外国籍の子供が公立の学校に通うのは、「義務」とも「権利」とも関係ない

見出しは演出です。
これは以下の日記の続きです。
卒業式で韓国旗が掲揚された事例は「八尾市立竹渕(たこち)小学校」以外に存在するのか
 
こういう話もあるわけですが、
府教委交渉報告

在日外国籍生徒への「配慮」の問題について(口頭)
 
2700人の学国籍生徒が在籍している。平成10年3月に「指導指針」を改訂し、平成11年3月にも人権教育推進プランを作成してきた。さらに昨年度より、各学校において人権教育の年間プラン作成を要請している。在日外国人教育の推進にあたっては、日本人生徒に理解させるとともに、自らの民族的自覚を高める教育を重視している。研究指定校、モデル校を指定して研究にも努めている。さらに平成14年より実施される「総合的学習」の時間において、互いの信頼関係を強めながら指導を強化していきたい。
国旗・国歌については、すべての国の国旗・国歌を尊重することが重要である。平素より各学校を通じて、日常的な指導を行うよう指導している。卒業式や入学式については、厳粛な雰囲気の中で行われるよう指導している。2月9日の校長会においても、外国籍生徒の指導については各学校の人権教育を通して教育していくよう指導した。
 
ホットラインと府教委とのやりとり(抜粋)
 
(ホットライン)申入書に対し何も具体的に答えていない。具体的に答えて欲しい。外国籍生徒への「配慮」の問題については、昨年からの宿題ではないか。一年間どういう対応をしてきたのか。各学校で教育活動の成果の上に立って、太極旗や五星紅旗を掲揚したり他の形にすることも、各学校の判断に任せてもよいか。
(府教委)他の旗を掲揚することについて、私ども「掲揚してはいけない」などとは言っていない。指導要領に基づく限り、校長及び学校が具体的に判断することである。
(ホットライン)学校に意志に基づいてやるように言うべきではないのか。
(府教委)学習指導要領に基づいてやっていただくことで、私どもでとやかく言っていない。昨年万国旗を掲揚された学校(1校)にも、特段何も言っていない。

↑の記述は、「2002年(平成14年)2月」のことなので、外国籍生徒は「2700人」よりも多いと思います。
国旗・国歌問題についての歴史
↑これも、「1999年8月13日、国旗・国歌法施行。」までの記録。
日本での義務教育期間中の、外国籍の子供に関する扱いは、少し古いうえ、文部科学省ではなく外務省の以下のものしか見つかりませんでした。
外務省: 児童の権利条約(児童の権利に関する条約)
第1回報告(1996年5月)
A.教育(含む職業指導)(第28条)

(b)義務教育(初等教育及び前期中等教育
216.我が国では、満6歳から満15歳までの児童は、小学校及び中学校に就学することとされている。なお、我が国に在住する外国籍又は無国籍の児童には就学義務はないが希望すれば、同様の機会が与えられている。小学校は満6歳から満12歳までの児童に対し、心身の発達に応じて6年間の初等普通教育を施すことを目的としている。中学校は、満12歳から満15歳までの児童に対し、小学校における教育の基礎の上に心身の発達に応じて、3年間の中等教育を施すことを目的としている。

それに対する国連の「児童の権利に関する委員会」の意見はこんな感じ。
児童の権利に関する委員会 第18会期 条約第44条の下での締約国により提出された報告の審査 児童の権利に関する委員会の最終見解:日本

13.委員会は、差別の禁止(第2条)、児童の最善の利益(第3条)及び児童の意見の尊重(第12条)の一般原則が、とりわけアイヌの人々及び韓国・朝鮮人のような国民的、種族的少数者に属する児童、障害児、施設内の又は自由を奪われた児童及び嫡出でない子のように、特に弱者の範疇に属する児童の関連において、児童に関する立法政策及びプログラムに十分に取り入れられていないことを懸念する。委員会は、韓国・朝鮮出身の児童の高等教育施設への不平等なアクセス、及び、児童一般が、社会の全ての部分、特に学校制度において、参加する権利(第12条)を行使する際に経験する困難について特に懸念する。

