日本のクズ(kudzu)は世界一

lovelovedog2006-12-09

クズと言っても人間ではなく植物のクズ(葛)なわけですが。
こんなニュースから。
タンザニア大使が抗議!「ダーウィンの悪夢」アフリカのイメージ壊す

今年の米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた仏豪合作映画「ダーウィンの悪夢」(フーベルト・ザウパー監督)の23日公開をめぐって、タンザニア連合共和国特命全権大使が抗議していることが5日、分かった。同作はアフリカ最大の湖・ビクトリア湖に、巨大な肉食魚が放たれたことから、地域経済が潤う一方で貧困、売春、エイズ、湖の環境悪化などの惨劇が連鎖する姿を描いたもの。大使は配給会社を訪れ、公開はアフリカのイメージダウンになると訴えている。
駐日タンザニア大使が問題作の日本公開にかみついた。過去、国や企業がイメージを傷つけるとして映画に批判声明を出したケースはあるが、政府高官が日本の配給会社を訪れ、直接抗議するのは極めて異例だ。
同映画は「ダーウィンの箱庭」と言われたビクトリア湖をめぐるドキュメント。半世紀前に、ナイルパーチという大型の肉食魚が放たれ、繁殖。湖畔の町はこの魚を加工、輸出する一大産業に発展。その一方、新しい経済が生み出した貧困、売春、エイズストリートチルドレン、ドラッグ、湖の環境悪化など悪夢の連鎖が起こっていく…。
映画は04年にベネチア国際映画祭でワールドプレミアされ、欧州の映画祭を中心に数々の賞を受賞。今年のオスカーの有力候補になった。
ナイルパーチは欧州でも人気で、日本にも切り身が年間約3000トン輸入されている白身魚。欧州では、映画の影響でナイルパーチのボイコット運動が起こり、タンザニア大統領が映画に批判声明も出している。
関係者によれば、E・E・E・ムタンゴ大使は先月28日、配給会社のビターズ・エンドを訪れ、同社の定井勇二社長と面談。大使は「公開を差し止めることができないのは分かるが、見解を理解してほしい」と主張。「映画はうわさを事実に見せかけたもの。魚貿易は重要で成功しているビジネス。それがなければ、医薬品などが買えなくなってしまう。欧州では収益が減り、非常に困っている。日本の映画会社にはアフリカのよい面をもっと見せてほしい」などと訴えた。
定井社長は「この映画はアフリカの悪いイメージを流布するための作品ではなく、グローバリゼーション(地球規模化)の問題点を描いたもの」と説明した。世界を動かしたドキュメンタリーは日本で、さらなる論議を呼びそうだ。
タンザニア連合共和国 インド洋に面してケニアウガンダなどと国境を接する中央アフリカ東部の国。61年にイギリスから独立し64年にザンジバル島と合併。国土は日本の2・5倍で、人口は約3400万人。アフリカ最高峰のキリマンジャロ(5895メートル)とビクトリア湖を有する。陸上中・長距離に逸材が多く、アフリカ人マラソンランナーとして初めて2時間10分の壁を破ったジュマ・ラマダン・イカンガーは日本でも有名。
(スポーツ報知) - 12月6日11時33分更新

なんか面白そうな映画なので見に行きたいと思いました。
ダーウィンの悪夢(公式サイト)
2006年12月23日より、東京シネマライズほかで公開されるみたいです。
この「ナイルパーチ」に興味を持ったので、少し調べてみました。
ビクトリア湖の悲劇、ナイルパーチ

英国植民地時代の1954年、湖に生息する淡水魚の乱獲によって漁獲量が激減したため、窮余の策としてナイルパーチという外来魚が放流された。この魚は、体長2m、重さ100キロ、捕獲された最大は何と400キロという巨大な肉食魚である。スズキに似ていることから日本には「スズキ(ナイルパーチ)」として輸入されている。この魚が、日本のファミリーレストランフライをにぎわし、学校給食や弁当の材料に使われていることは余り知られていない。

