今日の「天声人語」(朝日新聞)

↓2003年7月27日づけ
http://www.asahi.com/paper/column20030727.html


 まずはあり得ないことだが、小泉さんが、ある自衛隊員の家を訪れたとする。

 隊員の妻が尋ねる。「戦闘地域に行かされるんでしょうか」「いや、非戦闘地域に派遣するのですから、武力行使はしません」「では、どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域なのですか」「私に聞かれても、分かるわけがないでしょう」「お言葉ですが、それは変ですね。非戦闘地域がどこか分からないで、どこに派遣するんですか」。自衛隊の最高指揮官でもある総理はどう答えるのか。

 「殺されるかもしれないし、殺すかもしれない」も含めて、ここに引用した国会での答弁を、隊員や家族に、面と向かって言えるのだろうか。「分かるわけがない」という開き直りの後には、闘技場かと見まがうような採決もあった。

 真っ当な議会なら、これ以上議事を進めるべきかどうか悩むところだった。大勢の身の安全と、国のありようがかかっている。日本だけでなく、イラクの人々の未来にもかかわる。そもそも、戦争の大義そのものが大きく揺らいでいるのだ。

 集中豪雨に大地震。日本に特有の大きな災害が相次いでいる。速やかな救助と、復旧への手厚い救援が急務だ。九州では、自衛隊員が泥に漬かりながら捜索を続けた。宮城でも、出動している。大規模な災害での自衛隊は、やはり頼りになる。本当に必要とする人々のために力を尽くしたいと願うのが、人の情でもある。

 イラク特措法は成立したが、大きな疑問が幾つも残った。「私に聞けば分かる」と首相が言う日は、いつか来るのだろうか。

多分これが天声人語の人の元ネタ(記事)だと思うんですが、
↓「非戦闘地域、私に分かるわけない」 首相、党首討論で(朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/0724/001.html

 小泉首相は23日の党首討論で、民主党の菅代表の質問に対し、イラク復興支援特別措置法案に基づく自衛隊の派遣地域について「どこが(派遣可能な)非戦闘地域で、どこが戦闘地域なのか、いま私に聞かれたって分かるわけがない」と述べた。イラク国内の治安情勢が悪化するなか、派遣地域の見極めに苦慮する政府の本音を漏らした形だ。

 菅代表は「現地の米軍司令官が組織的なゲリラ戦が行われていると認めている。非戦闘地域憲法に反しないよう、自衛隊を派遣するためのフィクションだ」と指摘した。

 これに対し、首相は「非戦闘地域は存在していると思う」と答えたものの具体的な根拠は示さず、「非戦闘地域があるかないか状況を調査する」「今後よく状況を見極めないと分からない」などと繰り返した。菅氏は「すごい答弁。開き直りだ」と反発し、「調査したうえで、法律を決めてくれというのが本来のあり方だ」と主張した。

(07/24 00:20)

これの元ネタは以下のところ。
国家基本政策委員会合同審査会 第5号 平成15年7月23日(水曜日)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/008815620030723005.htm
党首討論とは言わない(言ってない)みたいですね。以下、菅直人氏とのやりとりを引用。

 結局は、この法律はつくったとしても、非戦闘地域が見つからないから自衛隊は出せないということになるのかもしれませんけれども、少なくとも、非戦闘地域が例えばどこなのか、一カ所でも言えるんであったら、総理、言ってみてください。
内閣総理大臣小泉純一郎君) それは、私はイラク国内のことを、よく地図がわかって、地名とかそういうものをよく把握しているわけではございません。今も、民間人も政府職員も、イラク国内で活動しているグループはたくさんあるわけですから、今でも非戦闘地域は存在していると思っています。
 しかし、菅さん言われたように、日本政府が非戦闘地域をつくるなんという、そんな考えは毛頭ありません。日本政府が非戦闘地域をつくることなんかできるわけないんですから。
 だから、今後この法案が成立すれば、よくイラク国内の情勢を見きわめて、そして非戦闘地域があるかないか、よく状況を調査して、そういう地域に自衛隊の活躍する分野があれば自衛隊を派遣することができるという法案なんですから、今後よく状況を見きわめなきゃ、それはわからないことです。
 また、どこが非戦闘地域でどこが戦闘地域かと今この私に聞かれたって、わかるわけないじゃないですか。これは国家の基本問題を調査する委員会ですから。それは、政府内の防衛庁長官なりその担当の責任者からよく状況を聞いて、最終的には政府として我々が判断することであります。
 はっきりお答えいたしますが、戦闘地域には自衛隊を派遣することはありません。
菅直人君 まあ、すごい答弁ですね。自衛隊を最終的にその戦地に送ろうという総理が、私が知るわけはないじゃないですかと言って開き直る。
従って、天声人語の人が想定した「ある自衛隊員の家」の人の質問には「それは、政府内の防衛庁長官なりその担当の責任者からよく状況を聞いて、最終的には政府として我々が判断することであります」というのが答として有効なんじゃないかと思うんですが…。
新聞の見出しとして、その中に出てくるキャラクターの一番印象的な(刺激的な)言葉を見出しにつける、という手法は、ジャーナリズムのセンセーション的な手法として否定はしませんが(政治家の疑似「失言」問題も、マスコミが煽ったりイメージ操作したりして作っている、というのは、「情報を売る」という手法としては、首肯できない部分もありますが事情はわかります)、見出しだけしか読まない人間の、ある種誤読に基づく意見提示は、マスコミ内部の人間がやっちゃいかんだろ、と思います。それが「誤読」なのか「故意の(読者に対する)誤誘導」なのか不明なのも、新聞の不信とそれを基盤にした別マス・メディアからの「叩き」の原因になっているのでは、と思います。
前にも言いましたが、国会の議事録に当たる、などということはインターネットをやっている人間なら小学生高学年でも可能な行為(元ソースに当たれる)なわけで、できたら「総理がこのような(ひどい)ことを言っている」と言いたい人は、その元ソースに当たれるだけのリンクを貼っておいていただきたいと思います。
しかし、いろいろネットで検索してみたんですが、「衆議院の議事録」という、オフィシャルにしてこれ以上のものはないだろうソースにリンクしているサイトは、各新聞社も含めて見当たりませんでした。
せめて時事問題を扱っている個人サイトぐらいは、更新が簡単なんだからそのぐらいのことをしてみてはいかがでしょうか。
今回の議事録を読んでのツッコミどころは、小泉総理の発言よりも、俺的には菅直人氏が、小泉総理の

 菅さんは、ないと断定できるのかどうか。そして、これほどアメリカを支持したこと、イギリスを支持したことを非難しておりますけれども、最も重要な同盟国であるアメリカを、野党第一党の党首が、これから私にかわって次の選挙で政権をとろうとしているんでしょう、アメリカとの同盟関係をどう考えているのか。
 しかも、ブッシュ政権を危険な政権だと断定している。フセイン政権が危険な政権だと断定するならわかる。それを、ブッシュ政権は危険な政権だと断定していながら、これから日米友好をどうやっていこうとしているのですか。(発言する者あり)
という問いに、あまり真正面から答えていないことでした。アメリカとの同盟関係をどう考えているのか、というのは民主党のサイトに行けば見られるんでしょうか。
あと、土井たか子氏の発言に、

○会長(瓦力君) 土井君に申し上げますが、持ち時間が来ておりますので、簡潔に願います。
という進行役の発言が入るところとか。
いい加減飽きてきたので、明日から新ネタやりたいと思います(やれたら)。