『荒野の回廊 江戸期・水の技術者の光と影』

lovelovedog2004-12-07

『荒野の回廊 江戸期・水の技術者の光と影』(高崎哲郎、鹿島出版会)(→bk1)(→amazon)(→書籍データ

江戸時代に水路を造ったりあれこれした人の話が3つ載ってます。初期に利根川の治水とかやって、現在の水路にして江戸川を作った伊奈忠治(絶大な権力を持った代官だったらしいです)の、それはもう大変な苦労と、水戸藩に雇われて財政建て直しと運河を作った(結局は機能しなかった)松波勘十郎と、江戸末期の水争いから江連用水を作った名主三義人など。圧倒的に小説みたいで面白いのは水戸藩の話でしょうか。ダメな役人とその周辺が農民を破滅させていく過程とその末路が、著者の趣味なのか疑似時代小説的ノンフィクションとして読ませます。まぁ全体に時代小説っぽいというか、その原型みたいな作りではありますが。キャラの立たせ具合からの印象でしょうか。最初の、善人な人の苦労というのは、その意味では物語性に乏しいかも。司馬遼太郎ならうまくやれるだろうな、と思う、とても難しいフィクションです。