米軍の訓練空域が、桧山管内上ノ国町などの沖の日本海海上にあるためとみられている。
五件の事故を発表しなかった理由について、防衛施設庁の和田善徳業務課長補佐は「事故原因を調べるのは米国側で、施設庁は公表する立場にない」としている。また、すべての事故について、札幌防衛施設局から報告を受けていた道危機対策局の真柳直幸主幹は「道には発表する権限はない」と話している。
在日米軍の動きに詳しいNPO法人「ピースデポ」(横浜)の梅林宏道代表は「自治体は在日米軍がらみの事故について、どれほど軽微だろうと発表しなくてはならない。日本国内の米軍が、住民生活にどれだけ影響を与える存在なのかが浮かび上がってくる」と話している。

競走馬の暴走は「衝撃波」とは関係ないでしょうが、「発表する責任」はそもそも誰にあるのか興味は持ちました。あと、この件を含む「ガラスの破損」が「衝撃波」によるものかどうか、ということについても。
STVニュース STV:米軍F15訓練でけが人…道は公表せず

在日アメリカ軍三沢基地のF16戦闘機。北海道上空を訓練空域としています。事故が起きたのは道南の江差町でした。去年9月9日の正午過ぎ、一家で昼食をとっていた住宅のガラス戸が突然倒れ、寝ていた生後3か月の男の子がガラスまみれになったのです。
(乳児の母親)「ここに子供は寝ていました。ドンという音がして、ガラス戸が子供の上に倒れてきた。パニックで、生きた心地がしなかった」

こちらの情報では「引っ越し作業中」と赤旗に書いてあった情報が欠如してます。細かなことはどうでもいいんですが。

男の子は顔に1週間のけがをしましたが、大事には至りませんでした。F16は先月17日にも函館空港緊急着陸しています。道のまとめでは過去10年間、道内で発生したアメリカ軍機の事故は、道南を中心に12件あるといいます。問題は、道や地元自治体が、事実を公表しないことです。江差の事故では、札幌防衛施設局からの連絡を受けていましたが、「発表する立場にはない」と、していました。さらに、きょうの道議会で明らかになったのは、1年前の江差の事故について、高橋はるみ知事が、きのうまで知らなかったことです。
(日本共産党・真下紀子議員)「知事は重大な事実をいつ伝えられどのように判断しなのか?」
(高橋はるみ知事)「昨日、報告を受けました」
千歳には、嘉手納基地のF15戦闘機訓練が一部移転されることが決まっています。
(高橋はるみ知事)「これからは情報入手の段階でできる限り早く公表する」
(野口記者)「正確な訓練時期や場所さえ明らかにされないアメリカ軍の戦闘機訓練。今回の事故発覚は、訓練受け入れの意味を改めて知らされた恰好です」

米軍基地反対の人たちは、沖縄から北海道に抗議先を移すのかなぁ、という感じです。
しかし、そんなにバリバリ、衝撃波で窓ガラスは割れるもんだろうか、という疑問が、以下のテキストを読んで逆にフツフツと。
超限制止と自己催眠法

■ 終戦後から、各地で起きている事件。
 
ジェット機音速の壁を破る衝撃波で精神障害になる。
終戦直後、アメリカ空軍のジェット機が、日本海の上空で訓練を行っていたときの出来事です。山陰地方で訓練中のにジェット機が超音速で、音速の壁を破ることがしばしばありました。ジェット機音速の壁を破るときに発生する衝撃波によって、山陰地方で野良仕事をしていた2人の婦人が、ジェット機の衝撃波によって、超限制止(保護制止)の状態におちいり、軽い精神障害になるといった事故が起きています。
さらに養鶏場では、ジェット機音速の壁を破る時に発生する、衝撃波によって大量の鶏が死ぬという事件が同時に発生しています。
この事故は、裁判の結果、補償金が支払われ問題は解決しています。日本政府の要請で、その後、日本上空では訓練が中止されています。音速の壁を打ち破る時に発生する衝撃波は、地上の建物を揺るがして、家やビルの窓ガラスなどが割れることがあります。神経細胞を破壊するような強烈な衝撃波や低周波音は、精神障害や生命を脅かすことがあります。

