日中関係と議員について

こんな記事が新聞に載って、
曽慶紅国家副主席、日本国会議員訪中団と会見朝日新聞、じゃなくて人民日報2005年6月4日)

曽慶紅国家副主席は3日、北京・人民大会堂で、日中協会の野田毅会長を団長とする日本国会議員訪中団と会見した。
曽副主席は、中日関係が困難に直面している時に訪中して対話と意思疎通を図る野田氏を歓迎し、次のように述べた。
中国政府は対日友好政策を何ら変わることなく実行する。胡錦濤国家主席インドネシアジャカルタで提起した中日両国関係の健全で安定した発展を推進する5点の主張は、中国の歴代指導者が中日関係を固め、発展させてきた基本政策の主張を集中的に体現しているほか、中国の新しい中央指導グループの共通意志を反映している。
新世紀の中日関係を発展させるには、伝統を受け継ぎ、信念を固め、大局を守り、戦略的かつ長期的視点を堅持して両国関係をとらえることが必要だ。歴史の流れに順応し、両国人民の共通の願いに順応し、平和共存、世代を越えた友好、互恵協力、共同発展を堅持しなければならない。中日間の3つの政治文書の各条項の原則を厳格に従い、全面的に「歴史を鑑(かがみ)として未来へ向かう」の精神を貫徹し、歴史問題と台湾問題を正しく処理しなければならない。双方が共に適切な努力をすることで、胡主席の提起した5点の主張を実行し、両国関係が早期に再び健全で安定した発展の軌道に戻るよう積極的に推進することを望んでいる。

(太字は引用者=俺)
こんなことになったり、
「ドタキャンでなかった」 呉儀副首相帰国で野田氏共同通信2005年6月4日)

【北京3日共同】中国を訪問中の野田毅自治相(日中協会会長)は3日夜、中国の呉儀副首相が5月の訪日時に小泉純一郎首相との会談を中止し繰り上げ帰国したことについて「(中国が)土壇場でキャンセルしたわけではない。日中外交当局間では、前から分かっていたことだ」との見解を示した。
 野田氏によると、先月16日に小泉首相靖国神社参拝を継続する意向を表明した直後、中国政府が日本側に呉副首相の訪日日程繰り上げを打診。その後「騒ぎを大きくしないよう当局間で話し合った」(同氏)結果、23日の首相との会談以前の日程は予定通り消化することで折り合ったという。

こんな否定発言が出たり、
外相が野田氏発言を否定 中国副首相の帰国問題神戸新聞共同通信2005年6月6日)

町村信孝外相は6日の講演で、中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談をキャンセルし帰国した問題をめぐり、訪中した野田毅自治相(日中協会会長)が「日中外交当局間では前から分かっていたことだ」と指摘したことについて、「(当日の)朝9時すぎに初めて知ってびっくりした。事前に知っているはずがない」と全面否定した。
外相は野田氏の名前は挙げず「最近、自民党の議員が中国へ行った(際の発言)」としてこの問題に触れ、「不愉快な話だ。ああいう形で中国に無用にごまをする人がいるから日中関係がおかしくなる」「伝統的な日中友好派の人の行動は理解できない。どうしてあそこまでへりくだらないといけないのか」などと不快感を示した。

(太字は引用者=俺)
それに対してまた中国様がお怒りになったり、
:FLASH24:国際山梨日日新聞共同通信2005年6月8日)

【北京7日共同】中国外務省の劉建超副報道局長は7日の記者会見で、日本の政府開発援助(ODA)を引き合いに、中国の対日批判に反論した町村信孝外相の発言について「経済援助を理由に過去の歴史を抹殺することはできない」と、激しい言葉で批判した。
また「日本政府内には、でたらめで間違った歴史観を持っている高官がいる」と述べ、外相発言を容認しない考えを強調した。
町村外相は6日の外務省での会合で「(小泉純一郎首相が)靖国神社に行ったから日本は軍国主義だとか批判もあるが、とんでもない」と発言。日本政府がODAを通じて果たした役割に言及した上で、対日批判を強める中国などの姿勢をけん制した。

