おかしくてオナカイテー、な朝日新聞の「米国世論調査」

こんな記事が朝日新聞に掲載されたわけですが。
米国「アジアのパートナーは中国」が急増、「日本」は減

2005年08月27日11時14分
 
米国の有識者の間で、アジアの最も重要なパートナーを「日本」と考える人が大きく減り、「中国」とする人が急増している――。外務省が米国で実施した「対日世論調査」で、そんな傾向が明らかになった。同省は「国際社会での中国の台頭が影響している」(担当者)と分析している。
調査は同省が60年から実施しているもので、今回は今年2、3月に政府・議会・経済界・マスコミ関係者ら254人を対象に電話で実施した。
調査で「アジア地域の中で最も重要なパートナー」を挙げてもらったところ、「日本」と答えた人は全体の48%で17年連続1位を維持したが、前年比17ポイント減と減少幅は過去最大だった。一方、「中国」と答えた人は38%で、その増加幅は前年比14ポイント増と、やはり過去最大を記録した。日中両国の差は前年の41ポイントから10ポイントに急激に縮小した。
中国を選んだ理由では、大半が「経済成長の可能性」を挙げた。
一方、欧州やアジアの8カ国・地域について「米国と価値観を共有しているか」を質問したところ、日本は英国、ドイツに続いて3位となり、7位の中国を引き離した。日米関係を「極めて良好」か「良好」と答えた人の割合は83%と過去最高を記録。今後の日米関係も「良くなる」「変わらない」とする回答が全体の9割を超えた。
外務省は「米有識者の対日観に大きな変化はなく、日米関係の評価に変化はない」(担当者)と説明している。

今回は太字の部分がまるっきり嘘(少なくとも、真実の一部しか報道していない)というわけで。
外務省の「米国における対日世論調査」は、以下のところで見られるわけですが、
外務省: 米国における対日世論調査
外務省: 米国における対日世論調査(概要)
その「概要」にははっきりとこう書かれています。

1.結果概観
 今回の調査では、全体として良好な対日観、日米関係への評価が示され、ここ数年続いている傾向が維持された。対日信頼度は、有識者部門は過去最高となった昨年の91%とほぼ同じ水準の90%であったが、一般部門においてはここ10年の上昇傾向が続いて72%の回答者が日本を信頼できると述べ、過去最高の結果となった。また、一般、有識者の部の双方において、日米の相互理解度について肯定的に回答する割合が過去最高の結果となった。

さらにこんなのも。

3.調査概要
(1)実施時期:平成17年2月〜3月
(2)調査方法:
(イ)「一般の部」は、1,500名(18歳以上の男女)を対象に電話調査を実施。
(ロ)「有識者の部」は、学術、ビジネス、政府(行政府及び議会)、宗教、マスコミ及び労働関係の指導的立場にある人物254名を対象に電話調査を実施。

要するに「一般の部」でも「有識者の部」と同じ調査をやったわけで。
おまけに、その結果は「有識者」の部とまったく異なっています。
1・→「外務省: 米国における対日世論調査(概要)」←を見れば分かるとおり、アメリカの人は1970年代から一貫して40〜50%が日本を「米国にとりアジア地域の中での最も重要なパートナー」と考えています。
2・それに対して有識者は実は、1970年代から1990年ごろまで、「日本」と「中国」の両方を同じぐらい「最も重要なパートナー」と考えていました(グラフ的には拮抗していました)。ずるがしこいことに、朝日の紙面に掲載されたグラフは「1985年」以降しかないんですが、その前の10年は日中が競っていたのですね。
3・1990年ごろから「日本」を支持する「有識者」の率が異常に増え、一番高い時期には「79%」(1996年)に達しますが、「一般人」も同傾向の流れはあるとはいえ、最高は55%ぐらいです。
しかしなんでこうまで、ほとんど歪曲(1970〜80年代の「有識者」のデータを伏せる)や隠蔽(「一般人」の調査も併せておこなったことに言及しない)までして「日本はアメリカの重要なパートナーだと、アメリカの有識者の間では考えられていなくなっている」的なことを語りたいのか、朝日新聞の記事は本当に謎です。
有識者の間では、それは普通で、一般人の間では、それは嘘なわけですが。
この外務省の調査を、別の新聞はこのように記事にしています。
米国の対日信頼度が過去最高・外務省、世論調査日本経済新聞共同通信

外務省は25日、2005年2月から3月に実施した「米国における対日世論調査」結果を発表した。それによると「日本は信頼できる友邦」と回答した一般人は72%で、調査を始めた1960年以来最高となった。
有識者でも90%が日本を「信頼できる」と回答し、良好な対日観をうかがわせた。「アジア地域の中で最も重要なパートナー」を有識者に聞いたところ日本が48%でトップとなったが、昨年調査の65%からは低下。逆に2位の中国が昨年の24%から38%と評価が上昇していることが分かった。
ロシアについては01年3月に続き昨年9月に2回目、モンゴルでは同10―12月に初めての同種調査を実施。ロシアでは37%が日本を「好き」とする一方、前回と同じ48%が「北方四島はロシアに帰属」と回答した。モンゴルでは「最も好きな国」を日本と回答したのは33%で米国に次いで2位だった。〔共同〕 (20:09)