「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か

こんなのがあったので少し気になった。
アルファルファモザイクより「日本のマンガ、アニメ業界を駄目にしたのは手塚治虫?」

6 名無しさん名無しさん :2006/03/07(火) 14:54:26
手塚のせいで低賃金なんだっけ。

検索しても主流はそんな感じだった。
手塚治虫 アニメ 制作費 - Google 検索
はてなダイアリー」のキーワードを見てもそんな感じだった。
手塚治虫とは - はてなダイアリー

また、日本初の連続テレビアニメを世に送り出すなど、テレビアニメの始祖でもある。一方で、マンガの収入をアニメの制作費に充てて予算を極端に抑えたため、のちのテレビアニメの制作費が長年にわたって低くとどまる原因になったとする説もある。

人力検索で見てもそんな感じだった。
人力検索はてな - 手塚治虫がマンガ/アニメ界に及ぼしたさまざまな影響のうち、功罪の「罪」の方が、もしあるのでしたら教えてください。

手塚治虫がマンガ/アニメ界に及ぼしたさまざまな影響のうち、
功罪の「罪」の方が、もしあるのでしたら教えてください。
マンガに詳しくないので、自分には思いつかなかったのです。

手塚治虫人間性については、今は問題にしません。
あくまでマンガ/アニメ界に与えた悪影響に限定です。

また「見方によっては」ではなく、
たいていの人は同意するであろう、という悪影響に限定して回答してください。

http://www.netcity.or.jp/OTAKU/okada/library/books/otakugaku/No6.html#anchor1840406
アニメの制作費が安くなったことですね。
これについては宮崎駿が手塚先生が亡くなったときに
死人にムチをを打つような文章を書いて話題になりました。
参考URLを一読してみてください

岡田斗司夫さんもそう言っている。
手塚治虫vs宮崎駿

「これからはテレビアニメの時代だ。日本全国のお茶の間にテレビアニメを届けるのだ。それこそがこれからの日本文化の進むべき道だ!」
情熱に燃える手塚さんは、東映なら貧血で死にそうなほどの出血大サービスの予算(後に出てくる宮崎氏の発言によると、1話あたり50万円だという)でテレビアニメを受けてしまった。
彼の回りには彼の情熱に感動したスタッフが次々と集まって、手塚治虫アニメ製作会社虫プロダクションは設立された。虫プロでは情熱のあるスタッフが日夜がんばったが、いかんせん、いつも貧乏でスタッフ数はぎりぎり、スケジュールはオセオセだった。そのため、スタッフはスタジオに寝袋で泊まり込み、というのが当たり前になった。
「手塚さんがもうちょっと我慢すれば、テレビアニメ制作費の相場も、ずっとましなものになったのに」
というのは、アニメ業界人なら誰もが言う台詞だ。彼が亡くなったとき、マンガ専門誌の追悼記事にまで書かれてしまうほどだ。

もう少し調べてもいいんですが、だいたいこんな感じでした。
で、それに対する別の意見を2つほど。
ARTIFACT ―人工事実― : 手塚治虫氏と赤旗(コメント欄)

投稿者 :  投稿日 : 2004/12/24 10:54
極端な安値受注でアニメーターの劣悪な労働環境を決定づけた手塚治虫赤旗シンパというのも歴史の皮肉ですね・・・

投稿者 :  投稿日 : 2004/12/24 13:41
意外と誤解されてるんだけど、アトムの時はアニメーターの給料が極端に悪かった、ということはないよ。
実際は当時の番組制作費と、それに対しての広告効果(キャラグッズなど)の売り上げが極端にでかかったので、テレビ局側が「アニメは安くて莫大な利益が稼げる」という認識を持ってしまったんだって。
ある種当時のクリエイターとしての情熱(最終的に手弁当でかなり手塚がやっていた)を逆手に取られた形が今も続いている訳で。不平を言いつつ30年以上その体制に甘んじているアニメ業界が悪いと言うしかないな・・・

(太字は引用者=ぼく)
「アニメの制作費は安いものだ」というテレビ局側の認識。
今でも関連グッズとかDVDの売り上げとかで儲けるような仕組みにしてるんだろうな。ビジネスモデル的には「おもちゃ屋的なものではない、一般企業の広告収入」をほとんど考えていない、というのが、テレビ局(商業放送)の提供するものとしては異端な感じもします。
あと、以下の意見はちょっと視点が違っていて面白かった。
絶望書店日記 神話を暴くとさらなる神話

あたしはこの何年か手塚治虫関連の資料を読んで考えてきてこれには確信を抱いているが、手塚治虫は自分ひとりで完全にコントロールできるアニメ制作を望んでいたのだ。
つまり、制作費が安いから動画枚数が減ったのではなく、最初から手塚治虫ひとりですべてに関われるような枚数にするために制作費を極端な安値に抑えたのである!手塚治虫はまんがに於いてアイデアから絵までひとりでこなし、死ぬまでアシスタントには背景しか描かせなかったが、アニメに於いてもスタッフをたんなるアシスタントとして遣い、週1回のテレビアニメを個人の作品としてやらかそうとしたのだ!

(太字は引用者=ぼく)
なるほど。
手塚治虫が「漫画家としての自分の原稿料」を高くなりすぎないようにして、作品依頼を受けやすいようにしていたという話も都市伝説としては存在します。「手塚治虫先生でもこの値段なので」と、他の漫画家の原稿料が高くなりすぎないようになってしまった、というのも都市伝説としては聞きました。
逆に、「他の出版社から原稿依頼ができないように」と、ある漫画家の原稿料を日本一にしてしまったところも、都市伝説としては聞きました。「その漫画家のために雑誌を作った」という都市伝説も聞きましたが、さすがにそれはないだろうと思った。。
「漫画雑誌は安いものだ」という認識を読者に持たせてしまった誰かはいそうな気はしますが、また「漫画家になっても漫画の原稿料だけでは食えない」という状況を作ってしまった誰かもいそうな気はしますが、それらはあまり手塚治虫とは関係ないような気がする。
絵のクオリティを高くしようとすると、アニメも漫画もそれなりにコスト(人件費その他)はかかるわけで。極端な話が、現地・海外取材とか。
ちょっと最近は、ていうかいつの時代からかは不明ですが、クオリティの高さを求める読者のレベルが高くなりすぎている気がします。と言っていまさら「紙芝居なアニメ」に戻るというわけにもいかないだろうし。
 
(追記)
コメント欄で、以下のウィキペディアの記述を教えていただきました。
虫プロダクション

なお現在と異なり、当時のアニメーターの給与はとんでもなく高く(航空会社パイロット並)、高卒で5年働けば家が建つ唯一の職場と呼ばれていた。(某商業高校では、60年代にそのようなキャッチコピーの求人案内が貼られていた。)

この「某商業高校」の「求人案内」は、ぜひ見たいものです。
 
これは以下の日記に続きます。
「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その2
 
【ものすごく重要な追記】
このエントリーだけを見る人はけっこう誤解しそうなので、お手数をおかけしますが以下のエントリーも必ずご覧になることをお願いします。
「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その2
「アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その3(補足)
ぼくの私的意見(結論的な感想)は、「2」のコメント欄でも書きましたが、
「漫画も含めて手塚治虫さんの「功」「罪」いずれも過大に評価・批判しすぎているような気もしないでもありませんです」なのです。