読売新聞1955年3月30日の記事「見ない読まない買わない運動」

 悪書追放運動当時の新聞テキストから。誤字とか読み間違いはお許しください。
 読売新聞1955年3月30日の記事「見ない読まない買わない運動」

見ない読まない買わない運動 不良図書を追放 子供守ろうと母の会など
 
“不良文化財から子供たちを守ろう”という声が各方面に高まっている。最近グンとふえた児童雑誌の数は約七百五十万部、その大半が童心を傷つけそうないかがわしいマンガやエロ、グロものや残虐をきわめる冒険物語、あるいは戦争ものなどに貴重なページの半数近くを使っている。さらに性雑誌のはんらんもののすごく出版界の無軌道ぶりから早くも一部には戦時中のような“統制”のきざしも現われはじめ、ついに見かねたお母さんの団体や有識者の間から批判の声が起り“不良出版物追放”への動きが活発化してきた。
 
☆…児童雑誌の販売部数は日本読書新聞の調査によると大体七百五十万部、うち「冒険王」「おもしろブック」「幼年ブック」などが四、五十万部、「なかよし」「漫画王」「少年クラブ」などが二、三十万部、少ないところでも十万部は下らず、これら雑誌の特長はいわゆる“みる雑誌”となっている。写真グラビア、漫画、絵物語などが五二%をしめ痛快ブック四月号は二一六ページのうち二〇〇ページがこうした要素でしめられ平均六〇%、中身にはほとんどカタナ、ヤリ、ピストル、ドクロ類があふれ、ある雑誌の三月号にいたっては一冊の中に抜き放った白刃がなんと二八二本、ピストル四〇丁、このほか鉄砲、手裏剣、毒矢など闘争心をかきたてるような武器の類がぎっしり。さらに怪物、魔物、ガイ骨男、怪人、吸血鬼などのほか太平洋戦争前後の日本の世相をしのばせる好戦もの、燃える大空、血に染む日の丸など、ひどいのは「国連の艦隊も滅茶滅茶だ」という国連否認思想までとび出している。
☆…これらの読物がどんなに子供の心を傷つけているか-警視庁の調べによると昨年中に扱った青少年の非行一二〇件のうち出版物や映画をみたさに罪におちたもの八名(出版物五、映画三)出版物や映画をみたことによるもの一一二名(出版物七〇、映画四二)で「みたことによるもの」が九三%をしめている。興味を感じた点は出版物では性の場面三三、裸婦写真二三、接ぷん抱擁一三などをはじめ冒険物語二、リンチ一、覆面怪盗一、復しゅう場面一、映画では接ぷん抱擁一四、闘争場面一一、わいせつ場面一〇、冒険場面五などとなっている。興味を持った点を地でいった“実行派”は出版物では五六人で全体の八〇%、映画では二七名で全体の六四%という数にのぼり係官もあぜんとしている。
☆…こうした傾向に対し母の会連合会(会長宮川まきさん、都内に五十二支部、会員三十五万)ではこれまでも不良出版物の問題処分を行なってきたが今年はさらに大きく取りあげていくこととなり五月から会員を動員し青少年保護育成運動を大々的に展開する。同会の調査によると子供たちは性雑誌などを家庭から持出し愛読していた例が多いから、まずこうした雑誌を家庭から一掃し「見ない、読まない、買わない」の“三ない運動”を徹底させるという。また東京豊島区池袋の「最性協会(?)」江東区深川の地域婦人団体、世田谷区北沢の「ひかり子供会」、台東区谷中の「みどり会」なども悪書の“追放”に乗出そうとしている。さらに神奈川県では最近青少年保護育成条例を発動、有害図書として夫婦生活、デカメロン各四月号など九誌を指定した。これは保護条例五条の「青少年の福祉を阻害するおそれがある」場合その図書の発売配布を禁止することができるというもので全国でも異例の措置として波紋を呼んでいる。

 この記事を見る限りでは、エロ・グロのほうが漫画より影響大きかったみたいな感じを受けるですが…。
 あと、「三ない運動」の起源は悪書追放運動からのような気がする(非核三原則よりは古い)。
 
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