「劣化ウラン弾で苦しむイラクの子どもたち」という誤った情報にだまされないために

こんなニュースから。
京都新聞 電子版:憲法を考えイラク戦争を知る 相楽九条の会が講演会

憲法改正の問題点を考え、イラク戦争の現実を知る講演会が21日、京都府木津町木津の東部交流会館であった。戦争で被害にあったイラクの子どもたちの様子が生々しい映像で紹介された。
相楽九条の会(石橋平和代表)が主催し、約50人が参加した。「自民党改憲草案の危うさ」をテーマに、弁護士の出口治男さんが最初に話し、「改正草案は国際協調の名のもとに自衛軍が海外に派遣されるようになっている。われわれの子どもや孫が戦争に行くことになる」と批判した。
イラクの子どもを救う会」代表で、ジャーナリストの西谷文和さんは、イラクで取材した、劣化ウラン弾の被害にあった幼い子どもや民家を銃撃する米軍兵、路上に倒れるイラク人の遺体などを映し出した。「多くの日本人はイラク戦争の実態を知らない。関心を持ってアンテナを広げないと、誤った情報にだまされてしまう」と訴えた。

ジャーナリストの西谷文和さんは、このようなことを言っている人みたいですが、
イラクのガン子供病院(縮小画像から拡大画像表示)

●「悪魔の兵器」劣化ウラン弾を糾弾する
バグダッドでがん治療のできる病院は2箇所しかない。その内の1箇所がバグダッド子ども病院。10年以上前の湾岸戦争、そして今回のイラク戦争で、アメリカは大量の劣化ウラン弾を使用した。その影響と思われる小児がん患者が、イラクでは大量に発生している。小児ガン専門病棟へ。ファティマちゃん(7歳)はリンパ腺がん末期で、お腹が異様にふくれ上がっている。持って半年か1年か。ヌールちゃん(10歳)は白血病。異様にやせこけ、その笑顔にはしわが寄り、老婆のようだ。車椅子に乗った少年がいる。ヤマーフ君(11歳)は1年前から白血病で、3週間前に歩けなくなった。抗がん剤の副作用で、脳をやられ下半身不随になったという。「薬が足りません、それも良質な薬が。日本製のいいのがあれば…」と担当のザリフ医師。この病棟には常時50人程度が入院していて、1週間に2〜3人亡くなっていくという。
アメリカは劣化ウラン弾を使用したことは認めている。しかしそれによってイラクの人々の間に急速にがん患者が増えていることについては認めていない。だからこの子どもたちに公的な援助はない。ザリフ医師によると、必要な抗がん剤などの薬を処方しようと思えば、日本円で毎月4万円くらいかかるという。失業している両親にとてもそんなお金はない。この子どもたちはただ死を待つだけなのか。昨年11月に出会ったムスタファ君(4歳)は右足付け根に野球ボール大の腫瘍ができていて、この3月に亡くなっていた。日本からの絵本を持ってきたのだが、彼の笑顔を見ることはできなかった。

バグダッドの人口に関してですが、
イラクのオンライン辞書・事典: バグダッド

現在ではバグダッドチグリス川の両岸に発達し人口はおよそ500万人。イラク国立博物館メソポタミア文明の宝庫です。

小児がんの日本での罹患率(発症率)は、こんな感じ。
メルクマニュアル家庭版, はじめに 283 章 小児癌

癌(がん)は子供ではまれな病気で、小児癌の発症率は年間5000人にわずか1人です。子供に最もよくみられる癌は白血病、リンパ腫、脳腫瘍(のうしゅよう)などですが、これらの癌は成人にも同様にみられ、診断と治療法は子供も成人も大体同じです。主に子供に発症する癌で比較的多くみられるのは、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫網膜芽細胞腫です。
成人の癌とは対照的に、小児癌はかなり治癒する傾向が高く、癌に罹患した子供の約75%が最低5年は生存します。にもかかわらず癌で死亡する子供は年間2000人以上です。

−報道資料− 平成16年10月1日現在推計人口(確定値)

0〜14歳人口は1773万4千人で,総人口に占める割合は13.9%となり,前年に比べ0.1ポイント低下している。

小児癌の発生率からすると、日本全国で3500人ぐらいが毎年かかって、2000人以上が亡くなっている、ということになりますか。少し死亡率が高すぎるような気もしますが、もう少し調べてみたいところ。
500万人の人口のバグダットの人口のうち、多分40%(200万人)は「子ども」なので(以下のグラフなどを参考のこと)
イラクの人口ピラミッド
バグダッドでの小児がん患者は普通に考えて毎年400人ぐらいでしょうか。病院の規模がどれくらいなのか、あるいはどのくらいの距離から来ているかは不明ですが、小児がん患者の数は「2つの病院で100人程度が入院」しているというのは、人口を考えると多くありません。
ただ、一週間に2〜3人亡くなられているということは、1年で150人。これは多いような気がします。
ゆえに、イラクの子どもたちに医療的な援助を考えることは必要ですが、その理由は「劣化ウラン弾が使われて、がん患者が増えているから」ではありません。罹患率は日本と同じか、やや少ない程度です。ただ、十分な治療を受けていない(受けられない)のが問題。
イラクの人々の間に急速にがん患者が増えている」ということはまったくない、ということは、俺の以下の日記を参照。
劣化ウラン弾に抗議している人は、一般的な「がん発生・死亡率」「奇形の割合」について知っているのかという疑問など
バスラの病院統計によると、日本はイラクよりガンのリスク高いです
早いとこ、以下のサイト(Wiki)の充実をはからなければ、と実感。
劣化ウラン弾Wiki