NHK裁判 安倍晋三氏宛公開質問状(2005年1月20日)
NHK裁判 安倍晋三氏宛公開質問状(←VAWW-NETジャパンより転載)
公開質問状(2005年1月20日)
自民党幹事長代理 安倍晋三様公開質問状
NHKの番組改変をめぐって、先週来、安倍氏ら政治家によるNHK番組内容への介入、政治圧力が大きな問題になっております。この問題が浮上して以来、安倍氏は数々のテレビ番組に登場され、発言を続けられていますが、発言内容について私たちは多くの疑問を抱き、矛盾を感じております。
その疑問にお答えいただきたく、以下、公開質問状という形をとって質問をいたします。<2001年1月29日のNHK幹部との面会に関して>
1、あなたは、2001年1月29日にNHKの幹部職員ならびにNHKの「私の知らない人」に会ったことを認めています。1月29日に会ったことについては「日程表を見たから間違いない」と話していますが、(1)何時から何時までの面会だったのか、(2)会ったのは何人で、(3)それが誰であったのか、(4)アポをとったNHKの職員とは誰だったのか、日程表や記録に基づき正確にお答えください。
2、1月29日に、NHK幹部の(1)「誰から」、(2)どのような「説明」がなされたのか、その内容をお答えください。
3、また、この日の面会は「私が呼び出したのではない。NHK側からやってきて、予算の説明の後で、番組について向こうから説明したのだ」と話していますが、なぜ、NHK幹部が安倍氏に番組放送前に「説明」しなければならなかったのでしょうか。「説明」するということは、事前に何らかのコンタクトがあったのではないのでしょうか? その日以前に何のコンタクトもなければ、わざわざNHKが「説明」に行く理由はありません。
このことは、あなたが1月29日以前にも番組の内容に関して何らかの「意見」をNHKに伝えていたことを窺わせます。この点について、真実を隠さず、明確にお答えください。
4、1月29日は、紛れもなく放送前です。放送前に番組の内容について、なぜ、あなたは知っていたのでしょうか。あなたは「当時、永田町で話題になっていた」と話していますが、「永田町」とは具体的に誰を指しているのでしょうか。
放送されてもいない番組の内容を知ることになったいきさつを、事実に沿って正確にお答えください。
<NHK番組への政治圧力に関して>
5、あなたは、1月29日にNHK幹部に対して、「公平・公正にやってくださいと言っただけ。圧力ではない」と話していますが、このことはその番組を「公平・公正ではない」と考えていたことになります。それでは、何が「公平・公正」ではなかったのでしょうか? その点を明確にお答えください。
6、あなたは中学歴史教科書の「慰安婦」に関する記述を問題だと考える「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(代表中川氏)の元事務局長をつとめ、「慰安婦」問題に対し否定的な立場をとっていました。しかも2001年1月当時に官房副長官という要職にありました。
そのあなたが放送直前にNHKの幹部らに接触し、特定の番組について「公平公正に」と「意見」を言ったこと自体が番組への「政治的な圧力」だと考えないのか、その点について、明確に見解を示してください。
7、日本政府の中枢にいたあなたが、番組放送直前にNHK幹部に言った「意見」を「圧力ではない」と思っていたとしても、通常はこのようなことを「政治家による圧力」だと言うのです。あなたが認識されている「圧力」とは何か、お答えください。
あなたに面会したNHK幹部は永田町から帰った後、制作現場に「業務命令」としてカットを命じました。その結果、番組放映直前に2回にわたって4分間、被害者の証言や3場面がカットされました。これは「政治家による介入」そのものではないでしょうか。
8、あなたは、1月29日の時点で、番組に秦郁彦氏のコメントが挿入されたこと、秦氏へのインタビュー撮影のアポが1月26日に取られたことなど、番組内容の詳細を知り、それをテレビで発言していますが、このことは「いつ、どこで、誰から、どのような経緯で知ったのか」お答えください。
9、あなたは、女性国際戦犯法廷と松井やよりさんについて、事実無根の数々を幾たびか話しています。例えば、「被告人弁護がない」「松井やよりさんが法廷のはじめに、会場を九段会館にしたのは悪の根源である皇居に一番近いから決めたと聞いている」などです。これらが事実無根であることは先に送った書面で指摘した通りですが、このような事実に基づかない情報を、「いつ、どこで、誰から」聞いたのでしょうか。また事実関係を確認しないまま、テレビという媒体を通して一般市民に誤解をばら撒いたことは、女性国際戦犯法廷や主催団体である国際実行委員会に対する重大な名誉毀損です。これについてどう考えますか。お答えください。
10、先にお送りした女性国際戦犯法廷をめぐる数々の事実歪曲について、私たちは訂正、謝罪を求めています。それについては「いつ」表明していただけますか。
あなたは、当時番組担当デスクだったNHKの長井暁さんに説明責任があると言っていますが、少なくとも1月29日の事実関係についての説明責任は安倍晋三氏にあります。上記10点につき、即刻、事実を隠蔽することなく、正確に明確にお答えいただきますよう、お願い致します。
私たちはこの問題は日本国憲法に保障された「表現の自由」「言論の自由」への重大な侵害であると考えています。このことは、ひいては国民の「知る権利」を脅かすものであり、日本の民主主義の根幹をも揺るがす重大な事件です。あなたが誠実に真実を国民、市民の前に明らかにされることを、強く願っています。
なお、以上の質問につきましては、1月25日までに回答をいただきますよう、お願い申し上げます。
2005年1月20日
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク
(VAWW-NETジャパン)