バス水没事故と食い違う証言

↓ここんとこ「ネット新聞JANJANWiki」のテキストばかり書いていて更新サボってましたが
http://wiki.fdiary.net/janwiki/

あちらも落ち着いてきたので、同じようなテキストをこちらでも書いてみます。

以前、台風で水没しちゃったバスのニュースなどが報道されましたが、

↓バス水没 屋根で一夜 台風23号 37人、歌って励ます 京都・舞鶴 9時間ぶりに救出(西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/media/news/news-today/20041021/news006.html

 二十日午後九時すぎ、京都府舞鶴市八田で、由良川の水があふれて国道175号が水没、兵庫県豊岡市の職員OBら三十七人が乗った「トマトバス兵庫」(兵庫県吉川町)の観光バスが立ち往生した。バスは車体がほぼ沈み、乗客らは屋根に避難。約九時間後の二十一日午前六時すぎから、海上自衛隊のヘリコプターなどが乗客を次々にロープでつり上げて救助した。衰弱した人はいるが全員無事という。

その後こんな記事が出てました。

↓「運行は客の要望」とバス会社、乗客反発 舞鶴バス水没(朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/1208/035.html

 台風23号の影響で乗客ら37人が乗ったバスが京都府舞鶴市で水没した問題で、バス会社が国土交通省の調査に対し、「水没の2時間前に運行停止を考えたが、乗客からの『帰宅したい』との強い要望を拒めなかった」と説明していたことが分かった。国交省は8日、全国のバス会社に対し、異常気象時には安全を最優先するよう求める通達を出した。
 一方、乗客たちは「まったく事実と異なる」と反発した。調査で乗客の言い分を聞かずに発表した国交省にも批判の声が上がった。
 複数の乗客によると、バスが一行の宿泊先だった福井県芦原温泉を出発した直後の20日午前9時すぎ、乗客の一人が「台風が近づいているので、観光先を一部キャンセルして早く豊岡に帰ろう」と提案。乗客たちは同意したが、運転手は「昼食を福井県で食べることになっている」などと拒否した。
 さらに、夕方になって風雨が強まる中、乗客が「このまま豊岡に帰るのは無理だ」と全員分の宿の手配を運転手に求めたが、バスはその後も走り続けた。運行を継続するよう運転手に訴えた人はいなかったという。
 乗客の男性(70)は「道路はすでに冠水していたが、プロの運転手が判断してバスを走らせたので、任せるしかなかった。責任逃れとしか思えない」と憤る。
 旅行に参加していた兵庫県市町村職員年金者連盟豊岡支部の松本一支部長(68)は「私たちからは事情を聴かず、バス会社側の聞き取り調査の結果だけを公表する国交省の姿勢はどうかと思う」と話した。 (12/08 23:22)

この、「運行を継続するよう運転手に訴えた人はいなかったという」という証言は本当かどうか興味を持ちました。

国土交通省に掲載されている、バス会社側の言い分はこんな感じです。

↓異常気象時におけるバス輸送の安全確保の徹底について
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/09/091208_.html


↓バス事業者への聞き取り調査結果について(pdf)

乗務員が行った行動、運行管指示理者への報告
 雨がひどくこれ以上運行できないかもしれないので37名分の宿が取れないか相談
 乗客から「自宅が水害に遭っており早く帰りたい」「行けるところまで行こう」との催促があったことを報告

言った・言わないに関する関係者の証言は確認というか事実の証明がどちらのサイドにも難しいものですが(音声録音のような証拠がない限り)、たとえば「自宅が水害に遭っている乗客」がいたかどうか、にはさらに興味を持ちました。

痴漢に関する報道や判決例その他を見ても、どうも物的証拠に欠ける場合は「被害者側の証言」をある種絶対視しがちなものですが、これはやはり朝日新聞が書いている通り、「国交省の姿勢はどうかと思う」んで、双方ちゃんとした場で言った・言わないの結論を出してもらいたいものです。