(太字は引用者=俺)
中国の関係者もいろいろ大変っぽいです。
まぁ、情報元は最初の奴を除くと全部共同通信なので、あちこちに火をつけている別の人がいるのかもしれませんが。
で、現状分析はこんな感じだったり。
靖国問題:中国が外交攻勢、小泉首相の孤立感深まる毎日新聞・2005年6月5日)

靖国神社参拝に固執する小泉純一郎首相に対して、日中関係悪化の懸念から与党内で「首相包囲網」が生まれつつある。首相との直接交渉では進展しないとみた中国が、自民党の有力者を次々と北京に迎え入れ、結果的に首相を「浮いた存在」にする作戦に出ていることが要因の一つ。靖国問題で首相をけん制しようという自民党内の反小泉勢力の思惑も重なり、首相を後押しする声は小さくなってきた。
小泉首相の負け戦みたいになってきた」。首相に近い自民党幹部の一人は3日、苦々しい表情で靖国問題をめぐる党内の状況を語った。確かに最近は参拝自粛論が目立ち、靖国問題で首相を全面擁護するのは安倍晋三幹事長代理ぐらいしか見当たらなくなった。
潮目の変化を印象づけたのが、河野洋平衆院議長が歴代首相5人を招いて靖国問題を議論した1日の会合だ。親中派河野氏宮沢喜一元首相が示し合わせたように会談をリードし「参拝自粛」の意見集約を図った。議長が首相に意見するという異例さに、中堅議員は「王毅駐日大使をはじめ、いろんな形で中国の働きかけがあったのではないか」と分析した。
中国は首相との緊張関係とは裏腹に、与党有力者に対する「招へい外交」を活発に展開している。5月に山崎拓首相補佐官武部勤自民党幹事長、冬柴鉄三公明党幹事長らを招いたほか、今月3日からは野田毅自治相が訪問中。8日からは橋本龍太郎元首相が訪中を予定している。
武部、冬柴両氏の訪中は国会日程でいったん中止になったものの、小泉首相が5月16日の衆院予算委員会で参拝継続に意欲を見せると、その翌日に中国側が「土日でもいい。胡錦濤国家主席が会うので来てほしい」と強く要請して実現した。
武部氏は首相の参拝を支持してきたが、帰国後は「胡主席の誠意を感じた。靖国問題について、(中国が)いろいろ言うことは内政干渉とは思わない」などと、中国への配慮を口にするようになった。
靖国包囲網を生むもう一つの要因は、郵政民営化問題などで首相の独走を阻もうとする反小泉勢力の思惑だ。
古賀誠元幹事長(日本遺族会会長)は2日の派閥総会で「立場のある人の発言には近隣諸国への気配り、思いやりが必要だ」とけん制。参拝支持者の亀井静香政調会長も「外交的配慮」には賛同し、中曽根康弘元首相は3日の講演で「参拝をやめるのも一つの立派な決断だ」と説いた。
必ずしも親中派ではない有力者が再考を促すことによって、参拝継続に意固地になっているのは首相だけという構図ができつつある。公明党幹部は「中国にあまり利用されてもいけないし、政局を混乱させようとする動きもあるから、発言するのは難しい」と語っている。【中西拓司】

毎日新聞 2005年6月5日 20時58分

こんな動きがあったり。
自民「親中派」、相次ぎ訪中へ 橋本元首相や野田氏朝日新聞2005年6月1日)

自民党橋本元首相野田毅衆院議員が6月に相次いで訪中する。いずれも「親中派」のベテラン議員で、中国側要人との会談などを通して、小泉首相靖国神社参拝問題などでこじれた日中関係打開の糸口を探る狙いがある。
日中協会会長の野田氏は3日から北京を訪問。唐家●(タン・チアシュワン)国務委員(前外相)と会談する予定で、曽慶紅(ツォン・チンホン)国家副主席との会談も調整している。野田氏は、「小泉首相靖国神社参拝について、どういう知恵があるか模索したい」と話している。
野田氏は5月31日、首相官邸小泉首相を訪ね、自民党内から出ているA級戦犯分祀(ぶんし)論について、「首相が分祀の是非を発言しないほうがいい。分祀は政治家ではなくて神社側が決めることだ」と語った。これに対し、首相は「自分は分祀のことは一言も言っていない。中国との関係は前向きにやっているつもりだ」と答えたという。
一方、橋本氏は8日から北京、上海などを訪れ、人民解放軍幹部と日中間の防衛協力などについて意見交換する。

