『江戸文学問わず語り』『明治の女子留学生―最初に海を渡った五人の少女』『明治の快男児トルコへ跳ぶ―山田寅次郎伝』

本日の読みたい本・おすすめ版(2009年1月あたり)。

★『江戸文学問わず語り』(円地文子/講談社/1,400円)【→amazon
父方の祖母が生きた江戸の末期。文学・演劇・音曲等々…。幼い頃から様々な話をとりとめなく聞いて育った著者の心に染込んだ鮮烈な感覚は、滝沢馬琴河竹黙阿弥上田秋成近松門左衛門等を語るその語り口に彷彿とする。殊に秋成の“夢幻と現"の間を描写する文体への言及は、円地文学の根源に呼応。祖母から聞き覚えた沢山の話を鏤め、愛情込めて綴る絶品の江戸文学案内書。
明治の女子留学生―最初に海を渡った五人の少女 (平凡社新書)

明治の女子留学生―最初に海を渡った五人の少女 (平凡社新書)

★『明治の女子留学生―最初に海を渡った五人の少女』(寺沢龍/平凡社/800円)【→amazon
明治四年、日本最初の女子留学生として渡米した五人の少女たちがいた。六歳の津田梅子をはじめ、山川捨松、永井繁子らが体験した十年余のアメリカ生活とはどのようなものだったのか。そして日本語も忘れて帰国した後、近代化の荒波の中で、彼女たちはどう生き抜いたのか。初の帰国子女としての波瀾万丈の生涯と、女性として果たした偉業を明らかにする。(内容)アメリカの熱狂的な歓迎;異国の生活をはじめた五人の少女;異国に娘を留学させた親たち;五人の別離とアメリカでの新しい生活;女子留学生派遣後の日本の家族;帰国女子留学生の困惑と苦悩;捨松の結婚と梅子の孤愁;鹿鳴館に集う女性たち;自己の信念と孤高に生きる津田梅子;わが道を歩む女子留学生たち;津田梅子の夢を実現した私塾の創立;帰国三十年後の日々の移ろい
明治の快男児トルコへ跳ぶ―山田寅次郎伝

明治の快男児トルコへ跳ぶ―山田寅次郎伝

★『明治の快男児トルコへ跳ぶ―山田寅次郎伝』(山田邦紀;坂本俊夫/現代書館/1,800円)【→amazon
日本・トルコの架け橋となった国際ボランティアの先駆者・寅次郎。日本人の「義」を通し、多くの文人墨客と交流。出版・製紙・茶道家元などでも活躍した、明治マルチ人間の生涯。

