教科書検定での「集団自決」に関するマスコミ報道のまとめ

 以下のようなことが報道されましたので、
時事ドットコム:日本軍「強制」は修正=沖縄戦集団自決に初の意見−高校教科書の検定結果・文科省時事通信

2007/03/30-22:23 日本軍「強制」は修正=沖縄戦集団自決に初の意見−高校教科書の検定結果・文科省
 文部科学省は30日、主に高校2年生以上が来春から使用する教科書の検定結果を発表した。日本史で、太平洋戦争末期の沖縄戦の際、日本軍による強制で住民が集団自決したとする記述すべてに初めて検定意見が付き、各教科書会社は「日本軍により」という部分を削ったり、「自決した住民もいた」という表現などに修正したりした。理科や数学では、学習指導要領の範囲を超える「発展的内容」が倍増した。
 沖縄戦の集団自決を扱ったのは6社8点。うち5社7点に「実態について誤解するおそれのある表現」と意見が付き、「日本軍に集団自決を強制された人もいた」が「集団自決に追い込まれた人々もいた」(清水書院)などに改められた。
 2005年度(主に高校1年生対象)は申請段階から今回意見が付けられたような記述がなかったが、04年度は「日本軍に…『集団自決』を強制されたりした」と記述した中学の歴史教科書が合格している。
 文科省は「以前から(命令や強制はなかったとする)反対説との間で争いがあり、軍の命令があったと断定するのは不適切で、今回から意見を付けた」と説明している。

 資料的な意味と、今後について考えるため、「マスコミ」と「2ちゃんねる」、および「市民団体」系のテキストを拾って置いてみることにします(今回はマスコミ報道のみ)。拾うにあたっては、多少の選択をしますが、「これも入れて欲しい」というのがあったら言ってください。あと、適当に太字にします。
「軍が強制」に検定意見  高校教科書、発展は増加岩手日報ニュース。ただし「共同通信」が各地方新聞に送ったもの)

2007年03月30日
「軍が強制」に検定意見  高校教科書、発展は増加
 文部科学省は30日、2008年度から使用される高校教科書(主に2、3年生用)の検定結果を公表した。日本史A、Bでは第2次世界大戦中の沖縄戦で日本軍が住民の集団自決を強制したとの記述7カ所に、修正を求める検定意見が初めて付いた。
 学習指導要領の範囲を超える「発展的内容」が全体に占める割合は理科4・3%、数学2・0%と4年前の前回検定の2倍以上。基礎的な内容に厳選するゆとり教育を見直す流れがさらに顕著になった。
 今回検定に申請したのは計224点。「100ページあたりの検定意見は80以下」との基準に達しなかった生物☆の教科書2点が不合格になった。
 沖縄戦の集団自決は、昨年の検定まで軍の強制を明記した教科書もすべて合格していた。
 しかし文科省は今回から方針を転換。「日本軍は(中略)くばった手りゅう弾で集団自害と殺しあいをさせ」と記述した教科書には「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現」と検定意見で修正を求めた。
(注)☆はローマ数字の2

「日本軍は(中略)くばった手りゅう弾で集団自害と殺しあいをさせ」と書いてある教科書はどの出版社のものなのか、ちょっと調べたい。
時事ドットコム:「歴史曲げずに伝えて」=沖縄の集団自決生き残り男性−教科書検定時事通信

2007/03/30-17:36 「歴史曲げずに伝えて」=沖縄の集団自決生き残り男性−教科書検定
 「文部科学省には、歴史を曲げるようなことをしてほしくない」。沖縄戦の集団自決で軍の強制があったとする記述に文科省が検定意見を付けたことについて、集団自決の生き残りである中村一男さん(73)=沖縄県座間味村=は30日、こう語った。
 座間味島沖縄戦を体験したのは10歳の時。日本軍から手りゅう弾を渡され「米軍に捕まったら体のあちこちを切り刻んでじわじわ殺される」と聞かされた。「自決しろとはっきり言われたか記憶にないが、暗に自決しろと言っているのと同じだ」と振り返った。別の家族が手りゅう弾で自決するのも見たという。
 中村さんは「うやむやにするのでなく、歴史は歴史として後世に伝えなければいけない」と静かに話した。
 一方、命令を出したとされる元陸軍少佐梅沢裕さん(90)は同日、大阪市内で取材に応じ「(修正は)とてもうれしい。強制などとんでもない」と興奮気味に話した。

 この「中村一男」さんはぼくの日記では初出ですが、「梅沢裕」さんは出たことがあります。
愛・蔵太の少し調べて書く日記 - 関係者に酒飲ませて沖縄の「集団自決」をなかったことにしちゃうとは、みたいな話は、とはいえもう少しややこしい
 ていうか、文部科学省が検定結果を公表した2007年3月30日って、「沖縄集団自決冤罪訴訟」の「第8回口頭弁論」があった日なんですけど…。狙ったか。
 で、多分2007年3月31日の新聞社説で、アレな新聞はアレなことを、ナニな新聞はナニなことを社説で書いて、ネットも含めてあれこれある、という展開が予想されます。社説が出たらまたぼくも何か言うかもしれない。
 一応、以下のところを参考に。
沖縄集団自決冤罪訴訟を支援する会
沖縄集団自決冤罪訴訟を支援する会:教科書検定 集団自決に軍関与を削除

