ネットの可能性を考えるのに「それ儲かるのか」と聞くのはとりあえずやめてみないか

以下のところを見て思ったことなので、少しだけ言ってみたり。
京都新聞電子版:明治期図書75%がネット公開 国立国会図書館 4日から大幅増に

国立国会図書館が所蔵する明治期の刊行物を電子化し、ネット上で紹介する「近代デジタルライブラリー」の閲覧可能図書数が4日から大幅に増える。同図書館が所蔵する明治期図書の約75%にあたる図書がネット公開されることになった。
同図書館は、場所や時間の制約を超えて多くの人に資料を見てもらうとともに、資料保存を目的に、2000年度から所蔵物の電子図書館事業を展開。02年10月には著作権処理、電子化を完了した図書約3万冊の公開を始めた。夏目漱石などの文学作品だけでなく、歴史書、軍事教練本、教科書、統計など明治時代の幅広い分野にわたる資料を公開している。
今回、約5万タイトル(約6万7000冊)を追加公開することで、約12万7000冊が閲覧できるようになった。追加公開資料には勝海舟の息子、梶梅太郎の妻、クララ・ホイットニーの日本初の西洋料理本とされる「手軽西洋料理」や「川上音二郎貞奴漫遊記」、「日本家屋構造続編」など興味深い資料も多い。追加公開とともにシステムを更新し、画像の回転・拡大などの機能を加えた。
明治期刊行図書のうち、著作権処理が完了していない一部は著作権処理などの後、随時公開する予定。今後は、大正期刊行図書9万冊についても本年度以降、提供準備を始める計画。問い合わせは同図書館関西館電子図書館課Tel:0774(98)1477。

約6万7000冊というととてつもなく多いですが、点数的には現在日本が1年で出している出版点数とほとんど同じです。「こんなにたくさんあったら、もう新刊なんて読まなくてもいいよなぁ」とは思いますが。
で、ここを見たり。
近代デジタルライブラリー | 国立国会図書館
読みたい本があったら、こちらからリストを見るのです。
分類で検索|近代デジタルライブラリー
黒岩涙香」で検索すると50件出て来まして、翻訳の『悪党紳士』は、冒頭こんな感じ。(漢字は新字にしました)

仏国(ふらんす)の俚諺(ことわざ)に「最も貴婦人に似たるは色を売る女なり」と云う言葉あり其意(そのこころ)は我国にて私寓子(じごく)と云える類の賤しき女が彼国にては最も奢りを極め最も貴人に愛せらるるに由ると聞く。今此に報ずる物語りは其の「最も貴婦人に似たり」と云わるる、汚らわしき社会より出たる事柄なり。去れど泥の中にも蓮の根あり汚らわしき所より出る者必ず汚れたるに非ず其次第は此話しを読終りて後に知る可し。

ちょっとやってみたけど、ものすごく大変だった。
で、俺がインターネットに求めるのはその、「近代デジタルライブラリー」みたいなサービスです
でもこういうのって、どう考えても(スキャンした画像のそれぞれの下に「Google AdSense」の広告を貼ったとしても)儲からない、つまりビジネスモデルとして有効でないんですよね。
実際に、IT企業やコンピュータ業界で利益を得ている人が、「文化遺産」を保存するとか、芸術家たちに資金援助をする、ということはあるわけで、古いところでは鉄鋼・石油で儲けた実業家が美術館や研究所を建てたり作ったりするとか、「富の蓄積」が文化の保護・育成の方向に、少しだけ目を向けるのは悪いことではないとは思いますが、ちょっと今の状況で、インターネットで富を蓄積している人のレベルを考えると「蓄積具合が足りない」、あるいは「どんなに頑張って蓄積してもそんなもの」になってしまいそうな、嫌な感じがあります。
近代デジタルライブラリー」のようなことが可能なのも、国が税金をそちら方面で使える、という、国家的な富があるわけで、こんなサービスをして儲けようと考える企業(IT企業)が出てくるかどうか。
で、ここから先は、もっと儲からないサービスになりそうなんですが、この「ライブラリー」の中から、面白い(今読んだら笑えるとか、考えさせられるとか)テキストの類を、誰か探してみませんか。その作業は、広義の「編集」ということになり、そういう「むちゃくちゃ(ノイズも含めた)量の多い情報」を整理し、特定読者を視野に置いた情報提供をする人、というのは広義の「編集者」になるわけです。
それを「儲かるようなシステム」にすると、ひょっとしたら「Web 2.0+」になるかもしれないですね。