ドキュメンタリーはノンフィクションなのかについて映画『ダーウィンの悪夢』で考える

これは以下の日記の続きです。
映画『ダーウィンの悪夢』に関する「嘘」について
 
こんなのがあったので、
はてなブックマーク - タンザニア大使が抗議!「ダーウィンの悪夢」アフリカのイメージ壊す

2006年12月06日 Baatarism こっちと併せて読むと良いかも。つhttp://jatatours.intafrica.com/habari49.html

もう一度読んでみました。
ダルエスサラーム便り47:ビクトリア湖の環境問題
ダルエスサラーム便り49:ダーウィンの悪夢

映画の中で描かれている事実は、総じて事実である。首を傾げるような場面はいくつもあるし、案内役の役割を果たしている水産研究所の夜警のセリフは、かなり意図的である。それは措いておくとしても、さまざまな事実をどう選択し、どう羅列するかは、製作側の意図である。ドキュメンタリー映画とはいえ、監督の主張、作品であることを忘れてはいけない。例えば、ロシア製の輸送機、ロシア人(ウクライナ人)のクルー、彼らとホテルの酒場で飲む娼婦たち、後日談として仲間の死を語る女、エイズで若者が死ぬ埋葬用の穴が掘られている村、クルーたちがかつてアンゴラコンゴに武器を運んでいた記憶… 。そういった事実を淡々と並べる手法。それは映像効果を狙った監督の作品なのであって、それを純真に「これがタンザニアの現実だ」と思い込む方がおかしい。少なくともジャーナリストなら「ほんまかいな?」と自ら検証する姿勢が必要だろう。この映画にも出演したムワンザ在住のタンザニア人ジャーナリストと話す機会があった。彼はナイルパーチ産業の調査を受け持ち、資料を提供し、クルーがタンザニアの警察に捕まった時も救出に活躍したという。「映画は監督の作品で、監督が選んだ事実を使うのは自由だ。だが、ナイルパーチ産業が30万人の雇用を創出したことは事実で、環境汚染の問題はまた別の問題だ」と言っていた。

で、やはり映画『硫黄島からの手紙』とか『シンドラーのリスト』とか、ノンフィクションみたいなフィクションに対しては、みんなそれなりに「どこまでが嘘か」に関する判断はつくみたいですが、ドキュメンタリー的な映画は(ぼくも含めて)けっこう難しいような気がしてしまいました。『ホテル・ルワンダ』はどうだったかな。
このパターンで、日本国内の「○○地区に住む人たちの悪夢」とかみたいな映画が作られたら、やはり日本政府は抗議するんだろうなぁ。
映画にしてもTVで放映されるドキュメンタリーにしても、「それを誰かが金を出して買う(見る)」人の想定がある程度いないと(一定以上の額が、それを作ることによって得られる、というものでないと)作られたり公開されたりするということはないわけで、単純な社会正義だけではメシが食えないのが難儀です。
世の中に、商業的に流通している「悲惨なもの」、特にノンフィクションを装った悲惨なものに関しては、「送り手の事情」、露骨に言うと「それをドキュメンタリーとして作る・流通させることによって、食える人間がどれぐらいいるか」を考えてみてもいいんじゃないか、ということで。
あとはまぁいろいろと。
しょうひいろいろ:「ダーウィンの悪夢」アフリカのイメージ壊す

いやいや、NHKのBSで放映しちゃってるじゃん。何を今さらって感じですが。
ホント、うんざりするというか、この底の見えない絶望感を味わうために、みんな観とけ。人間ってこんなものかと。

(太字は引用者=ぼく)
「この底の見えない絶望感」を見る人に感じさせるために、映画製作者はどのような演出をしているのか興味を持ちました。
AO二才:『ダーウィンの悪夢』をめぐって

映画の内容はリンク先に書いてあるんで省略しますが、監督のイデオロギーが過剰に入り込んでいるようなドキュメンタリーとは違い、アフリカとグローバリゼーションの問題点を如実に描き出していて、結構面白かったことを覚えています(一年以上前のことなのでちょっと曖昧ですけど)。

それとも経済云々ではなく、アフリカへ向かう輸送機に武器が積まれていたという事実の方が政府にとっては都合が悪いから抗議してるんでしょうか。

ちなみにこのザウパー監督、次回作は「アフリカで暗躍する中国」をテーマにするって言ってました。

(太字は引用者=ぼく)
この監督の次回作、本当に面白そうです(映画の内容も、その公開に関する何かも)
もう一度リンク。
吉田昌夫「フーベルト・ザウパー監督による映画『ダーウィンの悪夢』について」

この映画について、何しろ舞台が私の農村調査地の基地として使っているタンザニアのムワンザ市なので、私はダーウィンならぬ「ザウパーの悪夢」にずっと悩まされています

(太字は引用者=ぼく)
絶叫機械+絶望中止:『ダーウィンの悪夢』公開間近。タンザニアから抗議。

見た方がいい、隣近所の出来事として。下衆な私が言うのだから間違いない。

柳下毅一郎さん、2005年10月の段階でこんなこと言ってたのか。
石井輝男追悼週間日記

アフリカ最大の湖、タンザニアヴィクトリア湖周辺で生きる人々について描いたドキュメンタリー。これはもはや映画としてどうこうというレベルではなく、写っている現実が凄すぎる。「地獄」としか呼びようがないのです。 この世には地獄が存在します。この映画こそその証拠です。

すでに十分地獄なんですが、このあとさらに恐ろしい光景が続きます。食べ物を奪い合い、シンナーがわりに発泡スチロールを燃やして吸うストリートチルドレン。毒矢で武装して「やっぱ戦争がいちばんだよ。早く戦争にならないかなあ」とぼやく警備員。

(太字は引用者=ぼく)
コーヒー吹いたこれ何てヤコペッティ
ヤコペッティの世界残酷物語
世界残酷物語 - Wikipedia