はっきり言って事故の直接の責任はバス会社・バス運転手にあるわけで、状況的にバス運行の判断ができるほどの知識がちゃんとあったとは思えないこと、「乗客が行ってくれと言った」というのは、情状酌量の判断材料にはなりますが、無罪とは断定しにくいところです。

なんか、「南京事件南京大虐殺)の関係者の証言」とか、「乗客が行けと言ったから行ってしまったバス運転手をマスメディアと政府の関係に重ねて考える」とか、いろいろ考える材料の多そうな展開です。

↓この件に関する「ネット新聞JANJANWiki」の記述はこちら
http://wiki.fdiary.net/janwiki/?%B9%F1%CC%B1%A4%CF%B8%AB%BC%CE%A4%C6%A4%E9%A4%EC%A4%EB

中山文科大臣は教科書について本当は何と言ってたのか

例によって朝日新聞の報道からはじまったみたいですが。
↓「慰安婦とか言葉減り良かった」 教科書巡り文科相発言(朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/1127/004.html

中山文部科学相は27日、大分県別府市で開かれたタウンミーティングに出席し、歴史教科書について「極めて自虐的で、やっと最近、いわゆる従軍慰安婦とか強制連行とかいった言葉が減ってきたのは本当に良かった」と述べ、過去の歴史教科書を批判した。文科相の諮問機関が現在、06年度から使用する中学校の教科書の検定作業を進めている。

 文科相は、歴史教科書から強制連行などの記述の削除を求める運動をしている自民党有志の「日本の前途と歴史教育を考える会」の座長を自ら務めていたと紹介したうえで、「日本の教科書は、政治家が悪いんだと思うが、極めて自虐的な『日本は悪いことばっかしてきた』というもので満ち満ちていた時があった。これは何とか直さないといかんということでやってきた」と説明。

 さらに「どの国の歴史にも光と影はある。悪かったことは反省しないといけないが、すべて悪かったという自虐史観にたって教育だけはしてはいけない。これからの日本を生きる子供たちに、自分たちの民族や歴史に誇りを持って生きていけるような教育をすることが大事だ」と述べた。

 その後の記者会見では「大臣になる前に座長だった立場から感じたことを述べた」と説明。「今回、文科相になりましたから別の見方をしなきゃいかんのかな、中立的に見ていかないといけないかなと思っている」と述べた。

 タウンミーティングではまた、男女の性差に言及する中で、男女別でなく五十音順に並べる男女混合名簿に触れ、「小さい頃から男も女も同じだということだと、どういうことになんのかなと思う」と疑問を示した。記者会見では「良い、悪いというのは思わないが、例えば身体検査の時に、小学校高学年になって同じ所で裸になるのはいやだという声も聞こえる。十分注意していかなくてはならない」と述べた。 (11/27 21:12)

この件については、タウンミーティングの中山大臣の発言を直で聞いた、他の新聞社の報道が見当たらないんですが(朝日には「大臣・政府関係者の『失言もしくはそれに類するもの』を報道するための特別チーム」でもあるんでしょうか)、まぁ政府の主催による「タウンミーティングということなので、もう少ししたら公報的なものも出るのかも知れません。
タウンミーティング
http://www8.cao.go.jp/town/

しんぶん赤旗の記事は、たとえばこんな感じ。

↓史実にも政府見解にも反する「逆流」発言(しんぶん赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-11-30/02_04.html

 中山成彬文科相が、二十七日のタウンミーティングで「従軍慰安婦や強制連行などの言葉が教科書から減って良かった」と発言したことは、アジアを侵略した過去の日本の過ちを認めたくないという、同氏をはじめ多くの自民党政治家の“本音”をあらわにしたものです。しかし、これは歴史の事実にも、政府のこれまでの公式見解にも反するものです。

 日本が朝鮮や台湾などの人たちを強制連行し、従軍慰安婦にしたり強制労働をさせたことは否定できない歴史の事実です。政府も従軍慰安婦問題について、一九九三年八月、河野洋平官房長官(当時)談話を出し、「本件は、当時の(日本)軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である」と軍の関与をはっきりと認め、「歴史教育を通じて永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さない」と表明しました。これを受けて、従軍慰安婦問題は、政府の検定制度のもとでも、中学校用の歴史教科書七社すべてで記述されるようになりました。

