新聞の特殊指定廃止問題についてはもう少しくわしく話をしたいけど、アベちゃんこんな面白いこと言ってたのか

知らない間に、公正取引委員会で「新聞の特殊指定」に関しては、以下のようなものができてまして、
特殊指定の見直しについて 公正取引委員会
全部読むと頭パーになるくらい分量あるわけですが、まぁ「特殊指定」の見直し・廃止は新聞だけじゃなくていろいろある、ということで。
そもそも「特殊指定」とは何か、については、以下のところなど。
特殊指定見直しに関するQ&A 公正取引委員会

問1 特殊指定って,そもそも何のことですか?
答1   独占禁止法は,禁止行為の一つである「不公正な取引方法」の規制に際し,その具体的な内容は公正取引委員会が告示で指定するという法形式を採用しています。
もちろん,法律の中で,指定する上での要件が定められており,以下の2つを満たす場合に限られています。また,かかる法形式を採用したことについては,最高裁判所もこれを合憲とする判断を示しています(和光堂事件・昭和50.7.10最高裁判決)。
 ①第2条第9項で規定されている6つの行為のいずれかに該当する行為であること
 ②公正な競争を阻害するおそれがあるものであること
この,「不公正な取引方法」の指定には,2つあり,その1つが「特殊指定」と呼ばれているものです。正式には,「特定の事業分野における特定の取引方法」の指定ということになります。もう1つは「一般指定」と呼ばれる,すべての業種に適用される指定のことです。
上記の①及び②の要件のいずれかを満たさなくなると,法律により授権された範囲を超える違法な指定となってしまいます。したがって,公正取引委員会として必要と判断すれば,自由に指定できるものではなく,上記の法律の定める要件をクリアできるものでなければならない制度なのです。
公正取引委員会は,特に②の,公正な競争を阻害するおそれがあるものであることとの要件については,ある時点で公正な競争を阻害するおそれがあると判断された行為であっても,その後その要件に欠けることがあり得るので,変化する経済社会の中で不断の見直しが必要になると考えています。その中には,もはやそのような行為がその事業分野では見られなくなった場合や,問題となることに変わりがないとしても,特に「特殊指定」として規定しておく必要性はなくなった場合などが含まれます。

この公正取引委員会の主張と、各新聞社の主張を読み比べて判断をすればいいわけです。…と、ところが、各新聞社の「主張・反論」と思われるようなテキストが見あたらなかったのでした(記事としてあちこちにあることはありますが、まとまった主張ページが見当たらなかったのです)。
とりあえず「新聞協会」の奴だけ置いておきますね。これは2005年11月2日のものでしょうか。
新聞の特殊指定見直し表明に関する新聞協会の声明

本日、公正取引委員会は、新聞業をはじめとする「特定の不公正な取引方法」(特殊指定)の見直し作業に入る方針を発表した。
新聞は民主主義の基礎である国民の知る権利に応え、公正な情報を提供するとともに、活字を通じて日本文化を保持するという社会的・公共的使命を果たしている。
新聞業の特殊指定は、差別定価や定価割引などを禁止することにより、その流通システムを守り、維持するために定められたものである。新聞の再販制度と特殊指定は一対のものであり、特殊指定の見直しは、その内容によっては、再販制度を骨抜きにする。その結果、経営体力の劣る新聞販売店は撤退を強いられ、全国に張り巡らされた戸別配達網は崩壊へ向かう。しかしながら、多くの国民は毎日決められた時間に新聞が届けられること、誰もがどこでも同じ価格で、容易に入手できることを望んでいる。
本年7月に施行された文字・活字文化振興法は、「すべての国民が等しく文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備すること」を基本理念に掲げ、そのための施策の実施を国と地方公共団体に義務づけた。
特殊指定の見直しは、著作物再販の存続を決めた公取委自身の4年前の決定と矛盾するばかりか、文字・活字文化振興法にも背く。官民あげて活字文化の振興に取り組む法制度がつくられた矢先に、時代の要請に逆行するような動きには強く抗議せざるを得ない。われわれは、現行規定の維持を強く求める。

