佐藤春夫「秋刀魚の歌」について

だいぶ季節も秋めいて来まして、暑くても残暑のイメージになりました。高校野球も終わっちゃったし。俺のある種愛読してます「天声人語」の人も、秋刀魚(サンマ)の話を少ししてたし(2003年8月23日づけ。http://www.asahi.com/paper/column20030823.html


 東京に、ようやく真夏のような空が広がった。今月2日に「梅雨明けしたとみられる」と気象庁が発表したものの、梅雨時に似た空模様が続いていた。しのぎやすいといえばそうなのだが、忘れ物をしたような落ち着かない日々だった。

 夏が足踏みしているうちに、秋の便りが届き始めた。新サンマが入荷している。目下の漁場は北海道沖らしい。宮城の気仙沼港での初水揚げでは大型で脂の乗ったものが多かった。気候も世の出来事も、異変、異様が続く。サンマぐらいは「平年並み」にと願いたい。

 都心のスーパーをのぞくと、1匹200円ぐらいで、「大型」とうたう店では350円だった。パックのサンマを見る。青い背中から銀白色の腹にかけてのきらめきが、遠い北の海の青い波と白いしぶきを映しているかのようだ。きりりとして、すうっと伸びた姿に、白いトレーは短すぎる。口と尾の先っぽが、つかえて窮屈そうだった。

 「さんまが出るとあんまが引っ込む」といわれた、なじみ深い魚だが、広く食されるようになったのは江戸時代の半ば以降らしい。「安くて長きはさんまなり」といって売る魚屋が現れたあたりから庶民に広まったが、武士はほとんど食べなかったという(塚田國之『さかな物語』)。

 サンマといえば佐藤春夫の「秋刀魚の歌」だが、月遅れの盛夏を歓迎して、春夫の「夏の空を歌へる」を引く。「命あふれて力満つ/壮麗微妙(さうれいみめう)の夏の空/海より青くまた富(と)めり」(『日本詩人全集』新潮社)

 青く光り輝きながら泳ぐ、サンマの姿をも連想させる。

この、「夏の空を歌へる」の引用も適切かどうか調べてみたいとは思いますが、とりあえず佐藤春夫の「秋刀魚の歌」について。
これに関しては、末尾の「さんま、さんま/さんま苦いか塩っぱいか」という部分だけがよく知られていて、確かにサンマは苦かったりしょっぱかったりしますが、実は佐藤春夫がその時食べたサンマはまた特別の味がしたんですね。なぜまたどうして、ということは、ネットで検索して、元テキストや解釈を見てみてください。人生の哀愁というより、もっと生臭いものがあったりします。