 しかし、それを「自虐史観だ」と攻撃する「新しい歴史教科書をつくる会」の中学校歴史教科書が、二〇〇一年の教科書検定に合格。この年の検定では、その他七社の教科書でも従軍慰安婦について記述したのは四社に減り、「朝鮮などアジアの各地で若い女性が強制的に集められ、日本兵慰安婦として戦場に送られました」と明確に記述したのは一社のみでした。ほかは「非人道的な慰安施設には、朝鮮や台湾などの女性もいた」「多くの朝鮮人女性なども戦地に送り出された」との記述にとどまりました。

 中山文科相の発言は、こうした「逆流」をさらに推し進めようとするものです。教科書検定の合否を最終的に判断する権限を持つ文科相の発言だけに、とりわけ重大です。アジア諸国はもとより、歴史の教訓をくみとり、平和な日本と世界を築いていこうとする多くの国民からの厳しい批判は免れません。(坂井希記者)

それを受けて、何やら内外の「市民団体」の活動もあった様子。

で、小泉首相のコメントはこんな感じ。しかしこれも「日経新聞」しかソースがなかったので困ってます。
↓首相「文科相の発言、全体を取り上げた方がいい」(日経新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20041129AT1E2800U28112004.html

 小泉純一郎首相は28日夜の同行記者団との懇談で、中山成彬文部科学相が歴史教科書に関し「従軍慰安婦などの言葉が減ってきたのは良いことだ」と発言したことが内外で報道されていることについて「私もワンフレーズと言われるが、マスコミがワンフレーズだけを取り上げている」と述べ、報道ぶりに不満を示した。

 アジア外交の重要な舞台となる東南アジア諸国連合ASEAN)と日中韓3カ国首脳会議を前に、自身の靖国神社参拝問題に続いて歴史教科書問題がクローズアップされることに神経質になっている様子。「全体を取り上げた方がいい」と語り、文科相の発言の真意を見極めるよう求めた。

ビエンチャン=下前俊輔) (07:02)

なんでビエンチャンの人が、と思ったら、この時首相は東南アジア諸国連合とかその他の国際会議で日本にはいなかったのですか。コメントがとても冷静、というか、日頃マスコミに歪んだ報道をされている人ならではの冷静さです。まぁ俺も多分同じような立場だったら「発言を確認していないのでコメントできない」ぐらいのことを言うだろうな、と思えるぐらいではありますが。

しかしそのあと、驚愕の事実(かどうかわからないけど、もう一つの視点)が判明。

「ソースは2ちゃんねる」なのが難儀ですが、そのタウンミーティングの現場を見てきた人の別の証言として、西日本新聞の投書欄では以下のような投書が掲載されたそうです。「ソースが2ちゃんねる」なんで、早急に新聞記事を確認してみたいところですが。

12月7日 西日本新聞 
誤解招かない報道心掛けて 大分県 自営業

 対話集会での中山文科大臣の歴史認識に関する発言が批判されています。私はその集会に参加して発言を聞きましたが、報道より発言の趣旨がゆがんで伝わっている気がします。あの発言は「過去の日本の悪い部分が必要以上に強調された教材があるがどう思うか」という趣旨の参加者からの質問に答える形で出ました。 
 私には中山大臣は「歴史的に検証されてない事象を教科書に記述すべきではない」ということを伝えたくて「従軍慰安婦や強制連行という言葉が減ってきたのはよかった」と発言したと受け取れました。
 国歌の歴史の陰の部分から目をそらしてはいけないのことはいうまでもありませんが、不正確な情報による教育が行われるのは、絶対に避けなければなりません。 
 また、このことに関する報道を読むと、発言の一部を強調して批判してるような印象をうけます。マスコミの報道も不正確であることは許されないので、誤解を招かない報道を心がけてほしいと思います。