読みたい本・次点。
『日本は原子爆弾をつくれるのか』(山田克哉/PHP研究所/740円)
  日本は世界的にも高度な原子力技術をもっている。また、全国各地の原子力発電所から得られたプルトニウムは、長崎型原爆の5000発分にもなるという。ならば日本はいますぐ原爆をつくれそうに思えるが…。本書は、いま核兵器を開発するためには、どのような技術が要求されるのかを、できるだけ平易に説明するとともに、日本が原爆製造を外国の技術援助なしに一からはじめて、どれぐらいの時間がかかるのかを見通す。日本の原爆開発史、驚異的なマンハッタン計画についても論及した核の入門書。
『ブルーノート100名盤』(ブルーノートクラブ編/平凡社/760円)
  世界“最強・最長"のジャズ・レーベル「ブルーノート」は、二〇〇九年一月に創立七〇周年を迎える。それを記念して、「私のベスト3」アンケートを行い、ロン・カーターウィントン・マルサリス、ルディ・ヴァン・ゲルダー、安西水丸国府弘子寺島靖国平野啓一郎ら二八一人が参加。国際的な大アンケートによる100名盤を紹介し、100人のコメントを収録した永久保存版。
『昭和史を動かしたアメリカ情報機関』(有馬哲夫/平凡社/760円)
  アメリカ情報機関は昭和史の裏側でどう動いたか―。暗号解読をめぐる日米開戦の謎、知日派グルーの天皇制存置工作、スイスを舞台にした日米双方の終戦工作、日本をポツダム宣言受諾に導いた心理戦など、昭和史の重要局面を「情報」の側面から読み解く。アメリカ公文書館から発掘された新資料を交え、昭和史の知られざる一面に光をあてた意欲作。
『雪崩のはなし』(新潟雪崩研究会監修/(新潟)新潟日報事業社/1,400円)
  雪は豊かさ、楽しさ、美しさだけでなく厳しさももたらす。その厳しさの象徴でもありテレビの気象情報で12月から5月にかけて語られない日がない「雪崩」を分かりやすく若い世代へ向けてまとめたメッセージ。
『近代画説〈17〉特集 近代の挿絵・漫画』(明治美術学会編/明治美術学会;(松戸)三好企画〔発売〕/3,000円)
  巻頭エッセイ 研究対象としての作品と人間―その質、量、そして全体像;特集 近代の挿絵・漫画(論文審査会・査読結果報告;『萬朝報』の「端書ポンチ」―一九〇七年から一九一六年までの主題の傾向と常連投稿者;大野雲外の画業―人類学教室での活動と『模様集』;藤田嗣治の漫画―一九三八年の『バクショー』と『親隣画集』をめぐって);東城鉦太郎―日露戦争の画家;史料紹介(大村西崖の渡欧日記;大村西崖欧米歴遊日記);研究発表(要約)
『アメリカところどころ』(梅溪昇/青史出版/3,000円)
  近代史研究者である著者が、海外渡航が自由でなかった昭和37〜38年に、アメリカに研究留学した際の見聞と、留学中の日記を紹介する。史学史上、貴重な資料。
『神戸の市電と街並み』(神戸鉄道大好き会編著;神戸市交通局・神戸市広報課協力/(大阪)トンボ出版/1,500円)
  東端の石屋川から西端の須磨にいたる各停留所付近の街並みの写真を網羅。神戸市電の車両について詳細に解説した。路面電車の在りし日の神戸を、そして市民と路面電車のふれあいを知ることができる。
『鉄道遺産を歩く―岡山の国有鉄道』(小西伸彦/(岡山)吉備人出版/2,000円)
  子どもの頃から鉄道好きという著者が、県内の国有鉄道全線を、くまなく歩いて記録。駅舎、線路、トンネル、鉄橋…レールに連なるさまざまなドラマが走り出す。オールカラー、詳細地図付き。
『実朝―その無意識の敗北』(中村明/近代文芸社/2,000円)
  源実朝ハイデッガー疎外論的展開。
『エリアーデ 自身を語る 迷宮の試煉』(エリアーデ,ミルチャ+ロケ,クロード=アンリ/作品社/2,800円)
  20世紀の宗教学と文学において偉大な足跡を残した稀代の碩学ミルチャ・エリアーデ。みずからの精神的遍歴を赤裸に語った名著、待望の翻訳なる。
『ガンダムの常識―一年戦争モビルスーツ大全』(オフィスJ.B編/双葉社/476円)
  一年戦争に登場するモビルスーツモビルアーマー135体を収録。
『ヘルダーリン研究―文献学的認識についての論考を付す』(ソンディ,ペーター/法政大学出版局/2,800円)