 柳原事務局次長のからの速報を以下に掲載します。

 先ほど「沖縄集団自決冤罪訴訟」裁判とその後の記者会見、報告集会がおわりました。
 傍聴に参加下さった方々ありがとうございました。
 裁判は7月に愈々証人尋問が行われます。
 被告側は大江をよばないようですので、原告側から要望する予定です。
 本日は2時半から記者会見をさせていただきました。
 徳永弁護士から今までの裁判の流れと今後の報告があり、
その後記者の方から「教科書から軍の命令の記述が削除されますがどのようにもおもわれますか」と質問があり、梅澤さんは「とてもうれしいよ、こんなうれしいことはありません」と話されました。
 私はその場で涙がながれてきました。梅澤さんは60年間どのような気持ちですごかされたか、素直な気持ちで話されて記者の皆も真剣に聞いていました。赤松さん(弟)も喜びの感想を述べれていましたが、それを聞いて梅澤さんは「赤松は死んでしまった、奥さんもしんでしまったどんなに無念だったろうか」と赤松大尉の気持ちを代弁され「私の冤罪を晴らす事もたいせつですが、子供達の教科書からこの記載が消えることが子供達にとってもよかったと」言われていました。
 その報告集会ではその話を聞いてる記者の顔が皆いい顔をしていたと話されました。
 取り急ぎご報告まで!

柳原

 この裁判の「被告」の側のサイトもあるので、是非両者の主張を読んで、考えてみてください。
大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
 ぼくとしては、以下のところにある、
裁判の争点
「5.双方の主張(争点)」がおすすめです。
 あと、「中村一男」さん関連でこんなのも見つかったので紹介しておきます。
涙こらえ戦争体験語る 座間味村民10人から証言採取 琉球新報〜沖縄の最新ローカルニュース

涙こらえ戦争体験語る 座間味村民10人から証言採取
 【座間味】62年前、慶良間諸島に米軍が上陸した26日、座間味村で村民の戦争体験の聞き取り調査が行われた。10人が参加し、62年前の悲劇を語り合った。米軍上陸の日に証言を採取するのは初めて。
 村教育委員会が取り組む座間味村平和学習ガイドブック製作の一環。参加者らは沖縄戦の1フィート映像を見たあと、ガイドブック編集委員の質問に答える形で体験を語った。戦争当時、小学校3年生だった中村一男さん(73)は初めて自分の体験を口にした。中村さんは「母ときょうだい4人で夜、山に登ったが、“斬(き)り込み”の友軍を米軍と思い、山を降りた。周りの人は自決をしようと右往左往していたが、何とか逃げよう、生きようと手榴(しゅりゅう)弾を捨てた」と涙をこらえながら話した。
 住民の集団自決が発生した座間味島編集委員は「なぜ自決に至ったのか、なぜ死ななかったのかを話してほしい」と呼び掛けた。大城澄江さん(87)は「捕虜になると女性は辱めを受ける、捕虜にならないようにと日本軍に言われていた。友人と4人で一つの手榴弾で自決しようとしたが、不発弾だった」と当時を思い出しながら語った。
(3/27 9:43)

実際、大陸のほうとかでは辱めを受けていたわけで、日本軍の誰がそのようなことを言っていたかは不明ですが、アメリカ軍がレイプしまくっていた、という記録はどこかにあったかな。
沖縄タイムス:「集団自決」忘れない/座間味村、平和学習本発行へ 強いられた死 生存者訴え/岩波訴訟支援者ら「証言 胸に刻む」

「集団自決」忘れない/座間味村、平和学習本発行へ
 沖縄戦で、日本軍の軍命や誘導により起きた「集団自決」を伝えようと、座間味村で平和学習ガイドブック編集が進んでいる。六十二年前に「集団自決」が起きた二十六日は、戦争体験者が「平和之塔」を参拝、編集作業の一環で、沖縄戦記録フィルムを鑑賞し理解を深めた。
 同村には平和学習用のガイド本がなかったため二〇〇六年十二月に編集作業を開始。「集団自決」の聞き取りをし、本をまとめてきた同村出身の元小学校長の宮城恒彦さんを委員長に、各地区ごとに委員を委嘱。住民が「集団自決」に追い込まれた過程を明らかにするため、戦前の体験も調査しており、八月に出版予定。
 沖縄戦フィルムの鑑賞は、当時の状況を思い出してもらうために企画された。戦闘状況を食い入るように見詰めていた中村一男さん(73)は「日本軍と米軍の攻撃の間で、皆どうしょうもないと泣き出し、渡されていた手りゅう弾で自決しようとした」と振り返った。


     ◇     ◇     ◇     

強いられた死 生存者訴え/岩波訴訟支援者ら「証言 胸に刻む」


 慶良間諸島での「集団自決」への理解を深めようと来沖中の「大江健三郎岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会」(大阪府)の二十二人は二十六日、那覇市で生存者の一人、金城重明さん(78)=沖縄キリスト教短大名誉教授の証言を聞いた。
 元軍人らが軍命の記述をめぐって大阪地裁に提訴した「集団自決」訴訟で、連絡会は被告の岩波書店などの支援活動を続けている。
 「『鬼畜米英』教育を受けた私たちには生き残ることこそ恐怖。死が唯一の選択肢だった」。日本軍に強いられた集団死の実相を訴える金城さんに、参加者は何度もうなずきながら聞き入った。
 あいさつに立った同連絡会の西浜楢和世話人(63)は「沖縄戦の真実の塗り替えを絶対許してはいけない。金城さんたちの言葉を胸に刻み、裁判支援の輪を広げたい」と誓った。一行は三日間の日程を終え大阪に戻った。

