今のブームは「マスコミの報道検証」じゃなくて「ネットの情報検証」らしいですが。あと本田宗一郎さんの韓国に関する発言など
こんなのもありました。
→本田宗一郎氏の「韓国とは関わるな」発言の元ネタ
まぁくわしいことはあちらのサイトを見ていただくことにして、要するに本田宗一郎さんの「韓国とは関わるな」発言の元ネタは、『アジア共円圏の時代』(邱永漢・渡部昇一)の中で、本田宗一郎さんが言ったこと、と、邱永漢さんが言っていること、らしいです。
太字の部分に注意してくださいね。もう少し分かりやすくすると、
本田宗一郎さんが言ったこと、と、邱永漢さんが言っていること、なわけです。
ちなみに、本田さんは1991年8月5日に亡くなられていて、
→本田宗一郎 - Wikipedia
この「対談」がいつおこなわれたかは不明ですが、本が出たのは「1994年9月」なので、
→ビーケーワン:アジア共円圏の時代
実は、以下のようなことは、
昔、本田宗一郎さんが私の家に来て食事をごいっしょしたことがありました。そのとき、「本田さんのところでは、外国に何軒、工場がありますか?」と尋ねたら、「三五軒」とおっしゃったように記憶しています。そして、「その中で、一番うまくいっているところはどこですか?」と尋ねますと、「台湾」とお答えになり、「台湾に行くと、台湾の人がみんな、私に『こうやって自分たちが仕事をやれるのは、本田さんのお蔭です』と言って。このすごく丁重に扱うのです。ですから、胸に一物もっていても言い出せない」とおっしゃいました。この本田さんの言葉は、日本と台湾の関係を象徴しているように思います。
ちなみに、一番具合の悪かったところはどこですかと、本田さんに尋ねましたら、「韓国」とおっしゃった。「どうしてですか?」と尋ねると、「向こうへ行って、オートバイを作るのを教えた。それで、一通りできるようになったら、『株を全部買いますから、帰ってくれ』と言われた。『どうしましょうか』と下の者が聞いてきたから、『そんなことを言われるところでやることはねえよ』と言って、金を返してもらった。その翌日に朴正煕が殺されたんだ」とおっしゃった。
同じ日本の旧植民地だったところですけれども、日本人と肌が合うところと合わないところとあるようです。
本当に本田さんが言ったことなのかどうかの確認、および本田さんからの「そのようなことを言った事実はない」という否定発言を得ることは不可能なわけです。
こういう「○○が言ったことなんだけど、××は△△なんだそうだね」という、(事実の確認のしようがない)伝聞情報を公に話してしまう人としては石原慎太郎さんがぼくの中では代表なんですが(ぼくの日記を「石原慎太郎」で検索してみるとわかります)、言った人間の話が「真実」と誤解されてしまうのはどうにもです。
しかし今まで「マスコミの報道は信じるな(というより、信じすぎてはいけない)」と言い続けてきたぼくですが、あまりにも「2ちゃんねる」を含むネットの情報を信じる人が、啓蒙のしすぎのせいか*1増えてきているように思える状況を考えて、今度は逆に「ネットの情報を信じるな」「○○だったらありそうなこと、というのはさらにダメ」ということを言わなければならないと思うと、頭が痛いです。
そんなことは、あえて言わなくても当たり前のことなんですから。
「2ちゃんねるで流れている、ソースが曖昧な怪情報」について、ぼくが今まであまり言及してきてなかったのは、まさかそんなものを信じる人間がそんなに多いとは思わなかったからです。
朝日新聞「アメリカの××が小泉の○○を批判してました」→ソース調べる→出てくる→ネット者「また朝日か!」
2ちゃんねる「福島瑞穂がこんなこと言ってたよ」→ソース調べる→出てこない→ネット者「福島ならあり得る」
