『ゲド戦記』『時をかける少女』をめぐる2つの嘘
嘘、というよりは勘違いとか事実誤認の類でしょうが(要するに、歪曲・捏造じゃなくて誤報?)。
こんなのがあったので。
→イザ!:ネットで酷評「ゲド戦記」 なぜ、客入りは良好?-ITニュース
スタジオジブリの新作『ゲド戦記』が不評らしい。少なくともネット界隈(かいわい)では、辛口の批評が並ぶ。評判の悪かった前作『ハウルの動く城』を上回る酷評ぶりだ。
ネットでの評価は「賛否両論」。
ぼくの知っている限りでは、「感情的な否定意見は確かに目立つが、冷静で説得力のある肯定的な意見もそれなりにある」という感じです。
しょうがないので、「否定的ではない意見」を書いているところをいくつか挙げてみます。
→8/1(火) TBN
とにかく力を抜いて見たらわりといい映画なんじゃないでしょうか。
私個人としては、
「荒削りだけれど非常に誠意ある作り方をしている秀作」
だと思っています。
かつてのユーミンのアルバムと同様に、ジブリ作品は“時代の空気を映す鏡”というかバロメーター的なものだと個人的には思っているわけで、こういう作品になるっていうのは、今の時代がすごく不安定だってことですね。
それは、ある意味で「政治的」な姿勢だと思います。「政治」というのは、現代の政党政治とはかなり離れているけれど、姿勢を鮮明に表明し、それが「社会的」な「効果」を持つことに自覚的である、というぐらいの意味で、です。
ということで。
もう一つは、これ。
→時をかける少女 上映館拡大中(8/8)(animeanime news アニメ!アニメ!ニュース)
そうしたなかで『時をかける少女』の上映館数も拡大しつつある。6月13日の公開日決定の段階では劇場数は17館、その後順次拡大予定とされていた。
それが現在では、角川へラルドのウェッブサイトの劇場リストで33館の名前があがっている。公開前からおよそ2倍まで劇場数を増やしたことになる。
これまで1館しか上映館がないと不満の多かった東京地区も8月12日からテアトル池袋(レイトショー)、8月26日よりシネセゾン渋谷と都内3館体制に拡大される。
『時をかける少女』の上映館は拡大していません。
けっこう以下の記述に釣られてしまった人が多いみたいですが、
→時をかける少女: 速報!、都内で上映館が増えますよ!(公式ブログ)
これは、あくまでも都内で上映館が増える、というだけの話。
そのかわりに、千葉(千葉・幕張)と神奈川(平塚)での上映が終了しています。
→時をかける少女: 映画公開日が確定しました
要するに、千葉・神奈川の人間は、都心まで出向かないと見れなくなった、ということです。
あと、以下のところをご覧になるとお分かりのとおり、
→時をかける少女 オフィシャルサイト -上映劇場-
10月以降の上映予定館は12館。「9月以降」じゃないですよ、10月。
「山口県 MOVIX周南」なんて11月11日ですよ!
つまり、上映が終わったところのフィルムを、別の上映館に順番に回している、みたいな感じ。
じゃあ、何が拡大しているのか、というと、上映館ではなくて、上映予定館、です。
まとめると、
1・『ゲド戦記』のネットでの評判は賛否両論
2・『時をかける少女』の上映館は拡大していない(上映予定館は拡大している)
したがって、記事としてはこう書くのがいいか、と。
そうしたなかで『時をかける少女』の上映予定館数も拡大しつつある。
前者はともかく、後者はちょっと調べればわかるんじゃなかろうか、と。
あー…『ブレイブ ストーリー』は?
どうもどうやら、ほとんどの映画館で8月19日から『スーパーマン リターンズ』に切り替わるみたいです。
賛否両論でも、絶賛でもない、ほどほどによく出来た(と思われる)映画というのは埋没しちゃうんだなぁ。
(2006年8月17日記述)
(追記)
→資料:劇場アニメ「時をかける少女」上映館数の推移と今後の見込み(76KB PDF)
↑これはすごい。
→劇場アニメ「時をかける少女」のフィルムは何本ある? 極私的マンガウォッチング「B館」/ウェブリブログ
察するに「時をかける少女」は最高に見積もっても14本しかフィルムがないようです。夏休み映画としては完全にミニシアター系の流通を意図していたことが見て取れます。今年の夏に観ることができた人は幸運だったかもしれません。
(2006年8月19日追記)