あまりにひどい「バンダジェフスキー博士論文の内容要約」テキスト(1)

 見出しは演出です。
 今のところ、「バンダジェフスキー」で検索すると、このサイトが上位に来るわけですが、
元ゴメリ医大学長、バンダジェフスキー博士による内部被ばくの研究結果 ぜひご一読下さい!
 正確にはこのサイトのテキストは、「■子どもを放射能から守る会おきなわ■」にあるらしいんだけど、
【内部被ばく問題】セシウムの毒性について
 その「内容要約」に記されているテキストが、市販の本ではうまく見つからなくて困る。
 多分、
・おいらの探し方がうまくない
・見つけたテキストと引用されているテキストが違う
・「自費出版」で出した本と、「市販本」との内容が異なる
 などといった理由だと思うんですが、一応比較して英文も並べて皆様の知恵を借りたいところ。
 ぼくが手にしている本は、以下のものです。

放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ

放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ

 順番にやっていきます。

以下に要点をまとめます。

【体全体への影響】
セシウム137の体内における慢性被曝により、細胞の発育と活力プロセスがゆがめられ、体内器官(心臓、肝臓、腎臓)の不調の原因になる。

ぼくの手にしているテキスト:2-10、p40&p91
 これまでの研究結果に基づいて、つぎのように結論できる。人体内や動物の体内に長寿命のセシウム137が持続的に取り込まれると、細胞成長の歪曲とエネルギー過程の歪みをともなう内臓器官(心臓、肝臓、腎臓)の異常が引き起こされる。
Basing on the results of the investigations performed, we may conclude the following: durable incorporation of the long-living 137Cs in the human and animals' organisms causes disorder of internal organs (heart, liver, and kidneys) with distortion of the cellular trophy and energetic processes.
慢性被曝」という語はうまくみつかりませんでした。

* 大抵いくつかの器官が同時に放射線の毒作用を受け、代謝機能不全を引き起こす。

ぼくの手にしているテキスト:2-10、p40&p91
 たいてい、複数の臓器が同時に放射性元素がもたらす毒作用を受け、代謝機能不全を引き起こす。
As a rule, several organs are subjected to the radiotoxic effects simultaneously, provoking the effect of metabolic disfunction.
放射線の毒作用」ではなくて「放射性元素がもたらす毒作用」。微妙だけど重要かも…。

セシウムの濃度に応じて、活力機構の破壊、たんぱく質の破壊が導かれ、組織発育が阻害される。

ぼくの手にしているテキスト:2-10、p44&p95
(このように、体内に取り込まれた長寿命の放射性セシウムは、多くの重要臓器に悪影響を与え、その結果、高度に分化した細胞が侵される。)その過程は放射性セシウムの濃度に関係する。エネルギー産生(引用者注:生産?)機構の損傷がこの過程の基盤にあり、細胞の構成蛋白の破壊に至る。これに関連して、セシウム137が人体に与える影響は、直接の影響と毒性因子(窒素化合物)の効果があり、血管系の異常による組織の栄養障害が、重要な臓器や系の細胞内の代謝過程を抑制する特徴がある。
Thus, penetrating the organism, a long-living radioisotope of 137Cs affects a number of the vital organs and systems. As a result, highly differentiated cells are violated, the process being dependent on the radiocesium concentration. The destruction of the energetic mechanism lies in the basis of the process, leading to the protein destruction. In this connection, characteristic feature of the 137Cs effect upon the human organism appears the depressed metabolic processes in the cells of vital organs and systems, due to the direct influence and the effects of the toxic tissues (nitrogen compounds), violation of the tissue trophy due to the vascular system disorder.
「組織発育が阻害される」じゃなくて「代謝過程を抑制する」? 引用箇所間違ってるかもしれない

セシウムの影響による体の病理変化は、合併症状を示し、長寿命体内放射能症候群(SLIR)といわれる。SLIRは、セシウムが体内に入ったときに現れ、その程度は入った量と時間とに相関する。

