髪の長い女の人

それは、暑い夏の午後の、ようやく日も暮れようというたそがれ時でした。私の前を、髪の長い女の人が歩いているのが見えました。距離は50メートルぐらいで、はっきりその人の顔が見えたし、歩いているのも確かだったのですが、じきに妙なことに気がつきました。
私とその人とは顔が向きあっているので、じきにすれ違う距離になるはずなのですが、いくら歩いてもその人と私との距離が縮まらないのです。不思議なこともあるものだ、と思いましたが、やがてその理由がわかりました。
彼女と私とは、すれ違う方向に歩いていたのではなく、同じ方向に歩いていたのです。
そのことに私が気がついたのを、彼女は知ったのか、私の顔を見るとにっこりと笑って、髪の毛で自分の顔をおおいました。
するとそこにはただ、私の少し前を歩いている髪の長い女の人の後姿があるだけだったのです。
 
ネットのどこかで拾ったネタでした。