「キャラを立てる」とはどういうことか

ということで、だいぶbk1のポイントが溜まっていたので、ポイントで『テヅカイズデッド』(伊藤剛・NTT出版)を買いました。
『テヅカイズデッド』bk1のみに、お礼の意味でリンク。アフィリエイトつき)
印税は、ポイントでも現金でも同じだと思うのでどうもすみません、伊藤剛さん。
まだ半分しか読んでないんですが、なんか、すごい面白いことを難しく言っているな、という感じで、雑文ライター系の修行(というとナニですが、書きかたの練習)をするともっと面白くなったかな、という印象がありました。雑文ではなく学術系テキスト的要素が強い本なので、そんなことを言われても、でしょうが、この本をほめている人で頭の悪い人はあまり見ない、ということは、ぼくの基準ではどうだかなぁ、という感じです。
で、この本の真ん中あたりに「「キャラクター」とは何か(第三章)」「三-三 「キャラ」とは何か」というテキストがあり(p109)、そこで「宮本大人「漫画においてキャラクターが『立つ』とはどういうことか」特集:キャラクターを読む『日本児童文学』2003年3-4、p48)が引用されているので、ぼくもそれを引用してみます(丸数字・漢数字は普通の数字に変えます)。

1・独自性。他のキャラクターと区別しうる特徴を持っていること。
2・自立性・擬似的な実在性。一つの物語世界にしばられないこと。読者に提示されている一つ一つの物語の背後に、そのキャラクターの住まう、より大きな物語世界があることを想起させること。この「背後の物語世界」は、あらかじめ作者が整合的に作っているものとは限らない。つまりそこには、受け手による補足が働く余地がありうる。『サザエさん』で言えば、毎日4コマで完結する一つのエピソードが「一つ一つの物語」に当たり、『磯野家の謎』(東京サザエさん学会編、飛鳥新社、1992年)のような本において、受け手によって再構成されようとしていたのが、「背後の物語世界」に当たる。
3・可変性。特徴・性格が、ある程度変化しうること。時間の経過を体現しうること。長期にわたる連載漫画の場合、キャラクターの特徴は、不変ではないことが多い。それは物語のなかでキャラクターの「成長」として提示される場合もあれば、絵柄が自然と変化していった結果である場合などもある。『ドラゴン・ボール』(鳥山明)の悟空の変化と、『ドクター・スランプ』(同)のアラレちゃんの変化を考えてもらえればよい。
4・多面性・複雑性。類型的な存在でないこと。「意外な一面」や「弱点」を持っていること。
5・不透明性。外から・他者から見えない部分(内面)を持っていること。
6・内面の重層性。自分自身にもよく見えない、上手くコントロールできない不透明さが、自分の中にあると意識されていること。「自分とは何か」を、自分に向かって、問うような意識、すなわち「近代的な自我意識」が成立していること。

さすが学者のかた(宮本大人さん)の文章という感じで、分析力には感心させられました。
ぼくにとっての漫画の「キャラが立っているか否か」の判断は2点です。
1・そのキャラの似顔絵が誰にでもすぐに書けるか
2・そのキャラを別の世界に持っていっても、キャラの性格で遊べるか
これでは「アニパロで遊べるか否か」とたいして変わりないんですが、特徴のある絵、たとえば、こんな髪型で語尾に「〜にょろ」とつければ、誰でも「あー、ちゅるやさんちゅるやさんだ」ということになる、ということが分かるわけです*1。『おそ松くん』(赤塚不二夫)の中の、おでんが好きで「ケケケッ」と笑うチビ太と同じようなものです。
そんなわけで、ネット上のパロディネタとしては「ドラえもん」「ジョジョ」「アンパンマン」がご三家でしょうが*2、それらに共通しているのは「うろ覚えでも誰でも似顔絵が描ける*3」という点にあります。
これは伝聞情報なのであまりアテにならないんですが、やなせたかし先生が「アンパンマン」というキャラ(キャラクター)を創造する前は、色紙にサインを揮毫する際には何を描いていいのか分からないので難儀だった、という話です。
これもさらに伝聞情報なのでさらにアテにならないんですが、ある漫画雑誌の編集者は「読者にサインをねだられたとき、何か描けるキャラクターを漫画家に作ってもらうのが俺の仕事だ」と言ったそうです。
確かに色紙に何を書くかというと、武者小路実篤先生なら「仲良き事は美しき哉」と茄子と南瓜の絵田川水泡先生なら「のらくろ」、そしてやなせたかし先生なら「アンパンマン*4」、「はてな」の中の人なら「どうぞご利用ください」、ぼく(愛・蔵太)なら「少し興味を持ちました」です。
そういう意味で、たとえば矢沢あい先生は少女漫画的に絵がうますぎるのが難だし*5手塚治虫先生は色紙にサインを頼まれると描けるものが多すぎるのが難だったりするのでしょうか*6
さて、あなた、あるいはあなたのサイト(ブログ)は、充分にキャラは立っているでしょうか。
 
これは以下の日記に、少しだけ続きます。
「キャラを立てる」とはどういうことか・2
 

*1:もちろん本当の「鶴屋」さんではありませんが。

*2:それにプラスして「北斗の拳」あたりかな。3つ選ぶとそれなりに異論は出そうです

*3:ただし「ジョジョ」の場合はキャラの「絵」よりも「セリフ」のほうになりますか。ジョジョの作品の登場人物の誰かになって何かを言ってみる、というのは簡単です。あー、これは「北斗の拳」でも同じですね。

*4:ぼく的にはちょっと屈折したキャラ作りになっている「ロールパンナちゃん」が綾波的に好きですが、いささかマニアックでしょうか。

*5:うますぎてアニパロ的に遊べません。

*6:アトム、ブラックジャック火の鳥、レオ、ヒゲオヤジ…いくらでもすぐに思いつきますからね。ちなみに特にお願いしないと手塚先生が色紙に描くものは「ベレー帽かぶったヒョウタンツギ」になっちゃうらしいんですが、いくら手塚先生の絵でもそれはちょっと。ぼくなら当然サファイア姫(王子)をお願いします。伝説として手塚先生に「何を描きましょうか」と聞かれて「鉄人28号を…」とおねだりした猛者の話も聞きましたが、その後の話は知りません。