白身魚のフライ」とかになったりしているのかな。

ビクトリア湖では、ナイルパーチの移入によって、一時、漁獲量は飛躍的に伸び、海外へ輸出するなど、大成功したかに見えた。ところが地元の人は、高価なために、ほとんど口にすることができず、輸出に回されているのだ。また面白いことに、日本のバス釣りと同様、「アフリカンゲームフィッシング」として脚光を浴び、日本からも多くのアングラーたちが淡水魚最大のビッグゲームを楽しむためにやってくるという。ビクトリア湖の財産を食い潰して繁殖したナイルパーチは、確かに大きな経済効果をもたらしたが、その効果の裏に、様々な問題が表面化していった。
もともとビクトリア湖に生息していた魚の殆どが草食性だった。そこに、肉食性のナイルパーチを移入したことによって、もともといた固有種400種は200種まで激減、湖の生態系は壊滅的な状態になってしまった。ビクトリア湖の魚たちは、沿岸の藻類を食べていたが、在来種が激減すると、湖には藻がはびこるようになった。藻類が湖に増えすぎると、湖が酸欠状態になる。さらに多くの在来種が絶滅の危機に瀕しているいう。

ふーむ。
その上位サイト。
生物多様性を脅かす移入動物問題

生物多様性を脅かす移入動物問題
以下に移入種問題の事例をまとめてみた。アライグマやマングース、混血ザルの出現による遺伝子のかく乱、野生化したヤギ、ビクトリア湖の悲劇・ナイルパーチ・・・いずれも移入種・ブラックバス問題を考える上で、避けて通れない共通の問題を含んでいる。

ということで、いろいろ載っています。
こんなサイトも。
外来種 IUCN日本委員会

ナイルパーチは、1954年に、乱獲を原因とする固有種の漁獲量の激減を中和するために、アフリカのビクトリア湖に導入されました。この魚は、他の種を捕食したり、餌の競合を通して、200以上の固有の種を絶滅させました。ナイルパーチの肉は、他の魚よりも油が多いので、とらえたこの魚を乾かすのに、多くの木が燃料として切り倒されています。このために起こる浸食と排水は、流れ出す栄養分の量を増加させ、湖を、アオコとホテイアオイの侵入に無防備な状態にしてしまいます。これらの侵入は、湖での酸素不足をもたらし、多くの魚が死亡する原因となります。ナイルパーチの商業的開発は、地域の男女を伝統的な漁業や水産物の加工の仕事から立ち退かせてしまいます。この導入の影響は遠くまで及び、環境のみならず湖に依存している地域社会も荒廃させてしまいました。

ホテイアオイ(Water Hyacinth:Eichhornia crassipes)
 
この南アメリカ原産の種は、世界でもっとも害のある水草の一つです。その美しさ、大きな紫色やすみれ色の花は、この水草をポピュラーな池の鑑賞植物としました。今では、5大陸の50カ国以上で見られるようになっています。ホテイアオイは非常に早く成長する植物で、わずか12日位でその数が倍になると知られています。この水草が増えると、水路を塞ぎ、船の交通、水泳、魚釣りを制限してしまいます。ホテイアオイは、日光や酸素が水底や水中植物に届くのを妨げます。固有の水草に対し、ホテイアオイが大増殖し、光を妨げることは、水界生態系の生物学的多様性を劇的に縮小するものです。

で、こんなリストもあります。
世界の外来侵入種ワースト100

kudzu クズ Pueraria lobata

ということで、「クズ」について調べてみました。
秋の七草 Seven representatives of autumn flowers in Janan

また、明治時代に北米に移入されたクズは彼の地で野生化している。クズ・バインと呼ばれ、家畜の飼料として利用はされるが都市近郊ではその強い繁殖力をもてあましている。休暇でしばらく留守をしている間に、駐車して置いた乗用車が覆い隠されてしまったという話もあり、ここではデヴィル・バイン(悪魔の蔓)と恐れられている。 ポリネシアにも分布していると前に書いたが、恐らくこれは有史前に東南アジアから移住してきた人々が持ち込んだ自然帰化植物であろう。フィージーではヤカ、トンガではアカと呼んでいる。飢饉の非常食である。

