漫画の「制作費」を考える

TVアニメの場合の制作費は、以下のところなどをいろいろ参考に。
たまごまごごはん - アニメ制作の費用についてしらべてみた。
だいたい30分1話で800〜1千万円前後かな。
漫画の場合はちょっとよくわからないので、「原稿料1枚2万円」と考えてみます。以下の数字も類推による部分が多いので、取り扱いにはご注意ください。
週刊誌連載の場合、2か月で単行本1冊できるので、月産100枚=200万円
必要経費は、紙・ペン・トーン代併せても数万円ぐらいでしょうか。
あと、仕事場の家賃が難しいけど、10万ぐらいにしておこう。
一番かかるのが、アシスタントに支払う人件費。
チーフアシ1人+サブアシ2〜3人+背景1人で、計4〜5人体制。
社会保険・年金まで含めると(普通は含めない場合が多いのかな)、1人最低15万ぐらいは必要か。
あと、チーフだったらキャリア(職歴)にもよるけど、30万ぐらいでもおかしくない。
これぐらいの給料なら、二十代〜三十代はじめまでなら、かろうじて暮らせる(家や妻や子供をあきらめれば)。
で、漫画家の支払いが人件費だけで75〜90万円。「原稿料1枚1万円」ぐらいで週刊連載やったら、持ち出し気味です。
出版(単行本化)のことを考えると、また出版社側の別の問題も。
1冊420円で1万部本を作っても、売り上げ的には420万円にしかならない
つまり、コミックス(単行本)にする際に、「新書版コミックス」の値段で出すには、必要最低部数は○万部(少なくとも1万部ではない)出さないといけない、という感じでしょうか*1
昔の『のらくろ』とかだとたとえが古すぎる気もしますが、これかなり立派な装丁ですよね、古本とかで見ると。表紙もハードカバーだし。箱になんか入っているし。
今の感覚だと本1冊で2000円ぐらいの売値がついてもおかしくなさそうだ。
ちなみにコミックス1冊読むのに15分だとしたら、30分で2冊、制作費800万円分の漫画を消費することになるので、TVアニメとほぼ同じ金額になります。
劇場の実写映画だと1500円で1時間半ぐらい楽しめる、みたいな感じなのですが、制作費2400万円の実写映画は想像できません。「映画人口」と「アニメ人口」の基本ベースの違いがすごいことになっているのかな。
漫画家の原稿料をあげる(必然的にアシスタントの給料もあがる)とか、アシスタント・仕事場を使わないで描くとか、コミックス(単行本)の単価を高くするとか、いろいろな案もありますが、二十代・三十代はともかく、「絵を描くことで生計を立てる」ことを考えるなら、商業デザイナーや学校の美術の先生などと比べると、漫画家という商売は「一発当たるとでかい」ということ以外のメリットは少ないかもしれません。
ただそれは「スポーツやる人」「音楽やる人」「文章を作る人」などなど、クリエイティヴとか実力な世界の人はみんな同じなわけで。
小説の場合は、仕事場もアシスタントも普通はいらないし、単行本は部数は少ないけどハードカバーで最初に出る場合が多いので、漫画家よりはほんの少し出費の面で楽かもしれない。ただ、三十代前半の段階でそれなり(数万人単位)の「固定読者」がいるぐらいの小説家にならないと、「一生の仕事」としていくには厳しいかも。若いことを理由に原稿・執筆依頼をする出版社がいるのは「若いことがウリになる」時期だけでしょうし、毎年次々と新人が出てくるわけです。
学校の先生やるのが一番いいかもしれないですね。つまらない結論ですが。
 
(追記)
こんなテキストも。
アニメーターとして生きる: 原因

アニメーターのほとんどが会社員ではなく個人事業者です。
所得税は入金日に天引きされますが年金、保険料、住民税は後から請求されます。
年金は加えて国民年金基金に入らないと会社員の給付率に届きませんし退職金など全くありません。
ボーナスも有給休暇も雇用保険労災保険もありません。それらがあるぐらいに貯金をしたり保険に加入したら大変な額です。
故に平均的なサラリーマン並に生活を安定させるには約その三倍必要だと聞いた事があります。
年収300万円のサラリーマン並になるには年収900万円にならなくてはいけないわけです。

とすると、アシスタント業も「チーフ」レベルで月収100万(年収1000万以上)は必要か。
そのぐらいアシに金を出している漫画家は日本にどのくらいいるんだろうか。
 

*1:雑誌で原稿料が充分に出せるほど黒字だったら別計算か。文学系の小説雑誌の場合は赤字でも出している、みたいなところもあるだろうけど、さすがに漫画の場合は赤字で出しているところはないでしょうね。テキスト書いてから気がついたけど、少し大げさに書いておいたほうが面白いのでそのままにしておきます。