井上喜一氏の発言とその背景(書き忘れ)

↓これだけ書いて忘れてましたが
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20040605#p1
井上喜一さんは、イラク邦人人質事件でも「自己負担」発言をして、少しマスコミが問題にした(したがっていた)人みたいです。
↓人質救出経費4億円超か 3人や家族に負担求める声相次ぐ(スポーツ報知)
http://www.yomiuri.co.jp/hochi/news/apr/o20040416_30.htm


(前略)
 中川昭一経済産業相閣議後、3人から「イラクで活動を続けたい」との発言があったことについて、「どうぞご自由に。万が一の時は自己責任だ」と突き放した。井上喜一防災相も「全部が全部、国の負担にはならない。飛行機代、タクシー代はどうする。本来、個人が負担してよいものは本人負担だ」と述べた。
(後略)
ちなみに、公式にはこう言っていた様子です。
↓大臣記者会見要旨(2004年4月16日)
http://www5.cao.go.jp/inoue/2004/0416kaiken.html

(問)大臣自身は、費用負担の問題なんですけれども、精算に何十億かかったという話もありますけれども、実際どのように負担するか……

(答)さあ、こういうのはおそらく初めてでしょう。全部が全部国だというようなことにはならないのではないか、ある程度の負担は誠意だと私は思うんだけれども、その範囲ですよ。例えば、帰ってくるときの飛行機代はどうするのかとか、あるいはいろいろなところへ行くタクシー代をどうするのかとか、そういうのがありますよね。本来その個人が負担してもいいようなものは、本人負担ということになるんじゃないですか。
 結局、費用負担というのは責任との兼ね合いなんです。政府に責任がある場合は政府が負担するということになると思います。だから政府の方もどうするか、微妙な問題ですよね。簡単に負担がないとかあるとか単純には割り切れない、その経緯の性格あるいは責任の所在によって決まってくるし、また負担の能力というのもありましょう。山の場合は遭難がしばしばあるものだから、保険の制度もできているんでしょう。今回のような場合はそういう制度もないわけですから、一概に言うのは難しいですね。抽象的には私が言っているようなことだと思うんだけれども、具体的にどういう費用だとなりますと、それこそケース・バイ・ケースでとなるんじゃないんでしょうか。
 それから、道が一般的な行政としてどこまで負担をするのか、どこを超えたら本人負担なのかというのは難しい。それは簡単には言えない。全くないともあるとも言えないし、どの程度あるのかも言えないしというところじゃないんでしょうか。皆さん方はどう思いますか。
 これは、常識が決めるんだろうと思います。支払い能力の問題もありますからね。

「元気」といえば、もう忘れているかたも多いと思いますが、俺の過去の日記ではこんな議員の「失言・問題発言」も。
↓集団レイプする人はまだ元気がある 自民・太田議員発言
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20030702#p2
福田官房長官は論評避ける 江藤氏発言
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20030715#p5

 自民党太田誠一衆院議員のレイプ関連発言や鴻池防災担当相の「市中引き回し」発言など、このところ相次ぐ国会議員の問題発言についても、福田長官は「私の方から評価するようなことを言う必要はない。(発言した)本人に聞くべきだ。国会議員の発言に(政府が)すべて責任を負わなければいけないかどうか。どう評価するかは国民が決めることだ」と語った。
細田官房長官と比べると、クールさが目立つ福田さんでした。
しかしここ一年ぐらいで、議員の発言の一部を切り取って歪曲・偏向報道する、というようなマスコミの世論誘導的な報道はめっきり少なくなりました。
で、井上喜一さんは「女」について、国会ではどのようなことを言っていたのかを、以下の検索システムを使って調べてみました。
↓国会議事録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/
↓平成13年02月08日・衆議院予算委員会