「日本軍と米軍の攻撃の間で、皆どうしょうもないと泣き出し、渡されていた手りゅう弾で自決しようとした」という中村一男さんの証言だけでは、「自決命令があったかどうか」は今イチ不明です。手りゅう弾が誰によって、何と言われて渡されたか、というのは、たとえばぼくの日記の中にも「証言」としてはあるんですが、
愛・蔵太の少し調べて書く日記 - 朝日新聞1988年6月16日の富山真順さんの「証言」電子テキスト化と、謎の「兵器軍曹」について
 富山真順さんの「証言」では、その「命令」を聞いたのは「十五歳から十七歳未満の少年だけ。数人の役場職員も加えて二十余人」ということなので、当時小学生だった中村一男さんは多分聞いていないと思います。あと、「俺は確かに聞いた」という人が、また出て来たりしたら、前の日記でも書いたとおり、その「兵器軍曹」の名前が是非知りたいと思います。
 だいぶ「教科書検定」の話と外れてしまったので、元の報道テキストに戻ります。
沖縄戦「集団自決」、教科書検定で修正(TBS)

沖縄戦「集団自決」、教科書検定で修正

 来年春から主に高校2年生が使う教科書の検定結果がまとまりました。日本史で、太平洋戦争末期の沖縄戦での住民の「集団自決」について、これまで「日本軍により強制された」となっていた記述が強制はなかったように修正されています。
 文部科学省教科書検定調査審議会は、「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある」として、教科書会社5社が申請した日本史の教科書7点に意見書を付け、その結果、教科書会社が修正しました。
 具体的には、「日本軍に集団自決を強制された人もいた」という記述が「集団自決に追い込まれた人々もいた」。あるいは、「日本軍に『集団自決』を強いられたり」が、「追いつめられて『集団自決』した人や」となり、日本軍による強制はなかったように修正されています。
 また、「日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で『自決』を強いれたものもあった」という記述が、「『集団自決』に追い込まれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もあった」と文章が入れ替えられて、「強いられた」が削除されています。
 「やっぱり教科書として子供たちが学ぶ中で、なぜ日本軍が同じ住民を殺してしまうの、死に誘導してしまうの、ということが、一番の沖縄戦の中での、軍隊の醜さとか軍隊の本質というものを表している。そういう事例であろうと」(琉球大学教育学部 山口剛史講師)
 「集団自決したのは自分勝手と。ただ怖がって死んでしまったと。こういうふうに解釈もできるわけですよ。僕らみたいに体験者が生きている間はいいですよ。歴史というのはずっと流れていくからね、今から40、50年経つと、どういうふうに死んだかということが忘れられる。軍隊の関係が完全に断ち切られる。そういった点が不安、心配」(集団自決を体験し姉を亡くした宮城恒彦さん)
 一方、従軍慰安婦問題については、教科書会社6社が日本史や倫理の教科書で取り上げましたが、今回の検定では意見書は付きませんでした。
 申請書の記述では、「日本軍による強制」という記述はなく、「送り込まれた」「かりだされた」などという表現になっています。(30日16:32)

 なんとなく「広義の強制性」とか「皇民教育のせいで」とかに話を持って行きたがっている様子を、ぼくには感じられるのですが。書類として形に残っている「軍の命令書」が証拠として出てくるといいんでしょうけどね。
沖縄戦集団自決「強制」記述に修正意見 教科書検定朝日新聞

沖縄戦集団自決「強制」記述に修正意見 教科書検定
2007年03月30日19時30分
 文部科学省が30日公表した06年度の教科書検定で、地理歴史・公民では、沖縄戦の集団自決をめぐって、「日本軍に強いられた」という内容に対し修正を求める意見が初めてついたことが分かった。強制性を否定する資料や証言を根拠に、従来の判断基準を変えたためだ。イラク戦争靖国参拝など外交や政治にかかわる問題では、政府見解に沿う記述を求めるこの数年の傾向が今回も続いた。
 今回の対象は、高校中学年(主に2、3年で使用)の教科書。224点が申請され、検定意見を受けて各出版社が修正したうえで222点が合格。不合格の2点は、いずれも生物2だった。
 地歴公民のうち日本史では、沖縄戦の集団自決に関して「日本軍に強いられた」という趣旨を書いた7点すべてが「命令したかどうかは明らかと言えない」と指摘され、各社は「集団自決に追い込まれた」などと修正した。日本史の教科書は昨年も申請できたが、その際にはこうした意見はつかなかった。
 文科省は、判断基準を変えた理由を(1)「軍の命令があった」とする資料と否定する資料の双方がある(2)慶良間諸島で自決を命じたと言われてきた元軍人やその遺族が05年、名誉棄損を訴えて訴訟を起こしている(3)近年の研究は、命令の有無より住民の精神状況が重視されている――などの状況からと説明する。昨年合格した出版社には、判断が変わった旨は知らせるが、すぐに修正を求めることはしない方針だ。
 地歴公民では、他にも時事問題で政府見解に沿った意見がついた。その結果、イラク戦争では、「米英軍のイラク侵攻」が「イラク攻撃」に、自衛隊が派遣された時期は「戦時中」から「主要な戦闘終結後も武力衝突がつづく」に変わった。首相の靖国参拝をめぐる裁判では、「合憲とする判決はない」という記述に「私的参拝と区別する必要がある」と意見がつき、「公式参拝を合憲とする判決はない」となった。
 南京大虐殺では今回も、「犠牲者数について、諸説を十分に配慮していない」との意見が日本史5点についた。一方、政治・外交問題となり、中学の教科書からはなくなった「従軍慰安婦」(「慰安婦」「慰安施設」を含む)の問題は16点で取りあげられたが、意見は一つもつかなかった。

「判断基準を変えた理由」がより具体的になって、読者にわかりやすくなりました。「「軍の命令があった」とする資料と否定する資料の双方がある」の「資料」は、「証言」と言い換えたほうがいいとは思いますが。
文科省、沖縄戦通説に「待った」=教科書検定時事通信

