ビジネスの達人は漫画プロデューサーの夢を見るか

 漫画の制作現場に、編集者(会社内プロデューサー?)・漫画家以外の、漫画プロデューサーを立てるシステムがあってもいいんじゃないか、というか、もう「編集者」のプロデュース能力に限界を感じて、ハリウッド的にやってみるのはどうか、という案をどこかで見たんですが*1ぼくはその案には反対です
 だいたい、ハリウッドの大作ムービーで、結果として、という以前に、企画として面白いと思えたものなんてほぼ皆無じゃないですか*2。要するに、フリーのプロデューサーは、会社子飼いの編集者よりも冒険(リスク取り)しないだろう、というのは、「一度失敗したら次はない」という立場を考えると十分あるわけで、今の漫画業界で求められている重要な底辺仕事、つまり新しい才能をどこまで育てられるか、については、とんと疑問なのですね。
 ある程度成功した漫画家のマネジメント業務ならまぁ、わからなくはないんですが、一人の作家・漫画家を育てる、という裏には、何十人もの育てられなかった作家・漫画家(企画としては面白かったけれど、商売としては成功しなかった企画)があるので、これが会社によって支えられている人間の場合は、少しぐらいの失敗は、せいぜい社内で次の企画が通りにくくなる、というだけのリスクしかない、故に冒険の自由度が高い、というメリットがあるでしょう(もっとも、大成功しても給料がべらぼうによくなるわけではない。せいぜい社内で次の企画が通りやすくなるだけだと思う)。
 増刊に読みきり1本載せる程度のリスク&リターンを経て、何百万部の雑誌の新連載・巻頭カラーをスタートさせるリスク&リターンが得られる、という現在のシステムの、システムそのものはなんら問題がないわけです。
 要するに、漫画って映画と比べるにはあまりにもその基礎部分はちっちゃな商売なんですよ。コミックス100万部売れたって売り上げは4〜5億円ですよ! インディーズ映画のヒット作興行収入と同じぐらい。1巻あたり10万部ぐらい売れてるコミックスなら、それなりに漫画にくわしい人なら知っている。まぁ1千万部とか1億部とか、ハリウッド大作映画と同じぐらい、もしくはそれをしのぐヒット作品もあるんで、ちょっと誤解しやすいところはありますが。
 漫画の製作費も、基本的にペンと紙さえあれば(今だとPCで描いている人もいるのかな。その場合はPCとタブレットといくつかのソフトさえあれば)できる商売なので、TVアニメ1本1千万円だとすると、漫画の場合は1話分描くのに、その10分の1、場合によっては100分の1でもできないことはない
 これから漫画はどうなっていくのか、について考えなければいけないことは2つでしょうか。それは「どうやったら面白い漫画を世に出すことができるか」、もう一つは「商売としての漫画というメディアで、食える人間を増やすことができるのか(少なくとも、減らさないことはできるのか)」。
 面白い漫画を拾うシステムは、「読者アンケート」というものがあり、それが正常に機能していれば十分有効なはずなんですが、ぼく自身の感じとしては、前にも言ったことかもしれませんが、漫画家も読者も、「閉じた世界でしか勝負していない」感があるのですね。これはまぁ、音楽や一部の非ハリウッド映画にも感じることなので、今の世の中の娯楽の一般的傾向なのかもしれません。残念なことではありますが。

*1:ちょっと曖昧な言い方をしておきます。

*2:私感。