○井上(喜)委員 私は、将来の社会、少子化がずっと進行していった場合に、どういう大きな変化が日本の国や一般の社会に起こるのか、こういうことを質問いたしたのでありますけれども、その対応の方に多少重点を置かれてお答えになったと思うのでありますが、恐らく、私が今申し上げましたような見通しとそう大きく違わない御認識だろうと思うのです。それだけに、この少子化対策が大切だということだと思うんですね。
 確かに、人が減ってくれば後は外国から人を入れればいいじゃないか、こう言う人もおりますが、これに伴います社会的な摩擦でありますとか社会的なコストというのは、これはもうはかり知れないものがありまして、私は、やはり方針としては少子化対策にもっともっと力を入れて取り組まなくてはいけない、こんなふうに思うのです。
 そこで、私は、今までどういうことをやってきたかといいますと、大別して二つあると思うのです。一つが、今ちょっとお話しになりましたけれども、仕事と子育てを両立させる、こういう政策ですね。働く女性が多くなってきましたから、当然これは大事な柱であります。こういうのと、それからもう一つの柱は、経済的に支援をしていく、そういう柱が私はあったと思うんですね。
 仕事と子育ての両立といいますのは、例えば保育園の待機児童を解消していくとか、あるいは育児休業をとりやすくするとか、育児期間中に賃金の保障をある程度やっていくとか、あるいは育児休業後の職場復帰を容易にするとか、こういうことをずっとやってきておられまして、今回も多少そういうことについて、例えば勤務時間を弾力的にするとか、あるいは職場復帰を円滑化するような、そういう法律を出されるということをちょっと厚生労働大臣もお答えになっておりましたが、これはこういう程度のことじゃなしに、もっと抜本的にやらないといけないんですね。
 ここにありますのは、女性労働協会という、これは財団法人なんですが、仕事と育児を両立するために必要と思う対策というのを全体を一〇〇にして世論調査しているんですね。その中で、一番何を求めているかといいますと、子供のための看護休暇なんですね。だから、これは三歳児ぐらいまでの子供ですね。今、育児休暇というのは一歳までですから、三歳ぐらいまでの子供の看護の休暇を考えてほしいということです。これについては既にもう大企業の方から徐々に実施をしてきておりますが、まだまだ全体としてはわずかでございます。そのほかありますのは、減税措置等がございます。
 ですから、こういう看護休暇、これなんかについて、やはり取り上げていくべき時期にもう来ていると私は思うんですね。ですから、従来やっておった体系の政策、それを充実していくのはもちろんでありますが、新しくそういう看護休暇なんかを入れていくような、それについてぜひ取り組んでいただきたいと思うんですが、総理のお考えはいかがでございますか。
↓平成13年10月26日・衆議院厚生労働委員会

○井上(喜)委員 多少この育児休業の取得率も上がってくるだろう、それなりの手当てもしている、こういうお話だったと思うんでありますが、いずれにしましても、育児がきちっとできるということが大切かと思います。
 そこで、今日本は少子化が大変問題になっておりますが、この少子化の原因は何なんだ、それに対する対策は何だと、ずっとこれは議論をし続けてきておりますけれども、なかなか有効な対策というのがない現状だと思うんですね。確かに、保育所をつくるとか、あるいは児童手当を出すとか、あるいはファミリーサポートセンターみたいなものをつくっていくということであります。それはそれなりに効果がありましても、必ずしもこれは少子化と結びついているという状況じゃないと思うんですね。
 役所の人に聞きますと、どうして子供が少ないかといいますと、要するに晩婚化の傾向がずっと続いてきているということ、あるいは結婚をしない人がふえてきている、こういうことを言うわけですね。したがって、こういうことに対する直接効果のあります対策でなければ、いろいろなことをやりましても結局は大した効果はない。その対策はその対策なりに効果はあるけれども、どうもやはり少子化を解消していくようなことにはならないんじゃないかと思うんですね。
 昔は、全国的にそうだと思いますけれども、私どもの方では仲人を一生懸命やってくれる人がいたわけですね。本当に無償でやってくれた。ところが、最近はそういう人も少なくなってきて、仲人をやるような人は大体金もうけでやるわけですね。ですから、余りそういうところへ近寄らないというようなことにもなってきている、こんな状況なんですね。
 そういうことで、商工会議所なんかが中心になりまして、一年に一回ぐらい地域の未婚の男女をどこか旅行に連れていって、お互いに交流するような機会をつくるなんということをやっておりまして、これは結構効果を上げているようにも思うのでありますが、何か少子化対策というようなことで、やはり新しい考えのもとに、ある種の企画、政策というんですか、そういうことを考える時期に来ていると思うんですね。従来の手法ではもう限界があると私は思うのでありますが、この点について、厚生大臣どんなお考えですか。
↓平成15年02月27日・衆議院憲法調査会