35.委員会は、条約の一般原則、特に差別の禁止(第2条)、児童の最善の利益(第3条)及び児童の意見の尊重(第12条)の一般原則が、単に政策の議論及び意思決定の指針となるのみでなく、児童に影響を与えるいかなる法改正、司法的・行政的決定においてもまた、全ての事業及びプログラムの発展及び実施においても、適切に反映されることを確保するために一層の努力が払われなければならないとの見解である。特に、嫡出でない子に対して存在する差別を是正するために立法措置が導入されるべきである。委員会は、また、韓国・朝鮮及びアイヌの児童を含む少数者の児童の差別的取扱いが、何時、何処で起ころうと、十分に調査され排除されるように勧告する。更に、委員会は、男児及び女児の婚姻最低年齢を同一にするよう勧告する。

それに対する日本政府の「報告」はこんな感じ。
第2回 政府報告(2001年11月)

(外国人児童生徒等への教育)
255.我が国の場合、学校教育法に規定する「学校」で学ぶ外国人児童生徒は、基本的に日本人子弟と同様の教育が施されている。その際、外国人児童生徒の我が国の学校への実際の受入に当たっては、それぞれの出身国の言語や習慣等を踏まえ、学校に適応できるよう各学校で外国人児童生徒の能力・適性に合わせて、外国人児童生徒を一般の学級から個別に取り出して指導を行ったり、一般の学校では複数の教員が協力してティーティーチングで指導を行う等の工夫がなされているところである。また、政府としても、日本語指導教材や指導資料の作成・配布、外国人児童生徒を担当する教員の研修、外国人児童生徒の母語ができる者を学校へ協力者として派遣する事業及び外国人児童生徒を受け入れている学校への教員の加配を行っているほか、外国人児童生徒の受入の在り方等について調査研究するため、推進地域の指定を行っている。このほか、課外において、外国人児童生徒に対し、当該国の言葉や文化を学習する機会を提供することは差し支えないこととされており、実際にもいくつかの自治体において、そのような学習機会が提供されている。

ちょっとこの「参加する権利」については、うまいものが見当たりませんでした。
「児童の権利に関する条約」全文

第12条

1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。

2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

「自己の意見を表明する権利」と「参加する権利」とは少し違うような(原文を見ればいいんでしょうが、とりあえず)。
この「第2回 政府報告」のどこを見ても「○○の権利がある」とか「保障する」という表現は見当たらないので(「義務」に至ってはなおさら)、もう少し調べてみないとはっきりしたことはいえないのですが、「第1回報告」を見る限りでは、外国籍の子供が義務教育を受けるのは「(親の)義務」でも「(親・子供の)権利」でもなく、単に「機会が与えられている(希望するなら認めないわけではない)」という解釈以上のものではありませんでした。
いろいろ調べてみたら、総務省のところにこのようなものがあったので、
外国人児童生徒等の教育に関する行政評価・監視結果に基づく通知― 公立の義務教育諸学校への受入れ推進を中心として ―(2003年8月)

1  就学の案内等の徹底
 我が国に在留する外国人は、近年増加傾向にあり、平成13年末で約178万人となっている。

これをもう少していねいに読めばいいのかもしれません。

その後、我が国は、昭和54年に経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和54年条約第6号。以下「社会権規約」という。)を批准し、同規約第13条第1項及び第2項に基づき、我が国に在留する学齢相当の外国人子女の保護者が当該子女の公立の義務教育諸学校への入学を希望する場合には、日本人子女と同様に無償の教育が受けられる機会を保障することが義務付けられた。これに伴い、日本に居住するすべての外国人子女について、昭和40年事務次官通達に定めるものと同様の取扱いがなされることとなった。

ここでは「保障」「義務」という言葉が、「無償の教育」と関連する形ではありますが使われているので、単純に外国籍の子供には「教育の機会が与えられている」以外の、もっとはっきりした「権利がある」「義務がある」的なテキストも、探せばありそうな気がします。
話の流れから言うと、「日の丸・君が代」をメインにした日本の卒業式に、外国籍の子供は、「参加する機会が与えられている(参加することを排除できない)」とは思うんですが、そこから先はどうなんだろうな。まぁ、日本全国どの小中学校の校長も、文部科学省にはっきり判断してもらいたいと思ってるんじゃないでしょうか。