                              以   上

ネット・ジャーナリズムでの批判テキストは、こんな感じ。
池田信夫 blog:活字文化があぶない(2006年4月7日)

きのう新聞協会は、新聞の「特殊指定」をめぐって「活字文化があぶない!〜メディアの役割と責任」と題するシンポジウムを開いた。ところが、このシンポジウムには当の公取委はおろか、新聞協会の見解と違う意見の持ち主も出席していない。最初から特殊指定の見直し反対派だけを集めて、いったいどんな議論が行われたのだろうか。

ガ島通信 - 「特殊指定見直し」という大政翼賛会(2006年4月14日)

「多様な言論を守るため」と主張しながら、見直し賛成の意見がほとんど掲載しない新聞社。まるで大政翼賛会のようです。

今のところ、新聞各社の「特殊指定廃止反対」に同調している人は、ネットの中では見つからなかったのですが、もしそういうのご存知の人がいたら教えてください(匿名でブログやってる大手新聞記者の中には、ひょっとしたらいるかもしれませんね)。
で、この話をすると長くなりそうなので、今日は拾い読みをしたテキストの中から、この問題について国会で安倍晋三議員が言ったことだけ面白かったので引用しておきます。いや引用部分も長いといえば長いんですが。
第164回国会 参議院予算委員会(平成十八年三月二十四日(金曜日))質疑抜粋

