私立探偵小説ってクラシックのピアノの運指みたいだなと思った

ということで、ジャネット・ドーソン『追憶のファイル』(創元推理文庫)を読みました。納得いかない部分は多々ありますが。一番の不満は、俺的に魅力的なキャラクターを十分に使いこなせていないように思えるところ。ハイスクールのクラスメートで、町に残って果物の卸をやっている人(事件にとても重要な関わり合いがある人物の友人で、少し腐女子が喜びそうなキャラクター)とか、主人公の前任者の初老探偵(退職した元刑事で、「俺が探偵になったってんで、孫は喜んでるけど、妻や娘にはあきれられてる」って言っている人)とか。特に後者のキャラクターは、主人公ピンチの時に何かしてくれてもいいんじゃないかと思うんですが。とはいえ、過去の事件の現在にかかわるからめ具合はなかなか達者です。
そう言えば、なかなか死体が出て来ないのも不満ですかね。出てくるのは最後の100ページになってからで、現在進行形の話の死体はトータルで2つしか出ない、というのも、ハードボイルド(私立探偵小説)としてはあまりよくないかも。ロス・マクなら最初の2章ぐらいでこの死体は出すようなものです。
しかし、ミステリーの感想は難しいな。犯人の母親が、どうしてあんな性格の人になったのか、その家族を見ていてもよく分からない(ひょっとしてその母親である人にまた因果関係があるのかな)とか、その夫(メイン登場人物の父親)は東部でどんな家庭環境で育ったのか、もう少し語って欲しいとか…こんな、話の基本部分をボカしたような書きぶりで、俺の日記を読んでいる人に何か伝わるでしょうか。多分昔『追憶のファイル』読んだことのある人でも、俺が数か月後この日記の記述を読み返した時でも、これじゃ何のことだか分からなくなってしまいそうだ。