2007年03月30日18時41分
文科省沖縄戦通説に「待った」=教科書検定
 通説とされ、これまで教科書でも記述されてきた日本軍の強制による沖縄戦の住民集団自決について、文部科学省は「強制があったかどうか明らかでない」とし、従来の検定方針を事実上転換した。
 集団自決を軍の命令と最初に指摘したのは、1950年に沖縄タイムス社が出版した「鉄の暴風」とされる。その後、作家曽野綾子氏が、住民の聞き取りで反証する著書を出すなど、命令の存否で論争が続いてきた。
 2005年8月、命令を下したとされた元陸軍少佐梅沢裕氏(90)や元大尉の遺族が、軍の強要があったと断定した大江健三郎氏の著書で名誉を傷つけられたとして、損害賠償などを求めて大阪地裁に提訴。原告側は「『命令』は、住民が戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づき軍人軍属として年金が受けられるようねつ造された」と主張している。
 方針転換の理由について、文科省は「提訴は一つのきっかけ。近年、命令はなかったとする遺族の新たな証言なども出ている。片方の主張に基づいた通説のみによって検定意見を付けないのはバランスが取れないと判断した」(教科書課)と説明する。
 しかし、ある研究者は「提訴という一つの行為があったにすぎない。歴史的な検証に基づく学説状況に変化はなく、教科書の記述を変える必要は全くない」と反論している。
 日本史Aの記述を修正したある出版社の編集部長は「教科書調査官から『命令はなかったというのが定説になりつつある』と説明を受けた」と明かした。一方、別の出版社の担当者は「裁判があったので、検定意見は予想の範囲内だった」と話した。(了)

時事ドットコム:日本軍「強制」は修正=沖縄戦集団自決に初の意見−高校教科書の検定結果・文科省時事通信)」の続きの報道ですが、関係者の意見がバランスよく掲載されているかな、という印象でした。
日本史「沖縄戦集団自決」、「軍の強要」に検定意見(読売新聞)

日本史「沖縄戦集団自決」、「軍の強要」に検定意見
 文部科学省は30日、来春から使用される高校中学年向け教科書の検定結果を公表した。
 日本史では、沖縄戦の集団自決に関する記述について、今回の検定から、日本軍の強制があったとする表現すべてに検定意見が付けられた。
 一方、数学や英語などの主要科目では、大学入試を見据えた教科書から、学力低下に対応するため小学校の内容を盛り込む教科書まで、二極化が鮮明となった。
 今回の検定には、工業など専門高校の教科を除く普通教科7教科207点の申請があった。「生物2」の2点が「誤りや不正確な記述が多い」として不合格となったほかは、最終的に205点が合格した。
 日本史で沖縄戦に言及したのは、日本史Aと日本史Bの教科書計10点のうち8点。文科省はこのうち7点について、日本軍が住民の集団自決を強要あるいは命令したという内容の記述に、「沖縄戦の実態について誤解する恐れがある」との意見を付け、修正を求めた。修正後の記述は「追いつめられて集団自決した」などとなり、集団自決に軍が直接関与したとする表現は教科書からすべて消えた。
 文科省は最近の学説などを根拠に、「日本軍による集団自決の強要や命令があったかどうかは明らかでない」としている。これに対し、沖縄県民からは「集団自決を軍と切り離して考えることは出来ない」などの反発が出ている。
 沖縄県教委は「『集団自決』を含む沖縄戦の実相については様々な指摘がある。今回の検定内容については把握していないので、コメントを差し控える」としている。
(2007年3月30日23時37分 読売新聞)

教科書検定「日本軍が集団自決命令」で修正日テレNEWS24

教科書検定「日本軍が集団自決命令」で修正<3/30 21:32>

 来年4月から使用される教科書の検定で、第2次世界大戦中の沖縄戦での「集団自決」をめぐり、「日本軍が命令した」とした日本史の教科書に対し、修正が求められた。
 今回、検定の対象となったのは、主に高校2年生が来年4月から使用する224点。検定では、これまで「日本軍が命令した」と記述されていた第2次世界大戦中の沖縄戦の集団自決について、「日本軍が命令したというのは沖縄戦の実態を反映していない」として修正を求めた。
 修正を求められた教科書は、「日本軍が」という主語を削除し、「集団自決に追い込まれた」などとすることで検定に合格した。
 「集団自決を日本軍が命令した」という記述に対して、これまで修正が求められたことはなく、教科書会社からは「なぜ修正が求められたかわからない」という声も上がっている

 出た出た、どこから上がっているか皆目不明な「という声も上がっている」記事。
 今回の報道では、出所不明な「関係者の声」とか「議論を呼びそうだ」的な、メディアリテラシー的に信用できないテキストではなく、ちゃんと個人名を出してコメントしている人が多い印象を受けたのですが、なんかだんだん「ある研究者」とか「沖縄県民」とか、謎の人たちが増えてきているような感じです。なるべく誘導されないようにしなくては
高校教科書検定 沖縄戦集団自決の記述 「日本軍の関与」削除 文科省「実態誤解の恐れ」北海道新聞