  序論で方法論を述べたのち、第一部ではヘルダーリン後期讃歌の誕生を告げる作品と頂点をなす作品を分析。第二部では詩論をめぐる研究史批判と詩学構想の解明を展開する。
『世界中で愛され続けるゾウのジャンボ物語』(チェンバーズ,ポール/柊風舎/2,200円)
  ダンボの母親のモデルで、「ジャンボ機」の語源にもなったゾウの波乱に満ちた生涯―目の前で母親を殺されたやせっぽっちの孤独な子ゾウが、後世に名を残す国際的スターに!19世紀のヴィクトリア朝を舞台に、世界一大きなアフリカゾウと彼を取り巻く人々の知られざるエピソードを描いた、初めての物語。
『信頼される建築家像』(馬場璋造/(松戸)王国社/1,900円)
  建築家であれば設計した建築が問われる。建築そのものが信頼に値するものでなければ、意味がない。そのためには才能を磨き、周囲との関係をつくり上げる不断の努力が必要である。いまこそ建築家に期待する。
『奇妙な国字』(西井辰夫/幻冬舎ルネッサンス/1,400円)
  国字の中の変わりもの、「火燵」の「燵」と「纐纈」の「纐」の謎に迫る。音読みの、特殊な用途しかない国字がなぜできたのかが明らかに。
『崩御と即位―宮中で何が起こっていたのか』(保阪正康/新潮社/1,800円)
  父帝・孝明天皇の不可思議な夭折により、十四歳の幼さで皇位を継承した明治天皇。偉大な父の幻影に翻弄され、脳病に倒れた大正天皇。その不在を埋めた昭和天皇は、戦渦の中で大元帥として生きた。そして今上天皇は…。明治から平成までの代替わりの「その瞬間」をつぶさに検証、政治家や宮内官僚たちの思惑に巻き込まれながらも、近現代天皇制が確立していく五代の家族史を描く。
『拳の真相―わが父と11人のチャンピオンたち』(金平桂一郎/双葉社/1,400円)
  日本ボクシングの歴史と真相が、ここにある。協栄ボクシングジム創立50周年記念。海老原、具志堅、渡嘉敷、鬼塚、亀田など11人もの王者を輩出した名門ボクシングジムの会長が初めて語った、あの王者たちの「実像」と、あの事件の「真相」。そして父・正紀氏の「伝説」。
『ピンク・フロイドの神秘』(ブレイク,マーク/ブルース・インターアクションズ/2,500円)
  英国が誇るプログレッシヴ・ロック・バンド、ピンク・フロイドの歴史。『狂気』での大ブレイク後から、『炎』、『アニマルズ』、メンバー同士の間にはだかる『壁』、ロジャー・ウォーターズの脱退、そして2005年の再結成まで…あらゆる事柄を、メンバー自身や友人、知人、関係者ら、数多くの証言によって年代順に詳細に追ったドキュメンタリー本の決定版、ここに登場。
『ピンク・フロイドの狂気』(ブレイク,マーク/ブルース・インターアクションズ/2,500円)
  英国が誇るプログレッシヴ・ロック・バンド、ピンク・フロイドの歴史。メンバーの生い立ちから、バンドの結成、UFOクラブでのパフォーマンス、シドの脱退、各アルバムの制作、そして『狂気』での大ブレイクまで…あらゆる事柄を、メンバー自身や友人、知人、関係者ら、数多くの証言によって年代順に詳細に追ったドキュメンタリー本の決定版、ここに登場。
『ミニコミマニア』(春日出版編集部編/春日出版/1,100円)
  世の中にあふれるミニコミの中から、特に特徴のあるもの、異彩を放っているもの、是非読んでもらいたいとおすすめしたいもの53誌をピックアップ。
『ユーラシア農耕史〈1〉モンスーン農耕圏の人びとと植物』(佐藤洋一郎監修;鞍田崇編/(京都)臨川書店/2,800円)
  ユーラシア農耕1万年の歴史において、イネという植物はどのように変遷してきたのか。稲作文化・稲作社会が成立するに至るまでイネと人間はどのように歩んできたのか。そして、未来の稲作はどこへ向かうべきなのか。考古学・植物遺伝学・農学・民族学など諸研究分野の第一人者が一堂に集い、ユーラシアの農耕・人びと・環境のこれまでとこれからについて解き明かす。
『「歴史」を創った秋田藩―モノガタリが生まれるメカニズム』(志立正知/笠間書院/2,400円)
  日本各地で時代を超え、繰り返し行われてきた営み、「歴史」の創造…。本書は秋田を例にとりその秘密を探る。提示されるのは新たな「日本」像の探し方である。モノガタリはいかに生み出され、「伝承」を通して「歴史」へと機能するのか。歴史学と国文学という対立構造をこえ解き明かす。