復活しました→アマゾンから消えた上杉隆『メディアと原発の不都合な真実』の書評
(2012年10月10日追記)
アマゾンのコメント、一部修正して復活してました。でもリンクはしない。
この記事の末尾に比較テキスト掲載しておきます。(以上)
○○の陰謀とか弾圧かもしれないので、コピペしてみました。
このエントリーの使い方
・ブログ持ちの人はコピペして、さらにトラックバックとかする
・Twitter使ってる人はこのメモに言及ツイートする(短縮urlは http://bit.ly/RamA5I )
・そうすると、googleで『メディアと原発の不都合な真実』を検索すると、俺のメモが上位に来て、圧力に屈しないものが喜ぶ。
なお、おいらは非常に圧力に屈しやすいタイプなので、そこのところよろしく。元テキストのproustienneさんが何か言って来たら消します。
アマゾンにはリンクしません。読む方法はいろいろあると思う。
ジャーナリストが人を騙し続けるということ, 2012/10/7
レビュー対象商品: メディアと原発の不都合な真実 (単行本(ソフトカバー))
原発事故後のメディアの問題を扱ったもの。単行本で159頁とやや薄く、講演の文字起こしの他は書き下ろしのようだが、内容はここ一年あまりの間に出た著者の他の本と同じである。以前の著書によく見られた間違いのうち無くなっているものもあるが、とくに訂正されている訳でもなく、記述自体が消えているだけである。それでもまだ、嘘だとわかる文章が幾つもある。
たとえば著者は、メルトダウンの可能性や放射能漏れについて、国内メディアは事故から3ヶ月経つまでさっぱり報じなかったと述べている(p.62)。これは実際には、
・読売:3月12日『原発 強い放射能漏れ』『福島第一 炉心溶融か 爆発』(号外)、13日『第一・1号機 炉心溶融の恐れ』『放射能漏れ 90人以上被曝か』(1面)
・朝日:3月12日『放射能放出 5万人避難』(夕刊12面)、13日「炉内の温度が過度に上がって核燃料が溶け出す「炉心溶融(メルトダウン)」が起きたおそれが出た。」(号外)
・毎日:3月13日『国内初の炉心溶融』(1面)、「同日〔12日〕午前には1号機から放射性物質の漏えいが確認され、さらに国内初の炉心溶融も発覚した。」(同)
・日経:3月13日『原発の炉心溶融』(1面)、「核分裂に伴うセシウムやヨウ素を周辺から検出」(同)、『福島第一で炉心溶融』(3面)
というように事故当初に報じられており、著者の言う「事故が起こってから3カ月ほどしてマスメディアも少しずつ」(p.62)、「それまではさっぱりでした」(同)というのは事実ではない。
また著者は、「最初はみんな書かないで横を見ながら様子見していて、どこかが書いたらある日一斉に、放射能が出ていました」と書いた(p.12)、メディアは「放射能は飛んでいません」と報じた(p.137)、「3月21、22日の大量の放射性物質の放出によって、東京都民の方を含めて多くの方が被曝したということがあります。・・・このような事実も隠された。」(p.28)と述べている。しかしこれも実際は、
・読売:3月14日『放射性物質拡散の恐れ』(夕刊2面)、15日『放射性物質 風下に流れ拡散』(2面)
・朝日:3月15日『高濃度放射能放出』(1面)、『放射能大量拡散の恐れ』(夕刊1面)、『各地で異常値観測』(同)
・毎日:3月14日『放射性物質県外に』(1面)、『他県にも放射性物質』(2面)
・日経:3月13日『放射性物質拡散の恐れ』(夕刊3面)、15日『放射線量が異常値』(夕刊1面)、16日『放射線 飛散どこまで』『風に乗り首都圏も』(2面)
といったように報じられており、3月22日以後に都内で放射性物質が検出された件も、それぞれ22日から24日のあいだに報じられている。原発事故をめぐる報道の問題を論じるにあたって、著者はこうした事実すら確認せずに書くことをくりかえしている。