高校教科書検定 沖縄戦集団自決の記述 「日本軍の関与」削除 文科省「実態誤解の恐れ」  2007/03/30 23:38
 文部科学省は三十日、来春から主に高校二年生が使う教科書の検定結果を公表した。第二次大戦末期の沖縄戦の集団自決をめぐって、「日本軍に強いられた」などとする記述に軒並み厳しい検定意見が付き、日本軍の強制や関与を示す表現が今回初めてなくなった。歴史記述の在り方をめぐって大きな論議を呼びそうだ。学習指導要領の範囲を超える「発展的内容」の記述は四年前の前回検定より増加し、脱「ゆとり教育」路線が定着しつつある。
 地理歴史の日本史では、六社八点が沖縄戦での住民の集団自決を記述。このうち「日本軍に強いられた」「日本軍により追い込まれた」など軍の強制や命令を示す表現をした五社七点に、「沖縄戦の実態について誤解する恐れ」があるという検定意見が付いた。いずれも「追いつめられて集団自決した」など日本軍の関与に言及しない表現に修正した。
 今回検定意見が付いた集団自決の記述は一九八○年代半ばに登場し、約二十年間定着してきたが、文科省は今回方針を大きく転換した。同省教科書課は「『日本軍の命令がなかった』とする説が近年出てきており、日本軍が命令したか必ずしも明らかでない。修正を求めることにした」と説明している。
 発展的内容は文科省が検定基準を見直して○二年度検定で導入し、翌年度から小中学校を含む全教科で認めた。今回の「発展」は数学、理科、芸術の三教科で計三百六十六件に上り、○二年度の前回検定の二百五件から大幅に増えた。
 理科系では十四冊すべてが「発展」を盛り込み、計二百六十一件になった。一冊当たりで最も多かったのは化学2の二三・九件で、全ページ数の5・5%を占めた。理科系以外での「発展」は、数学九十七件、芸術八件で、それ以外の国語や地理歴史、公民などはゼロだった。
 今回申請されたのは国語や地理歴史など普通教科と、農業など専門教科の計十一教科二百二十四点。このうち理科の生物2の二点が不合格となり、残る二百二十二点が最終的に合格した。

関係ないんですが、「化学2の二三・九件」という、最も多かった検定部分には何が書かれていたのか、ものすごく興味を持ちました。月曜日にでも文部科学省に聞いてみたいぐらい。
沖縄戦住民集団自決、「旧日本軍が強制」認めず・教科書検定日本経済新聞

沖縄戦民集団自決、「旧日本軍が強制」認めず・教科書検定
 文部科学省が30日に検定結果を発表した高校2・3年生向け教科書では、太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団自決について、旧日本軍が自決を強制したとする記述が認められなくなった。「軍の命令があったかどうかはっきりしていないため」(文部科学省)という。昨年まではこうした記述に意見は付いていなかった。
 意見が付いたのは、日本史A、Bの「日本軍に『集団自決』を強いられた」や「日本軍は……手りゅう弾で集団自害と殺し合いをさせ」といった記述。計7点の申請本について「沖縄戦の実態について誤解する恐れがある」とされた。
 その結果「追いつめられて『集団自決』した」「日本軍のくばった手りゅう弾で集団自害と殺し合いがおこった」などと、いずれも軍の強制の有無が不明確な書きぶりに変わった。
 集団自決を巡っては、軍の守備隊長の命令があったと著作で指摘した作家の大江健三郎氏らに対し、当時の隊長らが「命令していない」として損害賠償を求める訴訟を2005年に起こしている。 (02:02)

 ↑この記事については、特に言うようなことはありません。
沖縄戦集団自決「軍命令」を修正 高校教科書検定産経新聞

沖縄戦集団自決「軍命令」を修正 高校教科書検定
 文部科学省は30日、来春から使用される高校教科書(主に2、3年生用)の検定結果を発表した。先の大戦末期の沖縄戦で起きた住民の集団自決について、軍の命令によるものだったとする記述すべてに初めて検定意見が付き、出版社側が修正して合格となった。集団自決の軍命令説については、遺族年金受給のための口裏合わせだったとする証言が相次いで明らかになっており、文科省は今回から検定方針を変更した。
 沖縄戦の集団自決をめぐっては、昭和25年に沖縄タイムス社から出版された『鉄の暴風』で、渡嘉敷島座間味島で守備隊長が命じたと記述。沖縄県史や多くの出版物に引用され、教科書にも記述されてきた。
 しかし、作家の曽野綾子さんが渡嘉敷島を現地取材して48年に出版した『ある神話の背景』で軍命令説に疑問を投げかけたほか、座間味島の生存者の女性が「軍命令による自決なら遺族が遺族年金を受け取れると島の長老に説得され、偽証をした」と話したことを娘が平成13年に著書で明らかにしていた。
 琉球政府で軍人・軍属や遺族の援護業務に携わった男性も昨年、産経新聞の取材に対し「遺族に援護法を適用するために軍命令ということにした」と証言していた。
 また、作家の大江健三郎氏らの著書で自決を命令したと名指しされ名誉を傷つけられたとして、座間味島の守備隊長だった元少佐らが17年に大江氏らを大阪地裁に提訴。文科省はこの訴訟での元少佐の陳述書が検定方針変更の大きな要因としている。
 集団自決をめぐって検定意見が付いたのは日本史の10種類のうち7種類の教科書で、「日本軍に集団自決を強制された人もいた」が「集団自決に追い込まれた人々もいた」などと修正して合格した。
(2007/03/31 02:37)

 ↑この記事は「関係者のコメント」がないのが少し寂しいところ。
学説変わらなくても検定意見NHKニュース)

来年4月から高校生が使う教科書の検定で、文部科学省は、南京事件など学説が分かれる問題についてはバランスを取った記述をするよう求める一方で、太平洋戦争末期の沖縄戦の集団自決については、学説に明らかな変化はないとしながらも検定意見を付けて、日本軍の直接的な関与が削除される結果となりました。
(3月31日 4時26分)

えー!? 南京事件」に関してあれこれしろ、という検定意見は「朝日新聞」と、このNHKニュース以外には報道されていないんですが。諸外国から批判の声があがりそうだ
集団自決『軍の強制』削除 沖縄戦・高校教科書検定東京新聞