□末松信介君 官房長官のお話のように、宅配制度は維持されるべきであると、私も全く同感でございます。
実は、私は思うんですけれども、公正取引委員会は販売の正常化を論じておられます、正常化を論じておられます。公取委と違う考え方の皆様方は、日本語の国語文化の堅持であるとか情報化の、共有化を同じ土俵で論じるから、結局議論がおかしい方向に行ってしまうと思うんですよね。特殊指定の見直しによる影響評価の切り口が実は違っていると思うんです、私は。かみ合うわけがないんですよね。
ところで、さきおととい、知り合いのある新聞販売店にその現状を伺いました。公取委員長が今おっしゃったような話がたくさんありました。民主主義社会の基本である、国民の知る権利を支えるのが新聞であります。しかし、販売競争は大変すさまじいものでありました。関西地域では、ある新聞社が入ってきたから一層激化したとおっしゃっておられました。四年間購読したら一年間無料と、これは二五%引きと一緒です。それで、一年間取ってくれたら一万円の商品券を差し上げると、二〇%引きと一緒なんです。冷蔵庫もくれるという話もあったそうなんですよ。新聞事業者もそれを承知しておるんですけれども、それは販売店が勝手にやったことだという話になってしまっているんですよね。
私は、こうした事実は改善されなければならないと思っておりますし、新聞協会もできるだけ改善するという、何かセンターをつくってやっているという話もあったんですけれども、こういったサービスではなくて、新聞は、記事の正確さや有意義な特集とか、社説の鋭さ、あるいは記事の見やすさ、カラー遣い、社会的公平性、そういう観点から購読されるべきであります。
物事には起承転結がありますから、始まりと終わりが大変大切だと思うんです。ですから、記事を書いてそれを読んでもらうという一連の流れにすべて新聞事業者は責任を負うべきだと私は思うんですけれども。
そこで、私、提言を申し上げたいことがあるんです。情報は、時間の経過とともにその価値が損なわれていきますね。しかるに、夜十時にコンビニに行っても朝刊が百三十円で平気で売られています。その時刻にはもう夕刊が出ているんです。昼の十二時になったらもうパソコンにはその新聞社の記事が、ホームページでもう記事が出されているんです。プリントアウトができる状態なんです。
ですから、そういう状態にもかかわらず新聞は百三十円で売られているわけなんですけれども、宅配制度は絶対維持すべきだと思うんですけれども、全体の売上げの一割程度である店売りの新聞については、時間の経過とともに値下げ若しくは値引きをしてもいいんじゃないかということを、私はそのように思っていま す。
それと、朝刊と夕刊の料金は昔からセットにされているんです。最近、共働きの家庭が多くて、夕刊を読む暇ないからという声が多いわけなんですね。契約は、もう夕刊は要らないと言いたいんですけれども、割引率が低いのでやっぱり取っておこうかということになっているという。
こうした国民生活にも非常に変化が起きていますんですけれども、こういう点について公取委員会がどのように考えておられるかということと、併せて内閣官房長官の感想をお願い申し上げます。
□政府特別補佐人(竹島一彦君) お答え申し上げます。
今先生が幾つかおっしゃった、言わば値引き、価格の多様化、これは従来、公正取引委員会も、幾ら再販といってもそんな硬直的なことではなくて、長期購読者に対する割引だとか、朝刊だけでいいという人に対する割引とか、口座振替をする人に対する割引とか、一括前払をする人に対する割引、そういうものがあっていいではないですかということを提案してまいっておりますが、そういう提案は受け入れられておりません。要するに、全国一律だれにでも同じ値段で売るんだと。
それで、おっしゃるように、その実態としては、特に近畿地方は有名でございますが、無代紙というのが横行して手を焼いておられると。しかし、この特殊指定があるからといって、これを取り締まってくれという話は一切ないと。こういう現状でございまして、筋も通らない特殊指定について実行もされていないということからして、おっしゃるような本来あるべき価格の多様化というものが阻害されている。
価格の多様化というのは、本来、発行本社が自分たちの価格政策がどうあるべきか、新聞離れが言われている中でどうやって購読者に、内容とともに価格も含めて魅力ある新聞を提供するかというのは、あちらがお考えになるべきことであると私どもは考えております。
国務大臣安倍晋三君) ただいま委員が御指摘になった前段の部分なんですが、例えば、いわゆる販売店は、実態としては、一か月間無料で 配るので取りあえず見てもらいたいとか、三年、四年購読するということをしていただければ一か月、二か月無料にするということを実態としてやっているのも間違いのない事実でありまして、私の秘書のところにもある新聞社が一か月間、二か月間ただで取ってもらいたいと、こういうことを言ってきたわけでありまして、私の秘書が取るわけのない新聞社が言ってきたわけでありまして、当然断ったそうであるわけでありますが。
また、いわゆる押し紙も禁止されているのに、いわゆる押し紙的な行為が横行しているのではないかと言う人もいるわけでありまして、実態としてはそういうところもしっかりとちゃんとこれ見ていく必要もあるんだろうと、こう思うわけでありまして、要は、先ほども申し上げたわけでありますが、これはいわゆる新聞業界を守るということではなくて、これはやはり国民の知る権利をきっちりと守っていく。これは東京にいようがあるいは過疎地にいようが離島にいようが、そうした、どういうことが今世の中で行われていると、そうしてそれに対してはどういう批判があり、どういう論評があるかということを知ることができるという社会をこれは維持をしていくということは、これ当然のことなんだろうと、このように思うわけでありまして、その観点からもしっかりとこれは検討を行って もらいたいと。国民の利益のこれは確保、向上を図っていくということから検討をしていただきたいと、このように思っているところであります。
また、先ほど末松委員が御指摘になられたような、そういう価格に、いわゆるコンビニ等で売っている、駅売りも含めて、そこについてはバリエーションをある程度付けてもいいのではないかということはもちろん、それは、当然そういうことも含めて検討をして、これは業界側も検討をしていくことではないだろうかと、こんなように思っております。
□末松信介君 販売の正常化につきましては、公取委員長、これは進めていくべきだと思うんですけれども、宅配制度の維持の長官答弁ありました。あるいは、反対する議員がおっしゃっている国語文化の維持であるとか情報の共有化という点、この点だけの観点、きちっと頭の中に入れて協会と話し合っていただきたいと。十分その点お願いを申し上げたいと思うんです。
押し紙行為についても、実際押し紙行為じゃないんですけれども、三千売っていたら、目標として三千五十どうでしょうかという言い方をするそうですよね。 やはり問題はあると。(発言する者あり)そうですか。もう一回答弁を求めた方がいいということで、理事の御指摘でございまして、委員長。

(太字その他は引用者=俺)
アベちゃん面白すぎです。
事実上値下げ販売をしているにもかかわらず「特殊指定」、つまり新聞の販売価格は全国一律である、というのは、これはもう大手新聞社の広告主を見て言っている主張にしか、ぼくには思えないわけですが。