ぼくの手にしているテキスト:2-10、p44&p95
 こうして、セシウム137によって人体や動物体内に引き起こされる病理学的変化は、長寿命放射性元素体内取り込み症候群(Syndrome of long-living incorporated radioistopes, SLIR)として、まとめることができるかもしれない。この症候群は、放射性セシウムが体内に取り込まれた場合に現れ(症状の程度は、取り込まれた量と時間によって決まる)、病態で特徴づけられる。
The pathological modifications in the human and animals organisms caused by 137Cs may be joined together into the syndrome of long-living incorporated radioistopes (SLIR). The syndrome appears in the cases of radiocesium incorporation in the organism (its degree being the function of the incorporation quantity and time) and is characterized by the metabolism pathology, ...
「といわれる」と、「として、まとめることができるかもしれない」では、ニュアンス的に違うし、「長寿命体内放射能症候群」と「長寿命放射性元素体内取り込み症候群」では、後者のほうが分かりやすいですな。放射能って。

* SLIRは、血管、内分泌、免疫、生殖、消化、排尿、胆汁の系における組織的機能変化で明らかになっている。

ぼくの手にしているテキスト:2-10、p44&p95
 それは、心血管系、神経系、内分泌系、免疫系、生殖系、消化器系、腎臓と泌尿器系、肝胆道胆管系の各系における組織的機能的変化として規定される。
... stipulated for the structural and functional modifications in the cardiovascular, nervous, endocrine, immune, reproductive, digestive, urinary excretion and hepatobiliar systems.
 cardiovascularは「心臓血管系(心血管系)」、urinary excretionは「泌尿器系(?)」、hepatobiliarは「肝胆道系(?)」。排尿と胆汁の系というのは少し変かも

* SLIRを引き起こすセシウムの量は、年齢、性別、系の機能の状態に依存するが、体内放射能レベルが50Bq/kg以上の子供は機関や系にかなりの病理変化を持っていた。心筋における代謝不調は20Bq/kgで記録された。

ぼくの手にしているテキスト:2-10、p44&p95-96
 SLIRを引き起こす放射性セシウムの量は、年齢、性別、生態の機能状態に応じて変わる。放射性セシウムの体内濃度が50Bq/kgを超えると、子どもたちの臓器と系では、顕著な病理的変化が引き起こされる。同時に、個々の系、とくに心筋では、セシウム137の体内濃度がわずか20Bq/kgに達しただけで代謝の不調が出現する。
The quantity of the radiocesium, SLIR inducing, may vary, depending on age, sex and the functional organism condition. Children have been registered to have considerable pathological modifications in the organs and systems with the incorporation lovel over 50 Bq/kg. At the same time, metabolic discomfort in the individual systems, primarily in the myocardium, has been registered with 137Cs concentration amounted to 20 Bq/kg.
「体内放射能レベル」と「放射性セシウムの体内濃度」だと少し違うけど…このくらいは許容? 放射能って。

* 汚染地帯、非汚染地帯の双方で、わずかな量の体内セシウムであっても、心臓、肝臓、腎臓をはじめとする生命維持に必要な器官への毒性効果が見られる。

ぼくの手にしているテキスト:2-10、p44-45&p96
 私たちの研究データは、汚染地域でも、きれいな地域でも、放射性セシウムがわずかでも体内に取り込まれれば、好ましくない影響が生じるという証拠を提示している。この病的過程は重要臓器、とくに心臓、肝臓、腎臓への毒性効果を伴う。
The data presented give evidence to the unfavorable effects of even tiny radiosesium incorporation, both on the contaminated and clean territories. The process is accompanied with its toxic effects upon the vital organs, primarily heart, liver and kidneys.
生命維持に必要な器官」という言葉はないですな。パラフレーズ(手前勝手な解釈)しすぎ?