●は「王」の右に「旋」

橋本さんは「うちの社長(首相)も言うことを聞かなくて申し訳ない」とか言いに行くんでしょうか。
立法府の長である人はこんなことをしたり、
河野議長が歴代首相と会談 靖国参拝「慎重に」で一致朝日新聞2005年6月1日)

河野洋平衆院議長は1日、議長公邸で海部、宮沢、村山、橋本、森の歴代首相5人と会談し、小泉首相靖国神社参拝などでこじれた日中関係について意見交換した。河野氏は、日中関係の悪化の原因の一つに首相の靖国参拝があるとの考えを表明。「首相の靖国参拝には慎重にも慎重を重ねるべきだ」との認識で一致した。立法府の長がこうした形で行政府の長の経験者を集め、現職首相の行動に注文をつけるのは極めて異例なことだ。
河野氏衆院議長としてではなく、外相経験者の一人として個人的に歴代首相に意見を聞いたとしている。ただ、河野氏は、この日出された意見を直接、小泉首相に伝える考えだ。
この日の会談で河野議長は、「昨今の日中、日韓関係の急速な悪化は看過できない。大きな原因の一つに、首相の靖国参拝がある」と述べ、関係改善を図るには、首相がこれ以上の靖国参拝を取りやめるべきだとの考えを示した。これに対し、橋本元首相が「こういう状況になって、一番寂しい思いをしているのは、靖国の英霊ではないか」と発言。その他の出席者からも「参拝しない方がいい」「こうした状況が長引くことはよくない」との意見が出された。
一方、小泉首相靖国神社参拝の自粛を求めている公明党の神崎代表は1日の記者会見で、「個人の信条はあると思うが、国益を考えると首相としては参拝を自粛すべきだ」と強調。首相が参拝を続けた場合は、「連立の基盤に悪い影響があると思う」と語った。
これに関連し、小泉首相は同日夜、「前から河野議長の考え方はよくわかっていますから。いいと思います。私も適切に判断します」などと首相官邸で記者団に答えた。

(太字は引用者=俺)
こんな要求をしたり。
河野衆院議長、小泉首相に靖国参拝自粛求める

河野洋平衆院議長は7日、国会内の自民党総裁室に小泉首相を訪ね、首相の靖国神社参拝について「こういう状況の中で、慎重の上にも慎重に考えるべきだ」と自粛を求めた。議長によると、首相は「よくわかった」と答えたという。また、同席した森前首相によると、首相は「胡錦涛(フー・チン・タオ)(中国国家)主席にも盧武鉉(ノ・ム・ヒョン)(韓国)大統領にも、自分の考えを何度も申し上げてきた。もちろん『わかった』ということではないが、理解を得られたと自分では思っている」と強調した。
会談後、首相は「(議長は)私の考えもよくわかってますからね」としたうえで、今後の参拝については「適切に判断するとしか、いまは言わないほうがいいと思います。こういうこと、あんまり聞かない方がいいんじゃないですか」と、記者団に官邸で語った。
この日の会談は、河野議長が1日に海部、宮沢、村山、橋本、森の歴代首相5人と靖国参拝問題などで意見交換した内容を首相に伝えるため、呼びかけた。
河野議長は、85年に中曽根首相(当時)が靖国神社公式参拝したが、中国などの反発で、翌年以降は取りやめたことを示し、「この20年間申し送りがあったわけではないが、中曽根さんの判断が歴代総理の判断になってきている。それをよく考えていただきたい」と首相に参拝中止を迫った。
立法府の長が行政府の長の行動に注文をつけるのは異例。河野議長は会談後、記者団に「議長が院を代表して何かを述べるということではない。非公式に、先輩総理の意見はこうだということをお伝えした。素直におわかりいただいた。その通りするかどうかは別の話でしょうから」と語った。