「参加者の質問」がどのようなものであったか、また中山文科大臣の「歴史的に検証されてない事象を教科書に記述すべきではない」というニュアンスの部分を報道しないで、「極めて自虐的でやっと最近、いわゆる従軍慰安婦とか強制連行とかいった言葉が減ってきたのは本当に良かった」という発言の一部だけを掲載する新聞・マスコミに、いつもは少しあきれました、と書くところなんですが、今回は「怒りで体が震えた」とためしに書いてみます。

まぁ、メディアリテラシー(読み書き能力)の低い人や市民団体が、マスコミの報道にもとづいて抗議行動をおこなう、という例はありがちなことですが、今回のこれは、マスコミ報道も抗議している人もレベルが低すぎるのでは。ついでに中山文科大臣の、言ったことに関するフォローなども。

例によって記者のメディアリテラシーが疑問なネット新聞JanJanでは、この記事を以下のようにとりあげていますが、

↓中山文部科学相の歴史歪曲発言に抗議、辞任を要求(JanJan
http://www.janjan.jp/living/0412/0412081448/1.php

 11月27日、中山文部科学相大分県別府市で行なわれたタウンミーティングで、歴史教科書にふれ、「(教科書は)極めて自虐的で、やっと最近になり、いわゆる従軍慰安婦とか強制連行とかいった言葉が減ってきたのは本当に良かった」と述べました。日本政府官僚であり、教科書検定の責任者である文部科学相として許すことのできない発言です。

 これに対して「かながわ歴史教育を考える市民の会」をはじめとする12団体が「中山文部科学相暴言に抗議し、辞職を求める市民声明」を出し、12月3日、文部科学相に届けました。

 中山文部科学相の言葉は日本による侵略戦争や植民地支配によって言葉に尽くせぬ苦しみを受けてきたアジアの人びと、在日コリアンをはじめ日本に住む旧植民地出身者の思いをまったく理解しないものであり、歴史事実への無知をさらけ出したものです。これまで多くの市民が歴史を直視し、築き上げてきた和解と共生への努力に対して冷水を浴びせるものにほかなりません。こうした事実に目を背けて、21世紀東アジアのなかで生きる子どもたちに、どのような歴史認識と誇りを持たせることができると言えるのでしょう。

 その後文科相はこの発言について陳謝したと言いますが、戦後補償裁判で真実と謝罪を求め続けている被害者や在日旧植民地出身者の声に、日本政府は全く応えようとしていません。中山文科相は「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を推進する「日本の前途と歴史教育を考える会」の座長を務めていた経験もあり、出るべくして出た暴言と言うべきです。

 教科書検定の最高責任者である人物が、来年夏に採択される教科書の検定作業中に偏向した発言をしたということは、教育の政治的中立性を自ら放棄したもので、行政の責任者としてはまったく不適格です。辞任を求める声を大きくしましょう。

(石下直子)

なんか、市民団体の宣伝のチラシみたいです。記事を書いた「石下直子」という人も、googleで検索するとすごいところがいろいろひっかかるみたいだし。

しかしこのネタに関しては、元記事は朝日新聞だけ、それに対する首相のコメントは日経新聞だけ、別の人によるこのイベントのレポートは西日本新聞だけ、という、批判するにしても擁護するにしても、俺としては扱いにくいのが問題多いです。

新聞記者の人には(ブログの人でもいいんですけど)、別府でおこなわれた「タウンミーティング」の記録(音声記録でもいいというか、そのほうがいいかもしれませんが)を入手して、ちゃんと「本当は何と言っているか」を確認して、記事にするなり自サイトに公開するなりして欲しい、と思いました。

「新聞の報道によると」という形でテキストを書く場合には、「何新聞」が報道して、そのurlはどこどこにある、までちゃんと書かないと駄目だ、とも。

↓この件に関する「ネット新聞JANJANWiki」の記述はこちら
http://wiki.fdiary.net/janwiki/?%C3%E6%BB%B3%CA%B8%C9%F4%B2%CA%B3%D8%C1%EA%A4%CE%CE%F2%BB%CB%CF%C4%B6%CA%C8%AF%B8%C0%A4%CB%B9%B3%B5%C4%A1%A2%BC%AD%C7%A4%A4%F2%CD%D7%B5%E1