NHK番組改変問題4―NHKの見解 政治家の指示ない

NHK番組改変問題4―NHKの見解 政治家の指示ない朝日新聞2005年07月25日06時01分)

朝日新聞はNHKに対し、改めて取材を申し入れましたが、NHKは「報告紙面の内容を見た上でないと責任をもって答えられません」として応じていません。このため、NHKの記者会見や、女性国際戦犯法廷の主催者団体の一つが訴えた番組に関する訴訟で、NHK側が提出した今月20日付の準備書面や、関係者の陳述書から見解を紹介します。
NHKの原田豊彦放送総局長は今月20日の記者会見で、番組について「関係者が議論や試行錯誤を重ね、最後まで自らの判断で編集をした」と述べた。当時の会長だった海老沢氏も同月、取材に対して「政治的圧力を受けたわけではない。我々の編集権でやった」と話した。(以下、肩書と団体名は当時)

 ●論点に対する説明

放送前に安倍議員と面会した。中川議員に会ったのは放送後で、いずれも予算説明が目的で、呼ばれたわけではない。複数の政治家から番組の話は出たが、内容について具体的に指示されたことはない。安倍議員の「公平・公正に」との発言もNHKの方針と同一で圧力にはなりえない。
4分間の短縮は、検討を重ねた結果で異常ではなく、法廷を通して「戦時性暴力」を考えるという番組の根幹も変わっていない。政治的圧力との指摘があるが、政治家に面会したことや、試写に国会担当の野島担当局長が立ち会ったという外形的事実の断片を取り出して安易に結びつけるものにすぎない。

 ●編集の過程

伊東番組制作局長は01年1月25日、制作会社から編集作業を引き取ったことを松尾放送総局長に報告し、以降2人は直接、制作に関与した。
25〜26日には、古屋衆院議員らを担当者が訪れた際に「『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』の議員らが話題にしている」などと示唆された。野島担当局長は26日、番組内容を教えてほしいと松尾総局長に相談、同日夕の試写への同席を促された。試写で法廷を評価しない識者のコメントを入れることを提案したのは、松尾総局長と伊東局長だった。
野島担当局長は、29日に安倍議員に面会する際、「若手議員の会」事務局長だった同議員が番組を話題にすると考え、松尾総局長を同行させた。別の議員に会った後、官邸に安倍議員を訪ね、予算資料を渡し、松尾総局長は、うわさされるように4夜連続で法廷を素材とした番組を放送するわけではないなどと説明。議員は持論を語った。2人が局に戻った後の試写では、法廷で天皇の責任などに触れた判決部分の削除を伊東局長が提案。修正内容は野島担当局長が永田チーフプロデューサーに伝えた。
30日午後4時ごろ、伊東局長が海老沢会長と面会。会長から特に具体的指示はなかったが、松尾総局長に会長と会ったことを伝え、一緒に台本を読み直し、松尾総局長が吉岡教養番組部長にさらに削除するよう告げた。
2月2日、野島担当局長、伊東局長が中川議員を訪問した。

 ●関係者の主張

29日の試写後の検討会は、松尾総局長、伊東局長、吉岡部長が中心となって協議し、野島担当局長がリードした事実はない。「感想を述べたが、積極的な意見は控えていた。削除・変更が決まった部分について日本語になるようワーディング(言葉遣い)を提案した」(野島担当局長の陳述書)
この試写で伊東局長が「政治には勝てない」との趣旨の発言をしたと言われていることについては、「試写の冒頭、『今は時期が悪いわね』とは話したように思うが、予算期で経営陣は大変という意味で、政治に勝つとか負けるとかではない。松尾総局長が誰に会っているのかは知らなかった」(伊東局長の陳述書)。