集団自決『軍の強制』削除
沖縄戦・高校教科書検定
 文部科学省は三十日、二〇〇八年度から使う高校用教科書(主に二年生用)の検定結果を公表した。第二次世界大戦沖縄戦であった集団自決について、「近年の状況を踏まえると、旧日本軍が強制したかどうかは明らかではない」として従来の姿勢を変更。旧日本軍の関与に言及した日本史の教科書には、修正を求める検定意見が付いた。一方で、学習指導要領の範囲を超えて教えることを認める「発展的内容」は、初めて認められた〇三年の検定時に比べ、理科を中心に増加した。 
 近現代史中心の日本史A、通史を扱う同Bの計十点のうち、八点が沖縄戦の集団自決に言及。「日本軍に『集団自決』を強いられたり」「日本軍はくばった手りゅう弾で集団自害と殺し合いをさせ」などと記述した七点に、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現」との意見を付けた。
 いずれも、検定に合格し現在出版されている教科書と同じ記述だが、出版社側は「追いつめられて『集団自決』した人や」「日本軍のくばった手りゅう弾で集団自害と殺しあいがおこった」などと、日本軍の強制に触れない形に修正し、合格した。
 集団自決については、作家大江健三郎氏の著書「沖縄ノート」などで、「自決命令を出して多くの村民を集団自決させた」などと記述された。これについて、沖縄・座間味島の当時の日本軍守備隊長で元少佐の梅沢裕氏らが、記述は誤りで名誉を傷つけられたとして、出版元の岩波書店(東京)と大江氏を相手取り、出版差し止めと損害賠償などを求めて二〇〇五年に大阪地裁に提訴した。
 同省は検定姿勢変更の理由を(1)梅沢氏が訴訟で「自決命令はない」と意見陳述した(2)最近の学説状況では、軍の命令の有無より集団自決に至った精神状態に着目して論じるものが多い−と説明。発行済みの教科書で、同様の記述をしている出版社に情報提供し、「訂正手続きが出る可能性もある」としている。
 一方、「発展的内容」が全体ページ数に占める割合は、理科が4・3%(前回検定2・1%)、数学2・0%(同0・9%)と倍以上に。ただ、化学2で一番多かった教科書も9%で、分量の上限の目安とされる二割には達しなかった。
 現在、学力低下批判を受けて学習指導要領の見直しが進行中。現在より教える内容が増えるとみられ、「指導要領範囲内の内容が増えれば、次の改定では『発展』の記述がなくなるかも」(出版社)との見方もある。
 今回の検定に合格したのは二百二十二点。生物2の二点が不合格となった。日本史B、倫理、外国語ライティングを除き、全体的に平均ページ数は増えた。進学校向けには「発展」の記載を増やし、やさしい内容の教科書には、生徒の興味を持続させるため漫画を入れたり、丁寧な記述をしているためとみられる。
<メモ>発展的内容 教科書では学習指導要領の範囲を超える内容はマークなどを付けて本文と区別し、すべての児童生徒が一律に学ぶ必要がないことを明記する必要がある。2004年度に使用開始の高校用教科書から認められた。小中学校用は記述全体の1割以下、高校用は2割以下が目安。文部科学省は従来、指導要領の範囲を超える記述を認めなかったが、内容を大幅に削減した現行指導要領が学力低下につながるとの批判を受け、03年に指導要領を「最低基準」とし、発展的内容の記述を認めた。

 教科書検定の内容についてのくわしさでは、これが一番でした。
 これで主要各紙の記事はそろったんですが、毎日新聞の記事が見当たらないのが気になるところです(見つかったら追記します)。
 あとは社説。
【主張】沖縄戦 新検定方針を評価したい産経新聞

【主張】沖縄戦 新検定方針を評価したい
 来春から使われる高校教科書の検定結果が公表され、第二次大戦末期の沖縄戦で旧日本軍の命令で住民が集団自決を強いられたとする誤った記述に初めて検定意見がつき、修正が行われた。新たな検定方針を評価したい。
 集団自決の軍命令説は、昭和25年に発刊された沖縄タイムス社の沖縄戦記『鉄の暴風』に記され、その後の刊行物に孫引きされる形で広がった。
 しかし、渡嘉敷島の集団自決について作家の曽野綾子さんが、昭和40年代半ばに現地で詳しく取材し、著書『ある神話の背景』で疑問を示したのをはじめ、遺族年金を受け取るための偽証が基になったことが分かり、軍命令説は否定されている。
 作家の大江健三郎氏の『沖縄ノート』などには、座間味島渡嘉敷島での集団自決が、それぞれの島の守備隊長が命じたことにより行われたとする記述があり、元守備隊長や遺族らが、誤った記述で名誉を傷つけられたとして訴訟も起こしている。
 軍命令説は、信憑(しんぴょう)性を失っているにもかかわらず、独り歩きを続け、高校だけでなく中学校の教科書にも掲載されている。今回の検定で「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある」と検定意見がつけられたのは、むしろ遅すぎたほどだ。
 沖縄戦を含め、領土、靖国問題自衛隊イラク派遣、ジェンダー(性差)などについても、一方的な記述には検定意見がついた。検定が本来の機能を果たしつつあると思われる。
 前進ではあるが、教科書にはまだまだ不確かな証言に基づく記述や信憑性の薄い数字が多いのも事実だ。
 例えば南京事件の犠牲者数は誇大な数字が書かれている。最近の実証的研究で「10万〜20万人虐殺」説はほとんど否定されており、検定では諸説に十分配慮するよう求めている。
 その結果、「数万人」説を書き加えた教科書もあるが、相変わらず「30万人」という中国側が宣伝している数字を記述している教科書はある。
 子供たちが使う教科書に、不確かな記述や数字を載せるのは有害でしかない。教科書執筆者、出版社には、歴史を楽しく学び、好きになれる教科書づくりはむろんだが、なによりも実証に基づく正確な記述を求めたい。
(2007/03/31 05:03)