○井上(喜)委員 まず、天皇制でありますが、現行憲法天皇についての規定というのは明治憲法と全く違うわけですね。明治憲法の場合は天皇が元首である、これはもう明らかになっておりますけれども、現行憲法の第一条というのは違う。しかも、この規定というのは大変よくできていると思うのでありまして、歴史的な天皇制、あるいは国民が天皇に持っております感情といいますか考えというようなものを集約して書いているような感じが私はいたします。恐らく、外国の受けとめ方も、この一条に書いてありますようなことで天皇というものを理解していると思うんですね。
 現行憲法では元首の規定がないわけでありまして、そういったことから、元首はだれなのか、天皇なのかあるいは内閣総理大臣なのかといったような議論があるわけでありますけれども、先ほども議論が出ておりましたが、私はやはり、元首という定義をはっきりさせないと、どうも議論が収れんをしていかないんじゃないかと思うんですね。そういうことで、元首なるものの定義といいますか考え方をもう少し掘り下げて議論をしていくべきじゃないのか、こんなふうに思います。
 それから、皇位の継承問題で女帝の話がありますけれども、この種のことというのは余り早過ぎてもいけないし遅過ぎてもいけないのでありまして、こういったところで議論されることはいいかと思うのでありますが、いま一つ私は国民の世論というのがよくわからないんですね。よくわからないといいますか、はっきりしてきていないと思うのでありまして、そういう世論の動向とともに、この憲法調査会で議論を深めていくべきじゃないかというふうに私は思います。今、右にするか左にするか、この議論は結論を出すのにはいささか早いんじゃないかな、こんな感じがいたします。
↓平成15年03月13日・憲法調査会基本的人権の保障に関する調査小委員会

○井上(喜)小委員 次に、藤井参考人にお伺いをいたします。
 男女共同参画社会ということ、もう随分長くこういったことが人口に膾炙をしてきたかなと思うんでありますが、最近、私はますますこの男女共同参画社会なるものがわからなくなってきております。いろいろな意見があるんですね。国会議員の中でも、参議院議員でありますけれども、かつてよくテレビに出ておられましたが、最近はどういうわけだかテレビに出ておられない人の御意見なんかは、要するに、この社会は男がおるのが悪いんだということで、男がいない社会が一番いいんだというようなことをその方はおっしゃる。
 あるいは、ジェンダーフリーというんですか、これは文部省の一部にあるようであります。どうも、男女の性を認めるといいますか、その差を認めるということは余りよくないんじゃないかということですね。一人の人間として同じように扱ったらいいということでありまして、例えばひな祭りあるいは端午の節句のこいのぼり、これはやはり性を意識しているからこんなものはやめた方がいいんだというような、これは七百万円ぐらいの金を使って全国の教育委員会とか小中学校にも配ったりしているわけでありますが、そういう考え方もある。
 あるいは、今の内閣は、私はよくわかりませんが、私の推測するところでは、男と女にしかできないことは別にしまして、出産なんかは男にはできないことでありますが、そのほかのことは一つの仕事を二分の一ずつやるのが男女共同参画社会だというふうな考え方でこの行政が進んでいるんじゃないかと私は思うんですね。
 私は、男女というのはやはりいろいろな意味で違うわけでありますから、その特性を補い合うとか、あるいは協力するとか、あるいは役割を受け持つというようなことは一向に構わないんじゃないかと思うんであります。そもそも男女共同参画社会の原点とはいかなるものなのか、これは短時間でまことに申しわけないんだけれども、お教えをいただきたいと思います。
↓平成15年06月06日・衆議院内閣委員会

