お前らどうせ映画『ホテル・ルワンダ』のパンフレットなんて読まないで何か言ってるんだろうから、俺が町山智浩のテキストを全文アップしてやるぜ。あとその感想。

こんなエントリーとか。
本当は痛いテレビ番組:「ホテル・ルワンダ」をめぐる論争 - livedoor Blog(ブログ)
こんな「はてなブックマーク」のタグ・キーワードとか。
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いろいろあるみたいなので、とりあえず映画『ホテル・ルワンダ』を見て、さらに町山智浩さんのパンフレットのテキストを読んでから何かを言わなければいけない気になりました。
ということで、とりあえずパンフレットを買ってきました(映画は未見)。
これで600円は正直ボッタクリ
でも、町山さんがどういう文脈でどういうことを言っているか知りたかったので(知らせたかったので)。
goo映画の『ホテル・ルワンダ』情報は、こちら。
ホテル・ルワンダ - goo 映画
公式サイトもあるんですが、上映館を知るには上記サイトからのほうがいいかも。
ということで、とりあえず町山智浩さんのテキストを全文アップしてから、何かを言うことにします。
本来は町山さんの著作物なので、町山さんが自サイトに公式に掲載したら、私のテキストは消します。
ボランティアではありますが、ボッタクられすぎの気もするので、「はてなポイント」による投げ銭は歓迎します。
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だいたい一人10〜20ポイントぐらいを希望。
パンフレット代+買いに行ったときの交通費を引いた全額は、町山智浩さん(id:TomoMachiさん)にお支払いします。はてなポイントとして)
以上のことをご了承ください。
では。

彼でなければダメだった----テリー・ジョージ監督の賭けに見事に応えたドン・チードル
 
ドン・チードルでなきゃダメなんだ」
テリー・ジョージ監督はそう訴えた。『ホテル・ルワンダ』への出資を検討したハリウッドのメジャーな映画会社は、主演をデンゼル・ワシントンかウィル・スミス、またはウェズリー・スナイプスのようなスーパー・スターに演じさせたがった。もちろん客を呼ぶためだ。しかしジョージ監督はこれまで主演映画が一本もないドン・チードルにこだわった。
「シナリオの時点でドンを想定していた」監督は言う。「『青いドレスの女』からずっと彼に注目してきたんだよ」『青いドレスの女』(95年)のドン・チードルは、謎の美女を追う主人公デンゼル・ワシントンの弟分。テキサスから来たガンマンで、バカでっかい銃をやたらめったら撃ちまくり、酔っ払うと仲間のデンゼルですら撃とうとするので敵よりも始末に悪い狂犬のようなキャラクターで強烈な印象を残した。
「ドンはカメレオンだ」ジョージ監督は言う。「役柄に完全に一体化してしまうんだ」
次にチードルが『ブギーナイツ』(97年)で演じたのは気の弱いオタク。カントリー&ウェスタン好きのオーディオ・マニアだ。カントリー&ウェスタンはアメリカの演歌で、聴いているのは右翼的な白人ばかりだし、ましてや音質にこだわる奴なんかいないのだが。オーディオにこだわりすぎて電器屋をクビになったチードルはポルノ映画俳優になるが、銀行で「ポルノに出てるような人にお金は貸せません」と言われてショボンとする。その情けない顔は忘れられない。
「チードルの演じてきた役を並べるとどれもあまりに違うので驚くよ」とジョージ監督は言う。『アウト・オブ・サイト』ではまたしてもすぐに暴れる強盗で怖がらせたかと思うと、『ラッシュ・アワー2』ではクンフーにかぶれたソウル中華料理(どんなんだ?)レストランの店主役で笑わせた。
でもチードルがその本領を発揮する役は、どこにでもいそうな真面目で平凡な男だろう。『トラフィック』のチードルは麻薬捜査官だったが、犯人をガンガン撃ち殺す刑事アクションではなくて現実的な映画なので、チードルがせっかく麻薬組織のボスを逮捕しても裁判で無罪になってしまう。相棒(ルイス・ガスマン)も殺され、やっぱり正義は勝てないのが現実化……と観客があきらめた後、最後の最後にチードルが敵の盗聴に成功する。僕らと同じ非力な男に見えるからこそ、彼の一発逆転に客席から思わず拍手が沸き起こった。
テリー・ジョージカントクは、そんな平凡なチードルが『ホテル・ルワンダ』に欲しかったのだ。もし、デンゼル・ワシントンだったら頼りがいがありすぎて、彼が画面に出てくるだけで観客は安心してしまう。ウィル・スミスだったらどんな苦しい状況でもギャグを飛ばし続けるだろうし、ウェズリー・スナイプスだったら最後にはクンフー民兵の二、三人やっつけてしまうかもしれない。彼らはヒーローだから、何の躊躇もせずに正義の戦いを始める。そのほうが確かに客は入るだろうが、映画館を出たらみんなルワンダの悲劇など忘れてしまうだろう。
実は、モデルとなったポール・ルセサバギナ氏はどちらかといえばヒーロー・タイプだった。体格はたくましく、政府の要人や軍人と互角につきあうほど押し出しは強い。一流大学を出て、ヨーロッパで教育を受け、ケニヤルワンダ語、フランス語、英語を操るインテリ。バリバリのエリート。常に服装と態度を乱すことのない、並外れた強い意志の男である。しかし、テリー・ジョージ監督とドン・チードルは独自のポール像を作り上げた。
たとえば、死体の山と遭遇したポールがホテルに帰ってから、一人の部屋で思わず泣き崩れる。「あの場面はシナリオにもなかった。僕と監督で作り上げたんだ」インタビューでチードルは言っている。「ポールは百日間に小さな崩壊はいくつかあっただろうけど、こんな風に取り乱したことは一度もなかった」ポールは自分の感情に負けることが許されなかった。もし、そうしたら彼が支えている1200人を乗せた崖っぷちも崩壊してしまうから。「でも、テリーと僕は何週間も話し合って、ポールが誰も見ていない一瞬に密かに泣いたことにした。この物語を集約するような瞬間が必要だから」
ルワンダの虐殺は現実なので、ハリウッド映画のようにわかりやすい悪役はいない。戦って敵をやっつければOKというわけではない。チードル演じるポールの敵は自分の内側にある「自分だけ助かればいい」という弱さだ。ポールを観客に近い人物として描くことで、『ホテル・ルワンダ』は「彼だって戦えたのだからあなたにもできるはず」と、観客を励ますと共に、逃げ場をなくす厳しい映画になった。ポール・ルセサバギナ氏は『ホテル・ルワンダ』の米版DVD収録のコメントでこう問いかけている。
ルワンダと同じような状況になったとき、あなたは隣人を守れますか?」
日本でも関東大震災朝鮮人虐殺からまだ百年経っていないのだ。