集団自決―軍は無関係というのか朝日新聞

 高校生が使う日本史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」が軒並み修正を求められた。
 「日本軍に強いられた」という趣旨の記述に対し、文部科学省が「軍が命令したかどうかは、明らかとは言えない」と待ったをかけたのだ。
 教科書の内容は次のように変わった。
 日本軍に「集団自決」を強いられた→追いつめられて「集団自決」した
 日本軍に集団自決を強制された人もいた→集団自決に追い込まれた人々もいた
 肉親が殺し合う集団自決が主に起きたのは、米軍が最初に上陸した慶良間諸島だ。犠牲者は数百人にのぼる。
 軍の関与が削られた結果、住民にも捕虜になることを許さず、自決を強いた軍国主義の異常さが消えてしまう。それは歴史をゆがめることにならないか。
 この検定には大きな疑問がある。
 ひとつは、なぜ、今になって日本軍の関与を削らせたのか、ということだ。前回の05年度検定までは、同じような表現があったのに問題にしてこなかった。
 文科省は検定基準を変えた理由として「状況の変化」を挙げる。だが、具体的な変化で目立つのは、自決を命じたとされてきた元守備隊長らが05年、命令していないとして起こした訴訟ぐらいだ。
 その程度の変化をよりどころに、教科書を書きかえさせたとすれば、あまりにも乱暴ではないか。
 そもそも教科書の執筆者らは「集団自決はすべて軍に強いられた」と言っているわけではない。そうした事例もある、と書いているにすぎない。
 「沖縄県史」や「渡嘉敷村史」をひもとけば、自決用の手投げ弾を渡されるなど、自決を強いられたとしか読めない数々の住民の体験が紹介されている。その生々しい体験を文科省は否定するのか。それが二つ目の疑問だ。
 当時、渡嘉敷村役場で兵事主任を務めていた富山真順さん(故人)は88年、朝日新聞に対し、自決命令の実態を次のように語っている。
 富山さんは軍の命令で、非戦闘員の少年と役場職員の20人余りを集めた。下士官が1人に2個ずつ手投げ弾を配り、「敵に遭遇したら、1個で攻撃せよ。捕虜となる恐れがあるときは、残る1個で自決せよ」と命じた。集団自決が起きたのは、その1週間後だった。
 沖縄キリスト教短大の学長を務めた金城重明さん(78)は生き証人だ。手投げ弾が配られる現場に居合わせた。金城さんまで手投げ弾は回ってこず、母と妹、弟に手をかけて命を奪った。「軍隊が非戦闘員に武器を手渡すのは、自決命令を現実化したものだ」と語る。
 旧日本軍の慰安婦について、安倍政権には、軍とのかかわりを極力少なく見せようという動きがある。今回の文科省の検定方針も軌を一にしていないか。
 国民にとってつらい歴史でも、目をそむけない。将来を担う子どもたちにきちんと教えるのが教育である。

 ぼく個人としては朝日新聞のほうが面白いんですが、その面白さは「少し調べたい」という気になる点においての面白さなので、ときどき疲れます。
 ちなみに、1988年の朝日新聞の「富山真順」さんの証言は、以下のところで読むことができます。
愛・蔵太の少し調べて書く日記 - 朝日新聞1988年6月16日の富山真順さんの「証言」電子テキスト化と、謎の「兵器軍曹」について
 
(追記)
 読売新聞の社説が出ました。
[教科書検定]「歴史上の論争点は公正に記せ」(読売新聞)

 [教科書検定]「歴史上の論争点は公正に記せ」
 諸説ある史実は断定的には書かない、誤解を招くような表記は避ける。文部科学省が求めたのは、そんな当たり前の教科書記述だったと言える。
 来年春から高校で使われる教科書の検定結果が公表された。
 終戦の年の1945年、沖縄戦のさ中に起きた「集団自決」をめぐる記述が一つの焦点になった。
 日本史教科書を申請した発行社6社のうち5社の記述に、それぞれ「沖縄戦の実態が誤解されるおそれがある」との検定意見がついた。「集団自決」について、「日本軍が追い込んだ」「日本軍に強制された」などと表記していた。
 「日本軍が」の主語を削り、「集団自決に追い込まれた人々もいた」などと修正することで結局、検定はパスした。
 今回、文科省が着目したのは「近年の状況の変化」だったという。
 70年代以降、軍命令の存在を否定する著作物や証言が増えた。一昨年には、大江健三郎氏の著書に命令した本人として取り上げられた元将校らが、大江氏らを相手に名誉棄損訴訟を起こしている。
 生徒が誤解するおそれのある表現は避ける、と規定した検定基準に則して、今回の検定から修正要請に踏み切った。妥当な対応だったと言えよう。
 ただ、昨年度検定の高校教科書などには、こうした表記が残っている。文科省は速やかに修正を求めるべきだ。
 南京事件」は7社が日本史、世界史で取り上げた。うち4社の犠牲者数について、「諸説を十分に配慮していない」との意見が付いた。
 「10数万人」「20万人以上」「中国側は30万人、という見解」――。一方に「1〜2万人」や「4万人」といった学説がある中で、各社の記述は数字の大きな犠牲者数に偏っていた。
 「例年、検定意見が付くとわかりながら、大きな犠牲者数のみを書いてくる発行社がある。ゲーム感覚なのか」と文科省。とても教科書作りの場にふさわしい姿勢とは言えない。
 「従軍慰安婦」をめぐる記述は6社が取り上げたが、検定意見は一つも付かなかった。昨年までは、日本軍が慰安婦を強制連行した、といった記述に「誤解を招く」などの意見が付いていた。
 発行社側が意見の趣旨を理解したことの表れなのかどうか、注視したい。
 一方で、最近の慰安婦問題をめぐる国内外の論争が、今後の検定に微妙な影響を及ぼすことを懸念する声がある。
 政治や外交などに翻弄(ほんろう)されることなく、客観的で公正な記述の教科書を、学校現場に届けたいものだ。
(2007年3月31日1時48分 読売新聞)