このことを著者はすでに、『Journalism』誌で奥山氏から取材をうけたさいに指摘されている。これに対して著者は、「3月下旬以降、放射能が出ているのにそれが止まったかのように後退して報じたじゃないかということを指摘した。報道にそういう傾向があったことは事実」(『Journalism』2012年7月号p.88)と答えているが、上記のように事故当初から3月下旬もふくめ放射性物質の拡散は報じられており、奥山氏もそのことを指摘している。しかし本書では、まるで『Journalism』誌の取材自体がなかったかのように、反論も訂正もなくこれまでと同じ話がくりかえされている。著者はすでに記事の存在を示されて知っているので、本書ではあきらかに意図して嘘を書いていることになる。
本書は、東京電力会見でのプルトニウムをめぐる質問についても再び取りあげている(p.63-4)。著者はこれまで、3月26日に自分が質問するまで誰一人としてプルトニウムのことを質問しなかった、とくりかえし述べてきた(『この国の「問題点」』p.25、『報道災害【原発編】』p.68、『大手メディアが隠す』p.74-5)。しかし、それより前の3月22日の東京電力会見(23時16分開始の回)を観ると、プルトニウムについて執拗に質問している記者がおり、著者が随所で喧伝してきたことが嘘だとわかる。この点も奥山氏から指摘されていた(『Journalism』同上)が、本書では、「不思議なのはプルトニウムについてフリーランスや海外メディア以外から、ほとんど質問が出なかったことです。」(p.63-4)という書き方をしている。著者は、指摘されたことを認めるでも反論するでもなく、それとなく言い回しをぼかして済ませることにした訳である。
著者はまた、枝野長官が3号機について「ポンという爆発的事象がありました。」(p.29)という表現で事故を矮小化しようとしたとし、本書以外でも度々この発言を問題として取りあげている(5月25日のツイート等)。しかし、枝野氏のこの発言は3号機ではなく2号機について述べたものである(※3月15日午前 官房長官記者会見)。取材をしたというわりに、著者にはこうした基本的な経緯についての間違いが多く、いっこうに訂正する様子もない。
3号機の事故について本書は、「アーニー・ガンダーセン博士(・・・)などは・・・3号機は核爆発の可能性が高いというふうにも言ったんですね。核爆発の可能性があるんだったら逃げなきゃいけないということで、海外各国の対応としては、日本にある大使館を関西の方に移す、もしくは大使館員の国外退避。・・・アメリカは、軍人が80キロ圏外に退避、軍人がですよ。」(p.27-28)と述べ、アメリカはじめ各国が「3号機の核爆発の可能性」を考慮して国外退避を決めたと述べている。しかし実際は、アメリカ(NRC)は4号機の核燃料プールが干上がっているという誤情報をもとに退避を勧告したのであり、NRCや米大使館による退避勧告およびそれらについての海外報道でも、むろん著者が言っているようなことは書かれていない(Records Show Confusion in U.S. at Start of Japan’s Atomic Crisis. By Matthew L. Wald, 2012/02/21)。
各国による退避勧告について著者はまた、屋内退避が「世界では当初から80キロ圏内、50マイル圏内が原則でした。」(p.80)と書いている。著者はこれまでも、80キロ圏外退避が、「世界中の政府が最低限の基準としているもの」(『国家の恥 一億総洗脳化の真実』p.20、『大手メディアが隠す』p.46)と述べ、日本政府の対応はこれを無視した「世界でも珍しい避難範囲」(『大手メディアが隠す』p.58)だとして非難してきた。しかしこれも実際には、アメリカ原子力規制委員会(NRC)や環境保護庁(EPA)のマニュアルでは10マイル(16キロ)が標準であり、IAEAでは施設に応じて0.5から30キロまでが推奨避難範囲とされている。これらもNRCやIAEAのサイトで確認できるが、著者は1年半にわたり事実と異なることを言い続けている。