【心臓への影響】
* 生命維持に必要な多くの系で乱れが生じるが、その最初は心臓血管系である。心筋のように、細胞増殖が無視できるかまったくない器官や組織は、代謝プロセスや膜細胞組織に大きな影響が生じるため、最大の損傷を受ける

ぼくの手にしているテキスト:2-10、p40&p91(なんでまた逆流するの?
 特筆すべきことは、正常な状態では、細胞の増殖がほとんどないかまったくない臓器や組織(心筋)が最大の損傷を受けることである。体内に蓄積した放射性セシウム代謝過程を妨げ、細胞膜の構造に悪影響を与える。その結果、多くの重要な系、第一に心血管系で、その組織と機能が侵される。
It should be noted, the organs and tissues with the negligible or absent cells proliferation (myocardium) under physiological condition suffer to the greatest extent. Radiocesium accumulated in the organism intrudes the metabolic processes and affects membrane cedll structures. As a result, many vital systems, their structure and functinons are violated, primarily, the cardiovascular system.
生命維持に必要な多くの系で乱れが生じる」というテキストはうまく見つかりませんでした。「最初は」と「第一に」も少し違うな。primarilyは「主として」と訳したほうがいいのかな?

ミンスクの子供は20Bq/kg以上のセシウム137濃度を持ち、85%が心電図に病理変化を記録している。

ぼくの手にしているテキスト:3、p49&p100
 ミンスクの子どもの体内セシウム137濃度は20Bq/kg以上であり、彼らの85%が心電図に病理学的変化を記録している。
The children of Minsk are registered to have 137Cs concentration over 20 Bq/kg. Here, 85% of them have pathological modifications registered on the ECG.
 ここはまあ違和感なし。ECG=electrocardiogramなんですけど、どんな「病理学的変化」なのかさっぱり分からない

ミンスクの子供で、まれに体内放射能が認められない場合もあるが、その25%に心電図変化がある。このように濃度が低くても、心筋に重大な代謝変化を起こすのに十分である。

ぼくの手にしているテキスト:3、p49&p100
 一方、まれに体内放射能が認められない子がいる。そうした子どものうちで、心電図に病理学的変化が認められるのは25%である。このように放射性セシウムの濃度が比較的低くても主に心筋に重大な代謝変化を起こすのに十分である。
In seldom cases of radiocesium being not contained in the organism, 25% of cases register ECG modifications. Thus, relatively small radiocesium concentration is enough to cause sserious metabolic modifications, primarily in the myocardium.
 これもそんなに重要な違いはないんだけど…すみません、何言ってるのかよく分かりません。「普通の25%の子どもに病理学的変化を認める謎の心電図を測る器械」がある、という解釈?
 
 あと、「血管系」とか「腎臓」とかへの影響もあるんだけど、なんかもう気力尽きたのでまたの機会に。とりあえず(1)としてみたけど…。
 あっそうだ、最後にこれだけやっておこう。

セシウム排出製剤】
セシウムの排出に、カリエイ土を加えたペクチン製剤のペクトパルは最も将来性がある製剤のひとつだが、セシウムが人体に入るのを防ぐほうが、それを排出したり乱れた代謝を正常にするより容易なことを心に留めるべきである。

ぼくの手にしているテキスト:4、p52&p103
(吸着剤は、確実に放射性セシウムと結合し、しかも代謝機能や重要な臓器に影響を与えないものでなければならない。)粘土質を加えたペクチン製剤のペクトパルはもっとも有望な製剤のひとつである。ただし、放射性セシウムの体内への取り込みを防ぐ方が、それを排出したり、代謝異常を正常にしたりするよりよほど容易であることを心に留めるべきである。
Pectin derivatives accompanied with the calyey additions, pectoral, in particular, belong to the most perspective preparations. It should be kept in mind, it is much easier to prevent the radiocesium penetration in the human organism than to excrete it and to correct the violated metabolism.
 …何だよカリエイ土って!? 検索しても「バンダジェフスキー氏の論文の謎要約テキスト」の孫引用・曾孫引用しか引っかからないんでやんすけど…。ていうかさ…これ、普通にclayclayey(粘土状の)のスペルミスだよ…。
 
 まあとにかく、「粘土質を加えたペクチン製剤のペクトパル」、バンダジェフスキーさん売る気満々のようです。