アホでマヌケな朝鮮旅行記に関する有名なコピペ(イザベラ・バードの朝鮮紀行について)

 以下のところから。
・イザベラ・バードの朝鮮紀行を韓国が改竄か? 〜情報を求めています〜|アジアの真実

はじめまして。

外国に住んでいる日本人主婦です。
実は去年、英国人作家イザベラ・バード朝鮮紀行(Korea and Her Neighbors)の英語版を取り寄せようとPCで調べていたら英国の出版社の物と韓国内で出版された種類のものがある事に気がつきました。

英国の出版社の原版は下記のHPにある内容だと思いますが。。
http://3.csx.jp/peachy/data/korea/korea2.html   (韓国は何故反日か?)より


内容が全く正反対の韓国版では当時のソウルは清潔で人々はとても快適かつ豊かに暮らしているとイザベラバードは書いています。
韓国版は1997年に韓国延世(ヨンセイ)大学から出版されたものです。
http://www.seoulselection.com/shopping_book_view.html?pid=50

イザベラ・バード朝鮮紀行(Korea and Her Neighbors)のエセコピーがNYタイムズから出ています。
(実本とは全く異なり、100年前のソウルは近代化されていて東洋一きれいな都市と書かれていますが、
おそらく先導者はNYタイムズのオオニシノリミツあたりではないでしょうか)
The Streets of Seoul.; From "Korea and Her Neighbors," by Mrs. Bishop.

http://query.nytimes.com/mem/archive-free/pdf?_r=2&res=9C02E0DF1139E433A25750C0A9629C94699ED7CF&oref=slogin&oref=slogin

あと参考まで、外国でこの本をPCでサーチすると偽物版しか出てきません。本の紹介、あらすじの中で日本軍が韓国を支配中に建物をどんどん壊していったなどと書かれています。原本の英国の出版社に知らせれば虚偽本出版社は訴えられるのではないでしょうか?
http://www.google.co.nz/search?hl=en&q=Korea+and+Her+Neighbors&btnG=Search&meta=

 これは今月はじめに読者の方から頂いたメールの全文です。下記参考文献でも挙げているイザベラ・バードの朝鮮紀行「英国婦人の見た李朝末期」 という本について、韓国の出版社が出したものは内容に悪質な改竄が見られるという驚くべき指摘です。
 ご存知の方も多いと思いますが、イザベラ・バードは19世紀の女性旅行家で、日本を含め、朝鮮などアジア地域を旅行し、その紀行文を出版しています。日本を紹介した「日本奥地紀行」 では、当時の日本を
「私はそれから奥地や蝦夷を1200マイルに渡って旅をしたが、まったく安全でしかも心配もなかった。世界中で日本ほど婦人が危険にも無作法な目にもあわず、まったく安全に旅行できる国はないと信じている」

と紹介していることでも有名です

その彼女が、4度も訪れた李氏朝鮮末期の姿を紹介した「朝鮮紀行」で、当時の朝鮮の様子はこう記されていました。(韓国はなぜ反日かより引用)

イザベラ・バードが見たソウル
 
「都会であり首都であるにしては、そのお粗末さはじつに形容しがたい。 礼節上二階建ての家は建てられず、したがって推定25万人の住民は主に迷路のような道の「地べた」で暮らしている。路地の多くは荷物を積んだ牛同士が擦れ違えず、荷牛と人間ならかろうじて擦れ違える程度の幅しかない。おまけに、その幅は家々から出た糞、尿の 汚物を受ける穴か溝で狭められている。酷い悪臭のするその穴や溝の横に好んで集まるのが、土ぼこりにまみれた半裸の子供たちと疥癬もちでかすみ目の大きな犬で、犬は汚物の中で転げまわったり、日向でまばたきしている。
 ソウルの景色のひとつは小川というか下水というか水路である。蓋のない広い水路を黒くよどんだ水がかつては砂利だった川床に堆積した排泄物や塵の間を悪臭を漂わせながらゆっくりと流れていく。水ならぬ混合物を手桶にくんだり、小川ならぬ水たまりで洗濯している女達の姿。 Seoulには芸術品がまったくなく、公園もなければ見るべき催し物も劇場もない。他の都会ならある魅力がSeoulにはことごとく欠けている。古い都ではあるものの、旧跡も図書館も文献もなく、宗教にはおよそ無関心だったため寺院もない。結果として清国や日本のどんなみすぼらしい町にでもある堂々とした宗教建築物の与える迫力がここにはない。」