また著者はSPEEDIについて、「ところが驚いたことに、海外の人はこうした放射能の飛散状況を知っていたんですね。なぜかというと、3月15日に日本がアメリカ軍にSPEEDIの情報を提供しているからです。つまり、国民の税金を何百億円も使って作ったものを、残念ながら日本の国民でなくてアメリカ軍に渡したわけです。その時、3月15日前後のことですが、私もアメリカ軍の情報を色々と得ていたので、米軍情報というツイートをひとつだけある人のツイートに対して返したら、それ以来「米軍情報はデマ」というのを1年ぐらい言われています。」(p.33)というように、「米軍情報」というツイートで自分がSPEEDIについて事故当初から指摘していたかのように書いている。
著者のこのツイッターでの発言は昨年3月18日のものである。これは、「米軍が硼酸水投入を進言したのですが東電は硼酸が原子炉の廃棄を意味するため拒否しました」という他人のツイートに対して、「ほぼ本当です。米軍情報」とコメントしたものであり、SPEEDIとはなんら関係ない。著者がSPEEDIに言及したツイートは、6月4日に、「辛坊治郎 『この政権の痛恨のミスは、SPEEDIの結果を即座に活かせなかった」というやはり他人のツイートにコメントしたものが初めてであり、それより前にはない。本当にSPEEDIのことを早くから指摘していたのなら、なぜわざわざ無関係な発言をもってきて証拠のように思わせようとするのだろうか。
「暫定基準値のからくり」(p.109-115)という文章も変である。著者は、水と野菜の暫定基準値がWHOなどの基準値と比べ異常に高いとし、「いまはメディアや政府は、・・・「暫定基準値」を勝手に上げています。」(p.112)と述べている。しかし実際には半年前(2012年4月1日)から新基準値が施行されており、飲料水・一般食品の基準値とも(飲料水は10、一般食品は100へと)引き下げられている(※厚生労働省『食品中の放射性物質の新たな基準値について』)。そして、この新基準値については本書でもp.67とp.113にある(枠で囲った)解説で言及しているのである。まるで本文と解説を別人が書いたようにちぐはぐな記述になっている。ちなみに著者によるWHO基準値の引用も間違っている(Codex General Standard for Contaminants and Toxins in Food and Feed (CODEX STAN 193-1995))。
昨年4月4日に原発から放出された汚染水について、著者は本書で、国内では低濃度と報じられたが海外では高濃度となっている、と述べている(p.126)。これも著者は何度も問題として取りあげてきたが、実際にはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ABCテレビはじめ海外メディアは、低濃度(low-level, less radioactive)の汚染水が放出されたと報じている(NYT: Japan Releases Low-Level Radioactive Water Into Ocean. By Hiroko Tabuchi and Ken Belson, 2011/04/04.,WP: Japan dumps radioactive water into ocean. By David Nakamura, 2011/04/05., ABCNews: Tokyo Electric Dumps Radioactive Water into Ocean. By Wendy Brundige and Neal Karinsky, 2011/04/04.,etc.)。
著者の本の特徴は、このようにちょっと調べただけでも嘘だとわかる記述が非常に多いことである。いずれも取材をしていれば必ず、それも先ず初めに得るだろう類の情報である。にもかかわらず、震災・原発事故から一年半経っても、著者の本にはそれらをまともに参照した形跡がない。そして、事実確認のお粗末さと比例するように、バレた時のための予防線を張るような文言が多い。「私はデマだと言われている」とつねに自ら大っぴらに喧伝するのも、評判が読者に及ぼす影響を減殺し、まさか本当にデマだと疑わないようになることを当てにしている訳である。また、著者はたびたび「多様性」をもちだして自己弁護しているが、確認すべきことをせずに虚偽の記述をくりかえす事と、価値観の多様性とは何の関係もない話である。