もちろんこのテキスト(情報)は、「「当人(元テキストを書いた人間)に対して接点を持たない第三者」により、当人に確認を取らないまま伝えた」ものなので、正確なものではありません(その不正確さの部分は、「タイプミス」程度のものだとは思いますが。ていうか白地にオレンジのインクなので、猛烈読みにくかったよ)。できたらパンフレットで元テキストを確認してみてください。
で、俺の感想なんですが…すみません、やっぱり最後の一行は唐突すぎです。
町山さんにコテンパンにやられている嫌韓厨が、どんなにダメでバカでサイテーな奴でも、それには同意せざるを得ません。その一行を入れたいと考えた、町山さんの気持ちも理解した上でのことでもありますが。
やはり日本人に「ルワンダと同じような状況になった」というのは、想像力を喚起するには複雑な手続きが入りすぎてしまうんですね。
まず、日本は欧米の植民地になったことはなく(というか、戦後十数年を除くとどの国の支配下にもならず)、「植民地政策としての、外的に挿入された人種差別意識」というものが存在しない、という点が大きいでしょう。
あと、歴史的な体験として「まだ百年経っていない」というほどには、百年という時間は「まだ」というものではありません。「虐殺」の例としては適切かどうかは不明ですが、イデオロギーという妙な理由で殺し合いが起きた「連合赤軍事件」ぐらいが、「体験(直接的なものではありませんが)」として記憶に残る事件じゃないでしょうか。
つまり、「ルワンダと同じような状況」は、日本人にとっては「関東大震災朝鮮人虐殺」という事実よりは「デビルマン悪魔狩り」という虚構のほうが理解しやすいのでは、とすら思えるわけです。「虚構と同じ、あるいはそれ以上のことが起こったのはすごい」みたいな感じでしょうか。
もう少しいろいろ書くかも知れませんが、とりあえず映画を見てからのことになりそうです。
あと、いろいろ知りたいことがあるうちの一つに、「ポール・ルセサバギナ氏は本当に『ルワンダと同じような状況になったとき、あなたは隣人を守れますか?』と言ったのか」というのがあるんですが、これはDVDを見れば確認できるのかな。ネット上のテキストとしては存在しないので(誰か見つけてくれるとありがたいです)。
関連リンクとしてはまぁ、こんなところで。
Rusesabagina Rwanda - Google 検索
IGN: Interview: Don Cheadle and Paul Rusesabagina
RadioFree.com Interviews: Paul Rusesabagina, Hotel Rwanda
 
(追記)
こちらにも全文が掲載されたみたいです。
http://d.hatena.ne.jp/kemu-ri/20060304/1141410831
あちらのは正規版、こちらはブートレグ海賊版)ということになりますが、まぁ町山さんから何か言われたら考えます。