「少年レボリューション」1968年10月21日号(ダディ・グース)isbn:4870315505

書店で見つけて腰が抜けるほど驚いた、ダディ・グース(この人が○○○○という有名作家だということはある種公然の秘密なんですね)の作品集。21世紀に「馬鹿ばかしさの真只中で犬死にしちゃうための方法序説」や「砦の下に君が世界(よ)を」といった諸作品がまとめて読めるとは。残念なのは版権の問題なのか、ミステリ・マガジンで連載されて未完だった『長いお別れ』(原作はもちろんレイモンド・チャンドラー)が収録されていないことでしょうか。
モンキー・パンチ+水野良太郎+宮谷一彦といった、一連のクールでアメコミな絵柄をブレンドしたような抜群の絵センスと、1960年代にモノゴコロがついていないとよくわからない(イコール俺にも一部はよくわからない)アバンギャルドで時代を背負った知的フレーズが死ぬほどかっこいい。たとえば、前に出したタイトルの、前者は『赤頭巾ちゃん気をつけて』(庄司薫)に出てくる架空の本(ていうかノートだったかな)が元ネタだし、後者は『砦の上にわれらの世界を』という東大全共闘の記録本が元ネタだけど、そんなの知らないよね。
「砦の下に君が世界(よ)を」って、ストーリー的にはリンドン・ジョンソンをパロディ的に批判した「マクバード!」というアメリ新左翼アメリカにも新左翼というのがいたんですな、アビー・ホフマンとか。まぁネットで適当に検索してみてください)の、シェイクスピアマクベス」パロディ本が元ネタなんだけど、冒頭はこんな具合。

舞台も花の 大江戸に いずれ劣らぬ 勇猛の
歴史にからむ宿怨を 今また新たに 不祥沙汰
ダテには見せぬ 勧進帳 ダテには見せぬ 玉の肌
浮かぶ彫りもの 銀杏に炎 鬼畜戦犯 親の血を
流れ汲む花 呪われの 戦う若人 あわれにも
その死で購う 真実を
ロミオとジュリエット』ですな。
あー、この本の発売日の「1968年10月21日」って何の日だかは、これも検索してみればすぐに分かります。