日本のマスメディアについては均一的で議題設定機能に乏しいという問題がよく指摘される(フリーマン『記者クラブ』、前嶋『アメリカ政治とメディア』)が、他方の一端では、著者のようにセンセーショナルに書き散らして後から嘘が発覚した者が、いいかげんで無責任なメディア事業者や、黙認する同業者・業界人がいるために、業界から追放されずに同じことをくりかえすという問題があるようにみえる。こうしたことは例えば、著者が好んで引きあいに出すアメリカのメディアでは通用せず、実態を知りながら著者を起用している事業者も非難を免れない筈である。
国内メディアへの攻撃とは裏腹に、著者の一連の振る舞いから窺われるのは、むしろ日本の報道文化ないし出版・放送文化にたいする、屈折した信頼感と執着である。それら業界を相手にやっているかぎり、どんな嘘もしらばっくれていれば何とでもなると踏んでいるのである。それが著者がジャーナリストとして培ってきた価値観なのだろう。
…上杉さんその話、おれもう30回ぐらい聞いたよ。
(2012年10月10日追記)
アマゾンのコメント復活してました。
※10月9日追記:アマゾン・カスタマーサービスより、引用にかんするレビューガイドラインに抵触している旨通知があったため修正をしました。
だそうです。
→Amazon.co.jp ヘルプ: カスタマーレビュー
他者が書いたテキストまたは記事から許可なく転用したコメント
これですかね。「引用にかんするレビューガイドライン」は、具体的には不明でした。
修正部分。
(前)
このことを著者はすでに、『Journalism』誌で奥山氏から取材をうけたさいに指摘されている。これに対して著者は、「3月下旬以降、放射能が出ているのにそれが止まったかのように後退して報じたじゃないかということを指摘した。報道にそういう傾向があったことは事実」(『Journalism』2012年7月号p.88)と答えているが
(今)
このことを著者はすでに、『Journalism』誌で奥山氏から取材をうけたさいに指摘されている。これに対して著者は、3月下旬以降に放射能が止まったかのように後退して報じたことを指摘した(『Journalism』2012年7月号p.88)、と答えているが
(前)
3号機の事故について本書は、「アーニー・ガンダーセン博士(・・・)などは・・・3号機は核爆発の可能性が高いというふうにも言ったんですね。核爆発の可能性があるんだったら逃げなきゃいけないということで、海外各国の対応としては、日本にある大使館を関西の方に移す、もしくは大使館員の国外退避。・・・アメリカは、軍人が80キロ圏外に退避、軍人がですよ。」(p.27-28)と述べ、アメリカはじめ各国が「3号機の核爆発の可能性」を考慮して国外退避を決めたと述べている。
(今)
3号機の事故について本書は、アメリカはじめ各国が「3号機の核爆発の可能性」を考慮して国外退避を決めたと述べている(p.27-28)。
(前)
各国による退避勧告について著者はまた、屋内退避が「世界では当初から80キロ圏内、50マイル圏内が原則でした。」(p.80)と書いている。
(今)
各国による退避勧告について著者はまた、世界では当初から当初から80キロ圏内の屋内退避が原則だったと述べている(p.80)。
(前)
また著者はSPEEDIについて、「ところが驚いたことに、海外の人はこうした放射能の飛散状況を知っていたんですね。なぜかというと、3月15日に日本がアメリカ軍にSPEEDIの情報を提供しているからです。つまり、国民の税金を何百億円も使って作ったものを、残念ながら日本の国民でなくてアメリカ軍に渡したわけです。その時、3月15日前後のことですが、私もアメリカ軍の情報を色々と得ていたので、米軍情報というツイートをひとつだけある人のツイートに対して返したら、それ以来「米軍情報はデマ」というのを1年ぐらい言われています。」(p.33)というように、「米軍情報」というツイートで自分がSPEEDIについて事故当初から指摘していたかのように書いている。
(今)
また著者は、3月15日前後に「米軍情報」というツイート、で自分がSPEEDIについて事故当初から指摘していたかのように書いている(p.33)。