 ところが、現在世界で発売されている英語版のイザベラ・バード朝鮮紀行(Korea and Her Neighbors)は、イギリスの出版社が出したものと韓国の出版社が出したものと二種類あり、韓国版の方のでは、上記のような事実はすべて隠蔽され、それどころか、100年前のソウルは近代化されていて東洋一きれいな都市と書かれており、さらに本の紹介欄では、そんなきれいな都市を日本がどんどん破壊されていったと書かれているとのことです。
 これは事実だとすればとんでもないことです。欧米の著名な旅行家の名前と著書を利用し、その内容を好きなように改竄して、自国の歴史を捏造し、同時に日本を貶めるプロパガンダに利用する。しかもそれを自国で自己満足用に販売するだけではなく、世界で同じ書籍名。著者名で販売する。これは世界的に許される行為ではありません。
 ここからはお願いなのですが、これは読者からのメールを頂いたものをそのまま掲載しておりますが、この事実についてはまだ十分な検証ができていません。当の韓国捏造版を入手できていないこと、またネットの情報を辿るにしても、全て英語ページのため、私一人では限界があります。
 もしこれについての情報をお持ちの方や、英語力が堪能で、英語ページの調査ができる方、もしくは海外在住で情報が得やすい方などいらっしゃいましたら情報をお寄せいただきたいと思います。
 もしこれが事実とはっきりすれば、韓国の救い難く、また許し難い捏造体質が白日の下に晒されることでしょう。
 なお、NAVERの掲示板 で全く同じテーマですでに議論が始まっているようですので紹介しておきます(メールを下さった方が複数の場所に連絡をされているのではと思います。)。

 なお、「NAVER掲示板」で一番役に立ちそうなテキストはこれでした。
延世大学出版の『朝鮮紀行』について (画像は省略しています)

 さて、一昨日だったか、ある文がEnjoykoreaに貼られました。内容はどこかからのCopy&Peastで、韓国の延世大学から出版されたイザベラ・バードの『朝鮮紀行(Korea and Her Neighbour)』 が原本と全く違う、という主張のものでした。
 出所はわかりませんが、拡散元はどうもhttp://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=119209&log=20080802クライン孝子の日記)と思われます。詳細はリンク先を読んでいただくとして、要約すると
1・韓国延世大学から出版 された『朝鮮紀行』には、「当時のソウルは清潔で人々は とても快適かつ豊かに暮らしている」と(実際と)正反対の内容が書かれている。
2・NYタイムズからも、(内容が本物と違う)エセ(偽物の)コピーが出ている。
http://query.nytimes.com/mem/archive-free/pdf?_r=2&res=9C02E0DF1139E433A25750C0A9629C94699ED7CF&oref=slogin&oref=slogin
という主張です。検索してみると結構あちこちにコピーされているようでしたし、人から頼まれた事も有りちょっと調べてきました。
 
