主張「NHK番組改変」放送の不偏不党を侵す“政治介入”(2005年1月17日)

主張「NHK番組改変」放送の不偏不党を侵す“政治介入”(←社会民主党ホームページより転載)
主張
NHK番組改変」
放送の不偏不党を侵す“政治介入”

 NHKが〇一年一月に、旧日本軍従軍慰安婦制度の責任者を裁く民衆法廷を扱った特集番組で、内容を事前に知った中川昭一経産相安倍晋三自民党幹事長代理が、放送前日に放送局長らNHK幹部を議員会館などに呼び「偏った内容だ」として番組改変を求め、NHK側もそれに応えて判決部分を放送しなかったことが明らかになった。中川・安倍両議員は事実関係を認めており、「政治介入」した議員と、それを許したNHKの両者は、外部からの干渉を排した放送法違反として厳しく責任を問われなければならない。

 「放送法」は、第一章「総則」の目的で「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」などを定め、外部からの干渉を排している。特にNHKは、国民の受信料を中心に経営しており、特定の政党や政府の意向で番組内容を改変するなどもってのほかである。

 中川経産相は当時、慰安婦問題などの教科書記述を調べる研究会「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」代表で、安倍幹事長代理は同会事務局長を務めるとともに、小泉政権官房副長官だった。中川・安倍両議員も小泉首相も「政治的圧力ではない」と語っているが、政権中枢の官房副長官や国会議員が制作局長らを国会に呼びつけて「偏っている」と言えば、当然、政治的圧力以外の何ものでもない。

 新聞報道によるとNHKの番組は、二〇〇〇年十二月に市民団体が都内で開いた「女性国際戦犯法廷」を素材に企画されたが、番組の内容を知った右翼団体などがNHKに放送中止を求めたことなどから局内で修正されて一月二十八日に番組が完成し、教養番組部長が承認した翌日、中川・安倍両議員に呼ばれたという。

 NHKの幹部の一人は「教養番組で事前に呼び出されたのは初めて。圧力と感じた」と語っている。当時の担当デスクだった番組制作局のチーフプロデューサーがNHKの内部告発窓口である「法令順守推進委員会」に「政治介入を許した」として訴えて調査を求めたため、このほど明らかになったのである。

 中川・安倍両議員が行なったことは、放送の不偏不党と真実及び自律を蹂躙する「事前検閲」という政治介入で、それを行なった両議員と、それを許したNHKの海老沢会長の責任は免れない。

社会新報2005年1月19日号より