『〈傷つきやすい子ども〉という神話−トラウマを超えて−』ほか

今日の読みたい本・おすすめ版。
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〈傷つきやすい子ども〉という神話―トラウマを超えて (岩波現代文庫―社会)

〈傷つきやすい子ども〉という神話―トラウマを超えて (岩波現代文庫―社会)

★『〈傷つきやすい子ども〉という神話−トラウマを超えて−』(ウルズラ・ヌーバー/岩波書店/1050円)【→amazon
トラウマ(精神的な外傷)はどれだけ人の人生を規定するのだろうか。子ども時代に受けた傷がその後の生き方を左右するとするフロイト的な考え方の誤謬を指摘し、逆に人がいかに豊かな可能性を持つかを明らかにする。
 ★『現代ヨーロッパの精神』(加藤周一/岩波書店/1071円)【→amazon
サルトル、ベン、フォースタ、バルト、ヴェーユら六人の思想家・作家を取り上げ、彼らが戦中・戦後のヨーロッパ社会が突きつけた思想的課題といかに切り結んできたかを論ずる。戦後のヨーロッパ思想は何を提起したか。フランスでの留学生活を経て、半世紀以上前に刊行され、戦後日本のヨーロッパ思想研究を先導してきた名著。
 
知性誕生―石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源

知性誕生―石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源

★『知性誕生−石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源−』(ジョン・ダンカン/早川書房/2310円)【→amazon
創造物を生み出し、地球上に君臨する人類。そのパワーの源である「知的能力=知性」はどのように機能しているのか?ケンブリッジ大学の著名な脳科学者が、実験心理学脳科学人工知能開発など、先端諸学の成果を駆使して、この科学上最大の謎に挑む。徹底した知能検査から明かされる「できる人/できない人」の差がつく理由、極限状態における心理実験が見せるショッキングな結末、ブレア元首相とナチス幹部に共通する「心的バイアス」の危険性など、洞察に富む多くの事例と実験をもとに、「知性」の精妙なメカニズムとその限界を解き明かすブリリアントな書。
 
ニーチェ以後――思想史の呪縛を越えて

ニーチェ以後――思想史の呪縛を越えて

★『ニーチェ以後−思想史の呪縛を越えて−』(三島憲一/岩波書店/2625円)【→amazon
現代の知の閉塞を突破するために、〈思想としての近代〉を編み上げている認識の糸を再び解きほぐす。理性と非理性、普遍主義と個別主義、オクシデントとオリエント。これらの二項図式に囚われることで、我々は何を見失ってきたのか。ニーチェからベンヤミンヘ、思想をその同時代へと連れ戻し、ラディカルな批判的思考の再生を企てる。
 
光の領国 和辻哲郎 (岩波現代文庫)

光の領国 和辻哲郎 (岩波現代文庫)

★『光の領国和辻哲郎』(苅部直/岩波書店/1365円)【→amazon
和辻哲郎(1889-1960)は明治以後の日本において最も包括的な哲学体系を築きあげた。そのテクストを日本政治思想史研究者が同時代の言説状況の文脈のなかで丁寧に読みなおし、〈人間と政治〉の問題を和辻がどのように考えてきたかを、その矛盾や欠落もふくめて検証する。付録として全集未収録の和辻の論考を併載。