1.韓国延世大学から出版 された『朝鮮紀行』には、「当時のソウルは清潔で人々は とても快適かつ豊かに暮らしている」と(実際と)正反対の内容が書かれている。
 
まず、1.の 韓国延世大学出版版についてです。
 
KOREA and Her Neighbours
Isabella Bird Bishop
 
YONSEI UNIVERSITY PRESS
1970年初版、1997年第4版発行
ISBN:89-7141-199-6
15000won
 
 リンク先が http://www.seoulselection.com/shopping_book_view.html?pid=50 なので、これで間違いないと思われます。初版は1970年、ハードカバーで出版され、1997年のものは第4版であり、ペーパーバッグに変更されています。内容は初版、4版も見た限り大きな変更はありませんでした。
 まず、 延世大学出版からの本の内容が、提示された個人のサイトと乖離しているか、なのですが、Chaptor.2の該当部分は以下になります。

「都会であり首都であるにしては、そのお粗末さはじつに形容しがたい。礼節上二階建ての家は建てられず、したがって推定25万人の住民は主に  迷路のような道の「地べた」で暮らしている。
 路地の多くは荷物を積んだ牛同士が擦れ違えず、荷牛と人間ならかろうじて  擦れ違える程度の幅しかない。おまけに、その幅は家々から出た糞、尿の  汚物を受ける穴か溝で狭められている。酷い悪臭のするその穴や溝の横に  好んで集まるのが、土ぼこりにまみれた半裸の子供たちと疥癬もちで  かすみ目の大きな犬で、犬は汚物の中で転げまわったり、日向でまばたき  している。

ソウルの景色のひとつは小川というか下水というか水路である。蓋のない  広い水路を黒くよどんだ水がかつては砂利だった川床に堆積した排泄物や  塵の間を悪臭を漂わせながらゆっくりと流れていく。水ならぬ混合物を  手桶にくんだり、小川ならぬ水たまりで洗濯している女達の姿。(注:何故か文の途中で途切れて訳されている)

 つまり、対象の個人のサイトと比較しても改竄されてもおらずそのまま掲載されており、内容も昨日調べたGanesha Publishing版と一致します。

『Collected travel writings of Isabella Bird. Vol.9』(Ganesha Publishing 1997年) pp.36 および pp.42

 Seoulには芸術品がまったくなく〜、の該当部分もChaptor.4に記載されているばかりか、逆に個人のサイト引用文の方が原文にあるコドゥンや孔子廟などの例外がある旨をカットする、別の場所にある文を連続して書く、など不正確な引用をしています。引用文も対象の個人のサイトでは『朝鮮紀行―英国婦人の見た李朝末期』、つまり講談社学術文庫版とされていますが、表記が全く違い、講談社版からの引用ではありません。
以上の様に、問題があるのはむしろ出された個人サイトの方で、 韓国延世大学出版版に問題は見当たりません。

◆    ◆    ◆

2.NYタイムズからも、(内容が本物と違う)エセ(偽物の)コピーが出ている。
 次に、2のNYTimes版が「エセコピー」とする件ですが、こちらは昨日もちょっと書きましたが原文にて確認できます(時制や誤字などの若干の違いを除く)。画像はGanesha Publishing版を提示しますが、延世大学出版の物でも、他に国会図書館にあった別の版でも違いは有りません。Chap.36の「SEOUL IN 1897」、つまり初訪ではなく、1897年に訪れた際の、以前との変り様に驚いている文なのですね。

NYTimes版 Ganesha Publishing版

 そもそもこの文、1.で問題にされた記述と不整合をおこさないんです。NYTの記事では、「which were breeding grounds of cholera.」、つまり元々コレラの温床となっていた不潔な路地があった訳ですし、末尾の方の「now on its way to being the cleanest city the Far East.」も元は「Seoul,from having been the foulest」であった訳ですから、その後綺麗になっても意味が不整合になりません。なのに、なぜか時系列も文脈も無視し、「途上」であることも抜いて、「東洋一きれいな都市」と言ってるんですね。
NYTのリンク先の文についても原文に一致し、問題は見当たりません。