○井上(喜)議員 山谷議員の前の質問で、胎児の意見を聞けというようなお話がありましたけれども、私は、お聞きしておりまして、やむなく中絶をするような場合にも、そういうような気持ちでもって中絶をするということでなければいけないんじゃないか、こういう趣旨と理解をいたしまして、それはそのとおりだろう、中絶については、やむなく中絶する場合もありますが、極めて慎重にすべきものだろう、こんなふうに思います。
 確かに、子供につきましては、女性の社会進出が多くなってまいりまして、どうしても保育所をつくらないといけないとか何かの手当てをつけないといけないとか、そういう大きな社会的な要請がありまして、そういうのにこたえるために保育所をどんどん増設していくとか、いろいろな手当てが出てくる、こういう背景になったと思うのでありますけれども、生まれてくる子供、あるいは育てる人の立場に立って考えますと、もう少し多様な対応があってしかるべきじゃないか、こういう考え方が最近出てきていると思うのであります。
 もう三年ぐらい前になりますか、一兆円ほど子供対策に使ったんですよね。もっと具体的に言いますと保育対策に使ったのでありますけれども、これも今考えてみますと、もう少し知恵を出して、今おっしゃるような、そういうことに使うべきじゃなかったのかと思うのですよね。あのときは保育所のいろいろな道具類を買うという、その補助に充てたわけなんですがね。確かに、今おっしゃるように、もう少しきめの細かい対応をしていく、そういうぐあいに、社会情勢あるいは労働の多様化というようなことからいっても可能なようになってきていると思うのでありまして、これから大いに参考にしていくべき考え方だ、こんなふうに考えている次第であります。
発言全部を見たわけではありませんが、少子化社会を憂えて、ジェンダーフリー思想には理解や共感が及ばない(ゆえに反感もある)、という、ある年代以上の男性としては平均的な(あるいは、議員ゆえに世間の同年代の男性としては微妙に遅れている)井上喜一さんという人物像が見えてきたような気がします。
そうすると「元気な女性が多くなってきたということですかな」と言った(ことに、朝日新聞の記事などではなっている)井上喜一さんの発言は、殺人事件の是非はともかく(殺人について肯定的な意見を公に述べる公人は多分いないと思います)、「元気な女性が多くなってきた」ことについても、アイロニカルな姿勢を持っている(「最近は男女の差がなくなってきた」ことを好ましいとは思っていない)というような、さらに保守的な考えかたが背後にあるような気がします。傷害・殺人事件のような凶悪犯罪は、女性の人にはあまりやって欲しくない、というような感じでしょうか。
↓なお、井上喜一さんが「本当は何て言ったのか」については、内閣府の「大臣記者会見要旨」というサイトがありまして
http://www.cao.go.jp/kaiken_youshi.html
↓そこの「井上大臣室」というところに掲載されると思います
http://www5.cao.go.jp/inoue/inoue_kaiken.html
そこで何かあったら、何かを見てまた何か言うかも知れませんです。
追記:
↓以下のサイトでは
http://loli.biz/
俺の上記のテキストに「この方の 失言・問題発言の多さには脱帽」というコメントつきでリンクを貼られましたが、そのコメントは俺の意図するところではありません。テキストの解釈は各人の自由であり、「脱帽」するもしないのもこれまた各人の自由ではありますが…。
俺が伝えたかったことは強いて言うなら「このかたの女性観」であり、それに対して特に肯定とか否定とかいう意識はありません。