劣化ウランの影響で大きいキノコができるという都市伝説

こんなところから。
砂漠のマッシュルーム(きのこ キノコ 茸 木の子 - 曇・秋)

先日、チェルノブイリ原発事故があってから、周辺で、それまで普通に食べていたきのこにあたった例がある、と書きました。
もう少し詳しく知ろうと調べていたら、ちょっと違った暗い情報に行き当たりました。
砂漠のマッシュルーム、『カマ』」。写真家の森住卓さんという方のサイトのようで、カマというきのこの写真もついています。
もう一つ、「きのこは巨大に育ちます」という言葉がある記事。
どちらも、劣化ウラン弾の影響を受けたイラクについてのものです。「砂漠のマッシュルーム、『カマ』」から引用すると・・・

イラク劣化ウラン弾の取材を続けていて、バスラ教育病院のアル・アリ先生が 「このキノコには放射性物質が一番蓄積している」と言っていた。

森住さんの『イラク 湾岸戦争の子供たち』(高文研)という本に、キノコのことが書いてあるらしく、昨日、さっそく買ってきました。
この本には、きのこだけでなく、トマトも汚染されているとあります。写真集には、劣化ウランの被害と思われる人々が写されています。
早急に目を通しただけですが、すべてのキノコ好きの皆さんに、お勧めしたい本です。

その、アル・アリ先生の言葉。
イラク:裏切られた人々

キノコは巨大に育ちます。以前は美しかった川から採れる魚も食べられなくなりました。私の家の庭にあるブドウまでもが変異を起こして、食べられなくなってしまいました」。

なんか、劣化ウランの新しい使い道が見えて来そうなテキストですが、別に特にキノコにウランが蓄積される、ということは、調べた限りではないみたいです。あと、放射線を使って巨大なものを作ることも、都市伝説的に無理です(イグアナが放射能を浴びても身長50メートルにはなりません)。
キノコに蓄積される放射性物質は、セシウム137という奴限定。
食品中の放射能 (09-01-04-03)原子力百科事典 ATOMICA)

人工放射性物質の濃度も食品の種類および核種の種類により差がある。わが国で食料に供せられている主な食品中のSr−90とCs−137の測定例を 表4 に示す。この表から分かるように、Sr−90は野菜で高く、魚や肉で低い傾向ある。Cs−137についてはキノコで特に高い値が見られる。キノコは植物に比べセシウムを濃縮する性質があるためCs−137の濃度も高くなると考えられている。種々のキノコ中のCs−137の平均的な値とそれらを食べることによるCs−137の年間摂取量を 表5 に示す。我々がキノコを食べる量は米や野菜に比べそれほど多くないので、安全面から見て通常は問題にならないレベルである。このように食品からの放射性核種の摂取量を推定する時は食品中の濃度だけではなく一日の摂取量を考慮する必要がある。キノコ以外でCs−137の含有量が高いことが知られている食品にトナカイの肉がある。これは、トナカイの餌になる地衣類中にCs−137が蓄積されているためである。

放射性物質が蓄積される、ということは事実で、キノコに特定の放射性物質が特に蓄積される、ということも事実なのですが、「イラクのキノコにウラン(劣化ウラン)が特に蓄積されている」というのは嘘です。ウランに特定して、特にそれを蓄積する食品(農作物)はありません。
しかしまぁ、大量に劣化ウラン弾がばらまかれた畑とかで採れる農作物に関しては、キノコだろうとトマトだろうと、それなりに用心したほうがいいかも、とは思いますが、ガイガーカウンターを当てて検出できるような種類の放射線は出しませんし、ウランの経口摂取によって人体に害が出る量は「80グラム」なので(くわしいことは俺の以下のテキストを参照→http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20050703#p1)そんなに慎重になることもないかも知れないです。
イラクで採れる「カマ」というキノコが、その摂取量を超えてもかまわないと思えるほどおいしかったりすると難儀ですが。