小泉首相が正確には多分こう言っていただろうと思われるようなテキスト・子どもの権利条約

地方新聞だけど、南日本新聞から。
自衛隊イラク派遣 宮崎の高3生の請願書に対する首相発言、教育界に波紋(南日本新聞
http://www.373news.com/2000picup/2004/02/picup_20040205_1.htm


 自衛隊イラク派遣をめぐり教育界に波紋を広げた小泉純一郎首相の発言全文は次の通り。

 自衛隊は平和的貢献するんですよ。その辺も学校の先生もね、よく生徒さんに話さないとね。それはいい勉強になると思いますよ。世の中、善意の人間だけで成り立っているわけじゃないと。なぜ警察官が必要か、なぜ軍隊が必要か、各国ね。そういう点もよくイラクの事情を説明して、生徒さんになかなか国際政治は複雑だなという点を先生がね、もっと生徒に教えるべきですね。

自衛隊は平和的な貢献する」とか、細かな違いはあるみたいですが、これが多分一番近い「全文」じゃないかと思います。
個人的には、この記事に出てます教師の「野呂正和」さんに興味を持ちました。このようなことを述べている人です。

 高校教諭野呂正和さん(52)=姶良町=は「学校は憲法の理念に立って、平和に基づいた教育を行っている。自衛隊派遣は納得できないし、政府を擁護する意義を教える必要もない」と指摘。「国民を納得させる形で派遣すれば、署名活動も起こらなかったはず。首相の発言は意見をまとめ表現することを保障する『子どもの権利条約』を踏みにじるもの」と批判した。
野呂正和さんは、以下の日教組のイベントに参加している様子です。
↓「学校再生プラン」賛同人名簿
http://www.jtu-net.or.jp/kiji/00/10/18n1.htm
↓その「アピール文」はこちら
http://www.jtu-net.or.jp/kiji/00/10/4n10.htm
なんか、「子どもの権利条約」に詳しそうな人みだいです。
↓「子どもの権利条約」そのものは、以下のところで読めます
http://www.unicef.or.jp/kenri/jobun.htm
この人の言う、子どもの「意見をまとめ表現することを保障する」という箇所は、以下のところかなぁ、第13条。

第13条
1.児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
2.1の権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
a.他の者の権利又は信用の尊重
b.国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護
まぁ、そのあとにこのようなことも書かれておりますが。第14条。

第14条
1.締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する。
2.締約国は、児童が1の権利を行使するに当たり、父母及び場合により法定保護者が児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える権利及び義務を尊重する。
3.宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
いろいろな自由に対して、指示を与える権利も尊重されているみたいですが。
それより、一番問題なのは、第1条。

第1条
 この条約の適用上、児童とは、18歳未満のすべての者をいう。ただし、当該児童で、その者に適用される法律によりより早く成年に達したものを除く。
で、新聞の報道などによると、今村歩さんは18歳。俺の日記の2004年2月8日で紹介した新聞記事をご参考ください(http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20040208#p1)。18歳未満でもこの「子どもの権利条約」から除外される場合はあるみたいですが、18歳以上の人が何かをされた場合でも、「『子どもの権利条約』を踏みにじ」られた、とは言えないのでは。別の何かの権利を踏みにじられた可能性はありますが…。
どうも俺の私感では、この野呂正和さんは、実は『子どもの権利条約』にあまり詳しくない人なのか(その可能性は活動歴などをみるとあまり高くないと思いますが)、新聞の報道をちゃんと読んでない、あるいは新聞そのものを読んでいない人のような気がします。今の日本の法律を見ても、青少年の犯罪を加味して、「子ども」と「大人」の境目は、かなり下げていると思うので、18歳を「子ども」と言うのは、日本人の一般的な感覚から言っても厳しいと思います。
しんぶん赤旗」でも、「高校生の意見表明をふみにじることは子どもの権利条約違反です…そんな人が権力を行使する社会のほうがおかしいのです。」と言っていた二十代男性のかたが紹介されていましたが(俺の日記の以下のところ参照→http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20040210#p1)、この人は普通に「子どもの権利条約」にはあまり詳しくない人で問題はないと思います。
まぁ、そのような人たちの意見を、元の条約を読まずに掲載したように思える新聞記者のかたがたのほうが、問題としては大きいと思いますけどね…フッ(←福田官房長官風に)。