<NHK特番>番組改変、改めて検証記事掲載 朝日新聞(毎日新聞)

<NHK特番>番組改変、改めて検証記事掲載 朝日新聞毎日新聞) - 7月25日13時9分更新

旧日本軍の従軍慰安婦を扱ったNHKの特集番組をめぐり、政治家による圧力で内容が改変された疑いがあると今年1月に報道した朝日新聞は25日の朝刊に、番組改変の経緯などを改めて検証する記事を掲載した。再取材の結果「政治家の圧力による番組改変という構図がより明確になった」と強調した。一方で、政治家関与を指摘した一部の事実について「直接裏付ける新たな文書や証言は得られておらず、真相がどうだったのか、十分に迫り切れていない」と認めた。
記事は見開き2ページ。NHKや総務省自民党議員ら150人以上に取材したという。
1月の朝日の報道のうち特に(1)中川昭一経済産業相が、01年1月30日の番組放送前日にNHK幹部に会った(2)中川氏と安倍晋三自民党幹事長代理がNHK幹部を呼んだ――の2点はNHKと中川、安倍両氏が事実関係を否定していた。この点について横井正彦東京社会部長の「取材の総括」は、両氏と松尾武NHK元放送総局長の取材結果を基に「1月の取材で3人とも大筋で認めるか、それを前提に質問に答えている。当初の3人の証言は重いと今でも考えており、現時点で記事を訂正する必要はないと判断した」との見解を示した。新たな証言などが得られなかった点については「率直に認め、教訓としたい」と記した。
朝日記者が松尾氏を取材した際にテープに録音していたかどうかが焦点となっていたが、この点には言及しなかった。
朝日新聞は、社外の有識者による第三者機関「NHK報道」委員会を新たに設置し、審議してもらうことを明らかにした。委員は丹羽宇一郎伊藤忠商事会長ら4人で、28日から審議を始め、内容は紙面で紹介するという。【NHK問題取材班】
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NHKは25日午前、朝日新聞の検証記事を受けてコメントを発表した。「政治家からどのような圧力があり、番組がどう改変されたのかという記事の根幹部分を補強する新たな事実の提示はなかった」と指摘したうえで「『政治家の圧力による番組改変という構図がより明確になった』と主張しているのは、まったく事実の裏付けのないもので到底理解できない。さらに、真相に迫ることができなかったとしながら『記事を訂正する必要はない』としているのも理解できない」と批判した。
▽川上和久・明治学院大教授(コミュニケーション論)の話 取材記者が最初から「政治家の圧力があった」との結論ありきで取材し、記事を組み立てたのではないかと見ていた。検証記事では、政治圧力を示す新たな根拠はなく、歯切れが悪い印象だ。NHKの番組が変わっていった経緯はよく分かった。NHKと政治のかかわりを改めて問題提起した意味はある。第三者機関の委員会で審議し、さらに問題点が明らかになることを期待したい。
服部孝章・立教大教授(メディア法)の話 この問題では「言った」「言わない」の水掛け論になり、朝日新聞の報道の確からしさが問われる中で、記者がインタビューした際の録音テープは例外的に公開すべきだと思うが、検証記事はこれまでと同様、有無についてさえ言及していない。また、自民党議員ら150人以上に取材したというのであれば、その詳細な取材結果を掲載することで、本来問われるべき政治と放送との距離についての問題点も浮かび上がってきたと思うが、それがなかったのは残念だ。検証記事は、朝日の報道に疑問を持っている人をも納得するという場面転換に結びつく内容とは言えないのではないか。
■ことば(NHK番組改変報道) 従軍慰安婦制度を市民の手で裁く「女性国際戦犯法廷」を扱ったNHK特集番組(01年1月30日放送)について、朝日新聞は今年1月12日朝刊で「安倍晋三中川昭一両氏が放送前に『偏った内容だ』とNHK幹部に指摘し、NHKが内容を変えて放送した」などと報道した。翌13日には番組制作にかかわったNHKの長井暁デスク(当時)が「政治介入は日常化している」と記者会見で明らかにした。これに対し、NHKは報道と会見内容を否定する見解を発表するとともに、18項目の公開質問状を朝日に送るなど、両社は真っ向から対立している。
毎日新聞) - 7月25日13時9分更新