関根放送総局長の見解(2005年1月13日)

関根放送総局長の見解(2005年1月13日)(←NHKオンラインより転載)

平成17年1月13日
NHK広報局

関根放送総局長の見解


平成13年1月30日に放送した「ETV2001 シリーズ戦争をどう裁くか 第2回 問われる戦時性暴力」をめぐって「放送直前に政治的圧力があり、放送の内容が変更された」という報道があり、きょう記者会見したこの番組の当時の担当デスクも記者会見で同様の趣旨を述べました。
NHKは、今回改めてこれについて調べた結果、報道にあるような自民党安倍晋三氏・中川昭一氏の両氏から政治的圧力を受けて番組の内容が変更された事実はありません。
中川氏とNHKの幹部が面会したのは、番組放送3日後の平成13年2月2日が最初で、中川氏と放送の前に面会したことはありません。
また、安倍氏については正確な記録は残っていませんが、関係者の記憶では、放送前日の1月29日頃に面会したとみられます。この面会は、安倍氏から呼ばれたものではなく、予算の説明を行う際にあわせて番組の趣旨や狙いなどを説明したものでした。
その時点ではすでに番組の編集作業は最終段階に入っており、多角的な意見を番組に反映させるために追加のインタビュー取材なども終わっていました。この面会によって番組の内容が変更したという事実はありません。
こうした追加のインタビュー取材などは、大詰めの編集作業の中で、当初の企画意図から離れた内容になる恐れがあったために、それを避け公平公正な内容に直す必要があるとして、安倍氏に面会するより数日前から進めていたものです。
放送に向けて何度も試行錯誤を重ねて編集をするのは通常行われていることであって、内容や構成に手を加えながら放送の直前まで検討を続けていくことは、まさに通常の「編集」であり「改変」ではありません。
当時の放送総局長や番組制作局長が、試写をして意見を述べたことは事実ですが、この番組のような議論の分かれる問題を放送する場合には、しばしばあることであり、公正で最善の内容をめざし、制作現場の最終責任者に対して意見を述べるのはむしろ当然のことです。
したがって、この番組は、最終的にNHKの責任で放送したものであり、政治的な圧力で「改変」が行われたという担当デスクの主張は間違いです。
また、担当デスクの記者会見で「この問題について総合企画室と番組制作局で報告書を作成し会長に報告した」という趣旨の発言がありましたが、そうした事実もありません。
この番組は「戦時性暴力」や「人道に対する罪」について考えることを企図した教養番組で、単に女性法廷を記録することを目的としたものではありませんでした。
放送した番組の内容については、去年3月24日の東京地方裁判所の判決でも「公平性や中立性といった多角的な立場から編集されており、放送局に保障された編集の自由の範囲内だ」と認定されています。
NHKは公共放送機関として、公平かつ公正の立場に立って、何人からも干渉されず、常に自らの責任と判断において企画し、編集することを基本としています。
今後も不偏不党の立場を守って、放送による言論の自由表現の自由を自ら確保していく考えです。