衝撃波というより毒デンパという感じですが、「裁判」とかがあるので多分ある程度本当のことだとは思います。
以下のものはもう少しはっきりしています。
空の暴走族

2001年3月21日午前9時40分頃、島根県桜江町を「ドーン」という衝撃波が襲い、民家の窓ガラスなどが破損しました。翌22日、日本共産党の井上義信石見町議は現地で被害を調査。米軍岩国基地は広島防衛施設局を通じての問い合わせに「基地を飛び立った米軍機が当該地域を飛行した」と認めました。

最近の活動から 2001年3月23日

米軍機衝撃波 低空飛行訓練中止せよ
――県知事に申し入れ
しんぶん赤旗」2001年3月25日付より
 
米軍機の衝撃波により島根県桜江町で民家のガラスなどが多数破損した問題で3月23日、日本共産党島根県委員会は澄田信義知事に米軍の低空飛行訓練の即時中止を強く申し入れました。ごとう勝彦参院選挙区候補や佐々木洋子副委員長、尾村利成県政対策委員長、長原富夫桜江町議が出席しました。
桜江町では21日朝、衝撃波で民家や小学校、寺など14カ所でガラス破損、壁の落下やひび割れなどの被害が起き、住民から怒りの声があがっています。
申し入れ書は、学校関係者の不安の声や爆音による周辺住民への生活の支障、墜落による大惨事の恐れを指摘。また、国会で日本共産党議員がくり返し米軍機の低空飛行訓練の即時中止を求めていることを紹介しています。

このくらい被害が出ると、これは衝撃波だろうなぁ。
ただ、以下のような記述もあるので、
ソニックブーム - Wikipedia

ソニックブームは、超音速で飛行する物体が上空を通過した際に、何かが爆発したような2つの不連続な音として観測される。スペースシャトルが大気圏に再突入して上空を通過する際にしばしばソニックブームの音が聞かれた。2つの音のうち、最初の音は飛行体前方で発生した衝撃波によるもので、2つ目の音は物体後方に生じた衝撃波によるものと考えられている。このソニックブームを波形にすると、丁度アルファベットの N 字型になるため、N-Wave と呼ばれる。
かつては、高高度を飛行すればソニックブームは問題にならないとされていたが、ノースアメリカン XB-70 が高度約 21,000m で飛行しても、地上で強力なソニックブームが観測されたため、高度を取れば良いというほど単純な問題ではないことが判明した。現代において技術的には十分可能な超音速旅客機や超音速輸送機の普及が難しい原因として、このソニックブームの問題が大きい。

ちっとやそっとの高度では、衝撃波は防げないみたいです。もちろん、「騒音」だったら十分に小さくなるとは思いますが。
空軍基地の問題は、前にも言った気はしますが、民家の上を飛行機が飛ぶため、うるさくて危険、ということにあるんじゃないでしょうか。ちなみに、衝撃波を聞いてみたい(ていうか、体験してみたい)と思っている軍事好きな人はけっこういそうな気もします。毎日それをくらうのは堪忍してください、ですけれども。
あと、共産党はもう少し「衝撃波」のことについてちゃんと調査して欲しいと思いました。「騒音で迷惑」というのと「衝撃波で物的被害が」というのでは、確かに前者のほうがわかりにくい被害なので、議会などでは取り上げにくいでしょうけれども。
 
まとめると、
1・また共同通信が歪んだ伝聞情報を全国の地方紙に流した
2・沖縄にいる人たちの一部が北海道に行くかもしれない
3・共産党は「衝撃波」と「デンパ」と「騒音」の区別をしっかり知って欲しい
という感じです。