●緊急声明●政治家によるメディアへの圧力を許さない(出版流通対策協議会)(2005年1月24日)

●緊急声明●政治家によるメディアへの圧力を許さない(2005年1月24日)(←出版流通対策協議会より転載)

2005年1月24日

出版流通対策協議会   
会長 高須 次郎 

 1月12日、朝日新聞は、4年前のNHK「ETV2001 戦争をどう裁くか」の第2回「問われる戦時性暴力」に対して、安倍晋三(当時内閣官房副長官)・中川昭一自民党国会議員から圧力があったことを報じた。
 この日の報道以降、安倍氏側は次のように主張している。
① NHKを呼びつけてはいない。
② NHKの予算審議を控えていた時期にNHK側が説明に来たのでこの番組が「ひどい内容 になっていると側聞していたので公平公正にちゃんとやってくれ」と言った、圧力はかけて いない。
 これを政治的圧力と言わずに、なんと言うのだろうか。「公共放送」を標榜するNHKというメディアに、政府与党の政治家が権力を背景にして「ひどい内容」「公平公正に」と発言したこと自体が、番組への介入である。このあとNHKは放映前日に異例の局長試写をし、番組を再編集させているではないか。
 またNHKが強大な権力を握っている政府与党の政治家に、未放映の番組内容についての釈明をすること自体、報道機関としての自殺行為だとの誹りはまぬがれないだろう。財源を視聴料に頼る公共放送ならば、視聴者にこそ顔を向けるべきである。にもかかわらず、一部政治家と癒着し、報道への政治の介入を招くことはメディアとしての腐敗であり、まさに自殺行為である。
 今回の事態は、NHKの長井暁チーフプロデューサーの勇気ある内部告発によって明るみに出た。内部告発者である長井氏は決して不利益を被ってはならない。氏の立場は、報道の自由の名において守られるべきである。
 私たち出版流通対策協議会は、NHKのような巨大メディアではない。しかし出版という同じメディアの世界に携わる者として、NHKのこうした対応を看過できない。政治権力に対して自立した立場を持ち、誤った行為に対しては批判的な主張を掲げる姿勢を堅持するのが、メディアに携わる者の最低限の責務ではないか。そうすることなしに、出版の自由・報道の自由表現の自由は十全に機能するものではない。
 私たちは、NHKのこの間の対応に大きな怒りと危機感を持つ。私たちは政治権力のメディアへのいかなる介入も許してはならない。