いや、前者は歪曲で後者は捏造(捏造疑惑)なわけですが。まぁ確かに、先生が黒板に間違ったこと書くと、田舎の中学生ではなくて都会の大学生でもはしゃぎますけどね。
マスコミの報道を信じない人間が、「その報道は嘘だぴょーん」と言われると、それがネットの怪しい情報でも「そうだったのか!」「やっぱり!」になってしまうのが面白いところなので、ぼくのほうでも意図的にそういうネタを拾ってくるようにしてみたいと思います。
ちなみにぼくが現在一番怪しいと思って接している情報は、朝日新聞や2ちゃんねるといったメディアそのものではなく、脱北者が語る「北朝鮮の悲惨な現状」です。
取材する前に○千円ぐらい渡して、
「あちらでは人肉食ってるんですってね」
「いやさすがにそんなことは…まぁ私はそんなことしませんけど…隣の村では食ってたって話を聞いたことはあります」
「そんな北朝鮮の現在の政治状況についてどう思いますか」
「うんぬんかんぬん」
で、これを『脱北者が語る! あちらでは人肉食べ放題の村があった!』なんて記事にするのは、プロのライターや記者なら簡単です。
なにしろ、現地に行って「本当はどんな状況なのか」を確認することは多分、イラクやソマリアより難しい地域なんですから、嘘や伝聞情報しか流れてこない、と言っても言い過ぎではないように、ぼくは思ってしまうのですね。
まとめると、
本田宗一郎さんが邱永漢さんの家で食事をしながら言ったことは、あくまでも「邱永漢さんが聞いたということを言っているというだけの伝聞情報」で、「本田さんならそのようなことを言っていても不思議ではない」以上の意味はない
ということです。
そこまで真実について厳密でなければならないですか、と聞かれると、「いやまぁ、そんなことはないんですけどね」と答えはするんですが、ぼくの趣味としては「本田さんは『韓国とは肌が合わなかった』*2と言っていた」ではなくて「本田さんは『韓国とは肌が合わなかった』と言っていた、と、邱永漢さんは言っていた」という形で情報が流布されることを望みます。
あと、実際に韓国・台湾と商売をした、本田宗一郎さんの下で働いていた人はまだ生きている可能性がありますので、別の伝聞情報を入手することは可能だとは思いますが、当時の書類とか契約の内容が残ってないと、そこから先の「真実に近いもの」に近づくのは難しいだろうなぁ。
(2006年6月10日)
また不正確な引用をしているいる人がいるようですが
→はてなブックマーク - 愛・蔵太の少し調べて書く日記:今のブームは「マスコミの報道検証」じゃなくて「ネットの情報検証」らしいですが。あと本田宗一郎さんの韓国に関する発言など
2006年06月12日 apesnotmonkeys “「情報は正確に伝わったのか」などは、言及をするまでもなく「誰が伝えたか」で自明のことです”と主張してた人間が、いまになってなにをカッコつけてるんだか。
うわー、ネガティヴ・コメント万歳。
ぼくが言ったのは、正確にはこのようなことですね。
→ものすごく興奮して大漁の文章をアップロードしているいる人がいるみたいですが
と返答していたはずである。つまり、誰がSWCやテニー氏に情報提供したのか? を記事にしたのは、その背後に“笹記事が誤読(誤訳)されている可能性がある”という問題意識があったからだ、と釈明しているわけである。もしこれがあなたの真意であったというのなら、「誰が情報を伝えたのか」と同時に「情報は正確に伝わったのか」を問題にしてしかるべきではないだろうか?
私が問題にしているのは、「情報は正確に伝わったのか」ではなくて「情報が正確に伝えられているかわからないうちに『抗議』などしている人」なんですが。
笹論文を読むことは不可欠ではないのだろうか?
