朝鮮総聯中央本部徐忠彦国際局長の談話(朝鮮総聯)(2005年1月18日)

朝鮮総聯中央本部徐忠彦国際局長の談話(朝鮮総聯)(2005年1月18日)(←朝鮮総聯公式サイトより転載)

朝鮮総聯中央本部徐忠彦国際局長の談話
(2005年1月18日)

報道によれば、日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷(2000年12月8日―12日)を題材にしたNHKの特集番組に対する、当時の内閣官房副長官安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経済通産相の「圧力」と「政治介入」が取りざたされている。

この問題に関連して安倍晋三幹事長代理は「報道ステーション」(1月13日)、「報道2001」(1月16日)などのテレビ番組に出演して、女性国際戦犯法廷に国際実行委員会構成団体の一員として参加した、朝鮮民主主義人民共和国従軍慰安婦」・太平洋戦争補償対策委員会黄虎男書記長と朝鮮国際法学会鄭南用常務委員の両氏を、「北朝鮮工作員」と決め付ける許しがたい発言を行った。

黄虎男氏は、民間交流の窓口である朝鮮対外文化連絡協会の役員として、長年朝・日友好親善のために尽力してきたことで、マスコミをはじめ日本の各界人士に広く知られており、二回にわたる朝・日首脳会談の朝鮮側通訳をつとめた公の人物である。また鄭南用氏はわが国の権威ある法学博士である。

にもかかわらず、事実に反し「工作員」よばわりするのは、両氏の名誉を著しく傷つけるばかりでなく、わが国の尊厳を冒涜する発言といわざるを得ない。

安倍幹事長代理が、報道に対する「圧力」と「政治介入」問題の論議を意図的にすり替え、「工作員」を云々していることは、良識ある政治家の発言とは到底考えられないものである。

われわれは、与党の要職にある政治家が何のためらいもなく事実無根の発言を行い、世論をミスリードし対立感情をあおっていることに民族的な憤りを禁じ得ない。

周知のように、女性国際戦犯法廷は、日本軍性奴隷制に対する「国家の責任」を問うために、被害国であった南北朝鮮、中国、台湾、フイリピン、インドネシアと加害国日本の7団体による国際実行委員会が主催した民衆法廷であり、朝鮮をはじめアジア各国で旧日本軍が犯した国家犯罪を厳しく断罪した。

安倍幹事長代理は女性国際戦犯法廷を「とんでもない模擬裁判」「北朝鮮を被害者にするための大きな工作」「謀略」などと誹謗中傷を繰り返しているが、これは20万人ともいわれる朝鮮やアジアなどの女性に「従軍慰安婦」を強要し、人間としての尊厳を蹂躙した類例のない戦争犯罪を糾弾する世界の良心を踏みにじり、犠牲者をおとしめる許しがたい行為であるといえる。

1994年8月4日、当事の河野洋平官房長官は、「従軍慰安婦」問題について「当事の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」として「心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」との談話を発表した。

安倍幹事長代理の発言は、このような日本政府の公式的立場をも否定するものである。

われわれは、安倍幹事長代理が黄虎男、鄭南用両氏を「工作員」とした、事実と異なる発言を直ちに撤回し謝罪することを強く要求する。

過去の清算は、日本にとって回避できない法的、道徳的責任である。

一日も早く朝・日間の不幸な過去を清算する政治的決断が下されることを望むものである。