一人称

『昭和の東京、平成の東京』(小林信彦筑摩書房)を読んでたら、小林信彦が一人称に「私」というのを使っていた時期があったのは驚いた。40年ぐらいに亘るエッセイをまとめたものなんですが、細かく確認してみたら、1971年初頭〜1978年ぐらいまで。えーと、1932年生まれなので、彼が中年の年齢ぐらいになったあたりですか。「ぼく」を復活させたのは、多分小林信彦より年齢が上の植草甚一(調べてみたら1908年生まれでした)が1970年代後半に「ぼく」の一人称でブームになり、別に中年・年寄りがその人称を使ってもいいんだな、と思ったせいでしょうか。
今は「ぼく」という一人称を使うのは、老人(かつて元気な若者だった人)が中心のようです。
そういえば、鏡明も「本の雑誌」のテキストでは、いつのまにか一人称が「私」になっていたと思う。そのうち「ぼく」になるんだろうか。
どうも、「ぼく」と自分を言っている人には独特の、雑学・好奇心的センスを感じさせます。