apesnotmonkeysさんほどには私の場合は不可欠ではないのです。
もしあなたが、「1月16日の時点では私には笹論文を読む必要性はなかった」とおっしゃるなら、要するにあなたにとって問題だったのは「誰が情報を伝えたか」であって、「情報は正確に伝わったのか」ではなかった(少なくとも二の次の問題だった)と言うことになるだろう。どちらだったのか、はっきりしていただきたい。
「情報は正確に伝わったのか」などは、言及をするまでもなく「誰が伝えたか」で自明のことです。「当人(元テキストを書いた人間)に対して接点を持たない第三者」により、当人に確認を取らないまま伝えた情報が「正確」なわけがありません(これについては「いや、接点はあった、笹幸恵氏にPOWの人間は確認を取っている、という情報を、apesnotmonkeysさんのほうがお持ちのようなら、訂正したいと思いますが)。私が言っているのは「どの程度まで正確に伝わったのか」ではないのですよ。その「情報」に基づき抗議している人間(テニー氏)には問題があるように私は判断しました。要するに、テニー氏およびその周辺の「メディア・リテラシー」の問題になります。さらにはその「抗議」に対して無批判で(私にはそう思えました)新聞の記事を掲載する新聞側にも、若干の思想的バイアス(旧日本軍に対するもの)も感じました。例によって、思想的バイアスはそれがいい・悪いの問題ではありませんが、単純に「日本語が読めないテニー氏は、その情報を○○氏によって入手した(可能性が高い)」と、新聞が書かなかったことを私が書いただけのことです。
前にも言ったと思いますが、その場合に必要なのは「どの程度『抗議をする側』が事実の確認をしたのか」ということで、私がテニー氏のような立場で、たとえばイランの雑誌の中に私に対する悪口が書かれた記事がある、という情報を、ペルシア語にくわしいかたから入手したとしても、取る行動は「抗議」ではなく「事実の確認」です。何しろペルシア語は全然読めないのですから、元テキストを書いた人に「このようなことを伝聞情報として聞いたのですが、私にもわかるような言語(英語)で、あなたの言っていることを私に伝えてください」というのが最初の行動でしょう。いきなり出版社や雑誌の編集部に「抗議文」を送りつけたり、インターネットに公開したりしたら、それはあまりにもすごい人すぎます(これについても、「いきなり」ではなかった、その前に別の行動をしていたが文藝春秋には無視された、というような情報を、apesnotmonkeysさんのほうがお持ちのようなら、訂正したいと思います)。
もう少しレベルを一般的なものにすると、コミケの同人誌における女王様が、「○○さん(別の女王様)ってあなたの悪口、こんなこと言ってるみたいよ」と、取り巻きから告げ口されたとしても、長年女王様をやっている人だったら、そんなことで○○さんを敵視したりするようなことはありません。その段階で自分の同人誌に「何か私について××って言っている人がいるみたいですが、何だかなぁ、と思いました」と書いてしまうぐらいのダメさ加減を、テニー氏には感じてしまったのですね(すみません、あまり一般的な例にならなかったかも)。
もう一度繰り返すと、
「当人(元テキストを書いた人間)に対して接点を持たない第三者」により、当人に確認を取らないまま伝えた情報が「正確」なわけがありません。
こちらを太字にしてみました。
もっと分かりやすくしてみると、
「本田宗一郎さんに対して接点を持っている関係者(邱永漢さん)」により「本田宗一郎さんに確認を取らないまま伝わっている情報が「正確」かどうかはわかりません(私的には、疑問です)。
前者は「正確なわけがない」、後者は「疑問である」ということは、言及するまでもなく自明のことです。
とりあえず笹論文(というほど立派なものではないですね。笹さんのレポート)に関しては読んで何かを言ってみたので(調べなければならないことがまだまだあるのが情けないところですが)。
で、apesnotmonkeysさんは笹幸恵さんとPOWの人との間に、何か接点があった、というような事実でも見つかりましたか。
最近の翻訳書は、不明な部分がある場合は、著者と直接的・間接的に接触して確認を取る、というのが普通のようですが(何冊かの本のあとがきに目を通してみた限りでは)。
まぁ「カッコつけてる」というのは、「(今回のテキストに関しては、ぼくに対して)シブシブながら同意」の婉曲表現と、好意的に解釈してみます。間違った情報が流布されることに関しての懸念は、ぼくの場合は右だろうと左だろうと(笹幸恵さんのテキストであろうと福島瑞穂さんが言ったとされていることであろうと)関係ありません。
これは以下のテキストに続きます。
→http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20060616#p1
あちらの人は「引用するポイントが間違っている場合は、それは不正確な引用とは言わない」と思っている様子。