映画『愛国の花』

lovelovedog2003-08-25

「愛国」は「愛國」が正しいタイトルなんだけど、まぁ一応これで。木暮実千代が主演の戦前の国威・戦意発揚映画ですか。
主人公の戸倉綾子(木暮実千代)は、地主で元船長である戸倉文三(関操)の一人娘。兄は飛行機のテストパイロット中に事故で死亡したが、その友人で自動車の設計技師である守山徹夫(佐野周二)は、父の代からの二代続いての友人ということで、墓参りなど機会あるごとに戸倉の家を訪ねている。ここらへんにホモ・テイストを絡めるとやおい腐女子が喜びそうな展開ですが、それはさておき。徹夫に対してはそのため好意を持っていた綾子、その気持ちを察していた文三は、戦時中のご奉公として再び海に戻ることを決意すると同時に、綾子の夫に徹夫を、と思い、その話をするために綾子とともに上京して、徹夫とその家族に会いにいく。
ところがひと足違いで別の女性と結納を交わしてしまった徹夫。話に行った文三は、その夜はやけ酒を飲んで帰り、失意の綾子は、亡き兄の家に、心が癒されるまで留まることにする。
展開的にもう、昔の人はとにかくやたらいきなり人に会いに行くんだな、と思ったり(汽車の中から、特別に頼めば駅に電報のようなものが打てて、迎えを呼ぶことは可能だったみたいです。これも知らなかったな)。あと、風景がまるでインドか北朝鮮のような幻想的な美しさで、上野もワンシーン出て来るんですが、とても上野とは思えませんでした。
さて、綾子の義姉(戸倉春子)は女学校の先生をやっていて、その教え子が実は徹夫の婚約者。ここらへんが映画というかいかにも物語なんですが、その女性が徹夫に昔からの思っている人がいることを知って身を引こうかどうか、という相談を綾子の義姉に相談に行く。眠れない夜を過ごす綾子に、春子は「あなたが望むんでしたら、徹夫さんと一緒になれるのよ」と、一部始終を話す。
ああ、なんか切なくていい話だなぁ。というか、映画のパターン的なメロドラマ。
で、徹夫と婚約者のために思いを断ち切った綾子は、兄が亡くなった時からの希望だった看護婦(従軍看護婦)を目指し、その資格を得たあと(個人的には、看護婦学校での苦労や友情なんてのも少し入れてもいいかな、とは思いました)、戦地におもむく。そしてそこで、戦車隊の一員として眼を負傷し、病院送りになった徹夫と再会する。
この、自分の看護婦が戸倉綾子だと知らないで、それに気づくまで(綾子が自分の素性を明かすまで)がなかなかもったいぶっていて、これにももう何シーンかプラスしたい風情ですね。で、綾子は徹夫の家族のために手紙を代筆したり(もう子供がいたりします)、休暇で本土に戻った際には、その家族に会いに行って、励ましたりするわけです。まぁ、多分中国本土にあると思われる病院だとか、そこでの治療風景などは、戦争による傷病シーンを描いていても妙に牧歌的で、多分今リメイクするにしても、もっと過酷なものになるとは思いますが(だいたい、徹夫の負傷した眼もちゃんと治ることになってるし)、なかなかよくできた戦争に絡めたメロドラマではありました。
ということで、週に2本ぐらい、週末の休みにはこの手の古いビデオを見て紹介などしてみたいと思います。