 んー、「集団自決」の記述に対してあれこれ言われた数は「5社7点」とどこも報道しているんですが、「南京事件」に関しては何社何点なのかちゃんとした情報が流れてこない印象。
 毎日新聞も、社説では言及がありました。
教科書検定 沖縄戦悲劇の本質を見誤るな

 文部科学省教科書検定・高校日本史で、沖縄戦の記述に相次いで検定意見が付き、表現が修正された。戦いのさなかに各地で起きた住民の集団自決について、日本軍によって強制されたり、追い込まれたりしたとするのを「軍の強制は明らかとはいえない」という理由で改めさせたのだ。
 元軍人の裁判や強制に否定的な出版物などがきっかけになったというが、これについての文科省の見解の転換は初めてとみられ、波紋は大きい。
 まず気になるのは、「強制」についての考え方だ。
 個々の惨劇に系統だった「命令」のような記録は残らない。しかし、軍から食糧を奪われ、避難壕(ごう)からも追い出された住民たちは「鉄の暴風」といわれた砲爆撃の野にさまよい、そうした人々が集団自決にも追い込まれた。
 1945年春、硫黄島陥落の後始まった沖縄戦で、日本軍守備隊は基本的に持久戦法を採用し、「敵を引きつけ、本土進攻を遅らせる」時間稼ぎに努めた。
 例えば、沖縄本島の主な激戦地は南部で、当初、一般住民は九州本土や本島北部に疎開させる計画もあったが十分に進まず、ついに日本国内で初めて住民を無制限に巻き込んだ地上戦を3カ月にわたって展開することになった。
 守備隊の作戦の最大の目的は「本土決戦準備」の時間を少しでも長くすることであり、「住民保護」の態勢や発想は薄い。要とした首里戦線が持ちこたえられず、軍がここを放棄して本島南端に向かって退却を始めたころから、住民の犠牲者は急増した。
 また将兵はもとより、住民たちも「投降」は考えることも許されなかった。日本中がそう教育され、刷り込まれていた時代である。軍は雪崩を打つように南へ敗走し、最終段階では軍属の人々も放置して崩壊した。
 こうした流れや無責任な全体状況は、死を選ぶしかないほど人々の心身を追い込んだとみることもでき、「強制は明らかでない」と言い切れるものだろうか。
 また沖縄戦は、ここから歴史、社会、地理、文化などさまざまな学習テーマを見いだすことができる。次世代が学び継いでいくべき内容は尽きない。だが総じて教科書では切り詰めた書き方になる。学習指導要領に沿って編集される検定教科書はどうしても「項目にできるだけ漏れのない」均等割り的な記述になりやすい。
 いっそのこと、高校では検定を廃止し、教材を学校・教師・生徒に任せることを検討してみてはどうだろうか。例えば、沖縄戦を一つの核にして、学習テーマを総合的に広げていくという長期授業の試みがあってもいい。
 昨秋明らかになった大量履修不足問題は、大学入試に関係なければ歴史学習に関心や意欲がわかないという高校生が少なくないことを示した。指導要領にも問題がある。新しい大学入試のあり方とともに、検定というタガを外した高校の教科学習を本腰を入れて考える時にきているのではないか。
毎日新聞 2007年3月31日 0時05分

 ということで、前後しますが調べてみたら毎日新聞の記事が見つかったので追記に加えておきます。
教科書検定:沖縄での集団自決、「日本軍の強制」修正毎日新聞

教科書検定:沖縄での集団自決、「日本軍の強制」修正−教育:MSN毎日インタラクティブ

 文部科学省は30日、06年度の教科書検定結果を公表した。対象は主として高校2年生以上が来春から使用する教科書で、日本史に記載された太平洋戦争末期の沖縄での集団自決について、従来認めていた「日本軍の強制」とする記述に初めて検定意見を付け、教科書会社は強制性に関する記述を修正した。文科省は「最近の学説などの状況から、日本軍の命令が明らかとは言い切れない」と説明している。
 集団自決は、教科書8冊に記載され、7冊に検定意見が付された。いずれも「日本軍の強制」を趣旨とする部分について、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」と検定意見が付いた。
 例えば、清水書院日本史Bでは、地上戦となった沖縄戦を「非戦闘員の犠牲者も多かった。なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた」と説明。検定意見後に「非戦闘員の犠牲者も多かった。なかには集団自決に追い込まれた人々もいた」と修正し、検定に合格した。
 新たな検定意見を付したことについて、文科省は、集団自決を命令したとされる元日本軍少佐が裁判で命令を否定する証言をしていることなどを指摘した上で、「最近の学説には命令を否定する記述もある。片方の通説だけではバランスが取れない」と説明した。
 従軍慰安婦問題については、世界史と日本史の教科書11冊に計21カ所の記載があったが、「前回(02年度)と大きな変更点がなく、特に誤解される記述がない」として検定意見は付されなかった。
 また、学習指導要領の範囲を超える「発展的な学習内容」は数学、理科、芸術の3教科に記載され、02年度の前回比で161件増の366件になった。全ページに占める割合は3.0%で、前回1.7%から1.3ポイント増加した。検定申請は、普通教科が7教科207点、専門教科が4教科17点の計11教科224点で、生物2の2点以外すべてが合格。不合格を除く普通教科の検定意見数は前回よりも1645件少ない5372件だった。【高山純二】
毎日新聞 2007年3月30日 19時49分

 
 これは以下の日記に続きます。
愛・蔵太の少し調べて書く日記 - 教科書検定での「集団自決」に関するマスコミ報道のまとめ・2
「集団自決」は日本軍の「関与」があったという感じで落ちつきそうな予感