◆    ◆    ◆

 結局、この主張は根も葉もないデマでしかありません。延世大学版およびNYT記事に関して言えば、内容に問題は認められません。
 コピーされた文章自体を見ても「延世大学版を読んでも買ってもおらず、引用すらしていないのに内容がおかしいと言う」、「引用してある文の文脈すら把握せず、偽としている」、などと信じるべき点が全く無いにも拘らず、何故か拡散されてしまったようです。(もちろん、疑念は出されていたかもしれませんが)
 では最後に「絵とかが差し替えられているのでは?」という疑念にもお答えしておきます。というか、こちらの方が根本論なのですが。まずは次の画像を御覧ください。

A series of Reprints of Western Books on Korea

鋭い方は延世大学出版の版の表紙で気がついたかもしれません。これ、実は米国版の「リプリント版」なんです。延世大学出版の版のTae Sun Park氏の序文から引用します。

The original of Bishop's Korea and Her Neighbours was first printed in New York in 1898, and it was soon reprinted in two volumes. The single volume edition has been chosen by Yonsei Univercity in this program of reprints becouse of its bibliographical significance.

 1898年にアメリカで出版されたものの、まんま原本のリプリントなんです。え?「それでも元と同じかどうか改竄されていたらわからないのでは。」ですって?実は元の本も国会図書館に所蔵されていて確認済です。F. H. Revell company が1898年に出版の『Korea and her neighbors; a narrative of travel, with an account of the recent vicissitudes and present position of the country, by Isabella Bird Bishop ... With a preface by Sir Walter C. Hillier With illustrations from photographs by the author. 』がそれ(請求記号 129-138 )。古い本故、即日複写が出来ませんでしたが、禁閲覧ではないので国会図書館で閲覧できます。イラストから写真から、ページ構成からindexから末尾の当時の広告まで、そのまんま一緒。

広告まで一緒。

 延世大学出版の版には、オリジナルのタイトルページが省略されているため絶対とは言い切れませんが、同じ版からのものであるのは確実で、当然イラストも写真も同じものが使われています。つまり延世大学出版が改竄されたとすれば、1898年にすでに改竄されていた訳ですね。
 折角リプリントしたのに改竄と言われては、延世大学出版も浮かばれないでしょう。



 ちょっとでも疑っちゃった人は、こっそりと胸に手をあて、延世大学出版の方に向かって頭を下げて、3秒ほど反省してください。コピペをしちゃった人は…、まぁ、ご随意に。

yonaki@お遊び中

 要するに、
1・「イザベラ・バードが見たソウル」はひどい都市だった。
2・ただ、その元テキストを「韓国は何故反日か?」のサイト制作者は「不正確な引用」をしている。(『朝鮮紀行―英国婦人の見た李朝末期 』(講談社学術文庫)からの引用ではない)
3・NYタイムズの記事は、記事的には誠実。韓国の出版物も、出版物的に誠実
4・クライン孝子の日記は電波愛好者には向いている日記
 ということらしいです。今回は元テキストに全然当たっていないので、あとで訂正するかも。
 あと、Amazonの紹介テキストも載せておきます。。
  (韓国は何故反日か?)
mazon.com: Korea and Her Neighbors (Kegan Paul Travellers Series): Isabella Bird: Books

Editorial Reviews
Product Description
 
Isabella Bird's account of her journeys in Korea in 1898 represents one of the very rare accounts of that country in the latter part of the nineteenth century. At that time Korea was virtually a forbidden land and had only been open to foreigners for about ten years. It was and had been under Chinese influence for centuries. The trip was very difficult but so fascinating that, true to character, Isabella adored it. She undertook many arduous jouneys by land and river, observed the breathtakingly beautiful countryside, visited the Buddhist monasteries and had many audiences with the Korean king and his soon to be assassinated queen. While Isabella was on her journey the Japanese invaded Korea and she had to leave hastily, ending up in China, penniless.

 ということで、暇を見つけたら「Korea and Her Neighbors」の原本か、講談社学術文庫版の翻訳でも読んでみることにします。