中国側の要請を小泉首相に伝えて、何とかして欲しいと思っている人たちが多いみたいな様子。
気になったのは、「海部、宮沢、村山、橋本、森の歴代首相5人」、それに河野洋平氏と中国との関係なんですが、中国政府と親しく、中国政府の考えを日本に伝えることに力を入れている団体は、どうやら以下の7つみたいです。
日中友好七団体が宋健会長歓迎レセプション(北京週報・1999年34号)

日本外務省と日中友好協会の招きに応じて、宋健会長を団長とする中日友好協会代表団一行十人が、七月十一日から十八日まで、日本を訪問した。同代表団は、福岡、広島、愛媛、香川の各県、市で視察、見学、交流を行った後、十四日の夕方、東京入りし、十六日、日中友好協会全国理事会に出席した。当日午後、協会全国本部、日本国際貿易促進協会、日本中国文化交流協会日中友好議員連盟、日中経済協会、日中協会、日中友好会館千代田区学士会館で、盛大な歓迎レセプションを共催し、元首相の中曽根康弘海部俊樹、村山冨士の各氏、社会民主党土井たか子党首、三木武夫元首相夫人三木睦子さんおよび各界の日中関係者約五百人が出席した。

この7つの団体の公式サイトなどを見て、どういう人たちがいるか調べればいいわけですが、
社団法人・日中友好協会 協会の案内(役員名簿)

名誉顧問 村山 富市 元内閣総理大臣
名誉顧問 野中広務 元自由民主党幹事長、元内閣官房長官

いきなりすごいものが出てきました。
ここの理事のかたたちは、どちらかというと現役の政界・財界からは引退あるいは半引退の、専従に近い人が多いようですが、問題は以下の団体でしょうか。
社団法人 日中協会/役員等

会長 野田毅 衆議院議員、元 自治大臣

この人は、この間中国に行った人ですね。
それ以外にも、理事・顧問には、

赤羽一嘉
海江田万里
小坂憲次
横光克彦
河野洋平
森田一

といったかたがたがいるようです。
他にも、日本を代表するような企業の現役社長などがいたりして壮観です。
まぁ、壮観度では以下のリストもなかなかです。
財団法人日中経済協会役員名簿(pdf)
これは財界中心なので、政治家はいないみたいですが…。
次に、これ。
日本国際貿易促進協会
機構・主な役員

会長 橋本龍太郎 衆議院議員、元総理大臣

あとは、これですか。
日中友好会館-役職員
これには、特記するようなことはありませんでした。まぁ、前衆議院議員林義郎さんが会長をやっているわけですが。
ということで、たとえば新聞記事の以下のテキストなどは、

河野洋平衆院議長は1日、議長公邸で海部、宮沢、村山、橋本、森の歴代首相5人と会談し、小泉首相靖国神社参拝などでこじれた日中関係について意見交換した。

以下のようにも直すことはできます。

日中協会顧問河野洋平氏は1日、衆議院議長公邸で日中友好協会名誉顧問村山富市氏、日本国際貿易促進協会会長橋本龍太郎氏に、親中派の元首相、海部、宮沢、森3人をまじえて会談し、小泉首相靖国神社参拝などでこじれた日中関係について意見交換した。

しかし、「日中友好七団体」の役員名簿などを見ていると、中国進出利権とか、ODA利権とか、小泉氏に影響・圧力をかけられそうな個人・団体(会社)などなど、いろいろ裏に秘められている構図を思ったり、次は誰が小泉氏に「靖国参拝はやめるように」みたいなことを言うか、興味津々です。
なお、他にも「日中友好議員連盟」もあるんですが、これは国会議員400人(!)が所属しているらしいうえ公式サイトが見当たらなかったのでちょっと言及が難しいです。
いちおう、町村外務大臣が今年の1月まで幹事長で、現在は高村正彦議員が会長(町村氏が副会長)みたいですが…。
日中友好議員連盟の訪中町村信孝オフィシャルホームページ)