書店で『デスノート』だけじゃなくていろいろなものが手に入らない本当の理由

こんなところから。
架空の線上 - 書店で『デスノート』が手に入らない理由

さて、現在『デスノート』は殆ど入荷しない状況にあります。この状況は、映画公開直前くらいから続いております。
当然、どの店舗でも不足しがちな状況になっていると思われます。そういう状況を改善するため、当然書店員は発注をかけています。
例えば、コンパクトな、バーコードをスキャン出来る返品・発注用の機械で。これは手軽に出来ますが、取次に握りつぶされたり、保留がかからなかったりという難点があります。よって、当然一覧注文書で、直接版元にも発注します。客注扱いでも発注します。取り敢えず、ありとあらゆる手段で、一冊でも多く確保すべく、発注を日々繰り返します。
スキャンして99冊を3セット、スキャンして客注で99冊、注文書で250冊ずつ……これを何度も繰り返しても、入荷ゼロ。注文に応じる形での配本は(たぶん)ほぼ無い状況。今の『デスノ』はこんな感じなのです。

日記というか落書きにちかいもの Ver.2 - 殺し合いの螺旋を脱出したい

それにしても、650冊づつ、全ての書店が発注したら、そりゃー受注システムも破綻するだろうと思う。注文品は、建前上は買切りなのに、すべて入荷したらどうするのだろう。
もちろん現状ではそんなことを考えるのは馬鹿なことかもしれない。実際はいくら余っても返品してしまえばいいのだから。だったら1冊でも多く発注して、レースに参加して、勝ち取るのが正しい道なのかもしれない。しかし、私はもうこんな殺し合い(版元、取次、書店の関係、あるいは書店同士)の螺旋にはうんざりだ。必要な数を発注し、過不足なく版元や取次が出庫、そして、必要とするお客さまの手元に届く。これが、理想だろう。もちろん、これはあまりに理想論過ぎるのはわかっている。資本主義でこの世の中が動いている以上、誰かが勝ち、誰かが負けるのは必然だ。だが、書店同士ならいざ知らず、書店と版元、取次が殺し合うのは、あまりにも馬鹿げている。

こういう「殺し合い」をやめさせるのはとても簡単で、販売委託制(売れ残ったら書店が出版社/取次*1に返品できる制度)をやめればいいんじゃないか、という話。
ただ、「注文した数が必ず納品されるかわりに、返品がきかないシステム」と、「ものすごく注文しても全然来ないんだけど、売れ残ったら返品できるシステム」のどちらを書店が選ぶかというと、現状では後者になっちゃわざるを得ないんじゃないかとも思います。
再販制度のせいで書店には、売れ残ったらダンピング販売する、という選択肢が存在しないから。再販制度というのは簡単に言うと「小売の値段を卸売が決めてもかまわない」という制度なのです)
じゃあ再販制度をやめて、委託販売もやめるとどうなるかというと、本の値段は「読者が欲しい時期」に手に入れようとすると、現在の多分2〜5割ぐらい高くなる。そのかわり、売れ残った本は、2〜3割あるいは半額でバーゲンになる。
本の流通における現在の問題は、
1・出版社/取次が「ここは頑張っている書店だから、一生懸命送ろう(発注に応えよう)」ということがわかるようなシステムに、今一歩なっていない(故に、頑張っている書店もいい加減な発注をする書店も同じように、その発注に出版社/取次が応えてくれない)。
2・書店員の給料が安すぎる(委託販売をやめて、本の値段を現在の2〜5割増しにして、その分書店員の給料をあげる。ただし売れ残ったら責任を取ってもらうというシステムをもっと真剣に考えたい)
3・読者のほうで「流行のもの」ばかり読まないような本の読みかたをするよう、「選択する」ことについての意識を変える。
で、ここ数年ぐらいの感じですが、
「1」については、それなりにPOSデータなどを集めて、出版社/取次は頑張っているような気がする
「2」については、悪化している(出版社の出す本の点数が増加しているので)
「3」については、さらに悪化している(やはり、出版社の出す本の点数が増加しているので。あと「流行」なものの消費のされかた・作られかたがどんどんヘンになってきているようなこともあるんだろうか)
こんなテキストも参考に。
人は選ぶものが多くなると選ばなくなるというのが昔からの俺の自論だ
とりあえず、読者は「欲しい時期」を考えずに本を読むようにすると、もう少し書店も楽に儲かりそうな気がします。
でも中途半端に昔の本(コミックス)って、逆に妙に手に入れにくかったりするのはなぜ。
 
関連テキスト。
Japan.internet.com Webマーケティング - Blog・SNS は「購入した商品について誰かに伝えるメディア」
アヌトパンナ・アニルッダ:墓標
 
(追記)
こういうご指摘があったので、
はてなブックマーク - 愛・蔵太の少し調べて書く日記 - 書店で『デスノート』だけじゃなくていろいろなものが手に入らない本当の理由

2006年08月30日 Hayashida あのね、何のためにトーハンとかニッパンとか大阪屋とかの「取次ぎ」が存在してるのかぐらい「少し調べて」書けよ。出版社が直接書店に卸してる(例外はあるが)わけじゃねえだろ。

元テキストの「出版社」部分を「出版社の出す本の点数が増加しているので」の箇所を除き「出版社/取次」に改め、「取次」に関する注を、初出の際に入れました。
あんまり関係ないけど、コメントを元エントリーに対する厳しいご意見に使いまくりのid:Hayashidaさんに少し萌え。
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建設的な厳しいご意見は、このかたに限らず歓迎いたします。どうもテキストにぬかりがあって申し訳ありません。
(2006年8月30日記述)
 

*1:取次というのは、出版社と書店の間で本をやりとりするための大きな「卸元」です。トーハン・日販が有名だけど、他にも大小たくさんあります