そういう画像はどうやらいくらでも見つけられるみたいです。
kudzu - Google イメージ検索
↑を見ると、イカス画像がたくさんあります。
こんなのとか。
Kudzu
↑車を覆いつくすクズの写真三枚その他。
LUHNA Chapter 4: Changing Patterns in the Number of Species in North American Floras
↑既存の植物を覆いつくすクズの画像。
KCS and Kudzu DVD - Exciting Railroad Action
↑クズ高原の中を行く列車。
ビデオメッセージ「外来侵入種と生物多様性」

IUCNチーフ・サイエンティスト ジェフリー・マクニーリー氏 ビデオメッセージ
(日本語翻訳:古田尚也)
 
ジェフリー・マクニーリー氏
 
「移入種」。この言葉について、いま人々は多くのことを考え始めるようになっています。日本から北米大陸に移入され、アメリカ南部を侵略した植物があります。それは、クズとよばれる植物です。クズは大変成長の早いつる性の植物です。クズが米国に移入されたのは、まさにその大変早い成長力のためでした。成長の早い魔法の植物だと考えられたのです。そして、実際そのとおりでした。クズは完全に自生の植物や植生を圧倒してしまったのです。そればかりか、クズが夜中に自分たちのベッドルームに侵入してくるのではないかという恐怖に人々を陥れるようにさえなったのです。これは、侵略的移入種に関するごく些細な例の一つです。
しかし、なぜ現在、こうした移入種の問題が注目されているのでしょうか?その理由は貿易のグローバリゼーションにあります。日本は貿易国です。日本は、世界のさまざまな国に製品を輸出し、そして世界から多くのものを輸入しています。日本のコンテナ船は、大量の荷物を積み込んだコンテナを満載し、世界中を移動しています。オランダやギリシャも含め、貿易国は同じです。いまこの瞬間に、約6百万ものコンテナが世界中を移動しているのです。

どーも君が主役の触手エロ漫画みたいな感じです。
ところが何と! ボランティアでこんな恐ろしいことをしている人たちが。
クズ(葛)

クズは繁殖力が旺盛で、日本では「害草」扱いされていますが、アメリカではクズ・バインと呼ばれ、家畜の飼料として高く評価されています。また成長が早いところから、土砂の流出を防ぐ目的で堤防に植えられることもあります。ルーズベルト大統領のニューディール政策最大の事業「テネシー河谷開発(TVA)」では、日本からもたらされたクズが、土壌保全や水源確保に重用され、ダム建設の支えになったそうです(週刊朝日百科「世界の植物49号」より)。
相生市の相生小学校では、地球緑化に役立てようと1989年から全校でクズの種を集め、NPO団体を通じてフィリピンへ送っているそうです。

益のある植物としてのクズについても、少し調べたくなりました。
この「NPO団体」というのは、以下のところだと思います。
NPO法人IKGS

1992年(平成4年)6月6日に山南町で『わが町の葛を生かそう』という演題の講演会が開催されました。この講演会に参加した私たちは、「当地ではやっかいもの扱いの葛も、生かし方次第で火山灰砂漠の緑化に役立つ」ということと同時にその前年、世紀の大噴火をしたフィリピン、ヒナトゥボ火山の被災地の悲惨さと、そこに暮らすアエタ族のことを講師の津川兵衛教授(神戸大学農学部)から学びました。そして、この不毛の地に未来を築かなければならないアエタ族の人々のことや、砂漠化の進む地球のことを考え早く被災地を緑化しなければならないことに気付きました。
そこで、日本の山野に自生する葛の種子を被災地に送り緑化を進めようと、葛の種子を集めるボランテ ィア活動に取り組みました。また、葛を通じて知り合ったアエタ族との文通にも参加し、国際理解を深めて います。このように山南町内外の多くの人たちが、田舎にいながら、誰にでもできる地球緑化を軸とする 国際協力を実践してきました。

いろいろ植生とか違うから、大繁殖ということはなさそうです。
第1章  クズってどんな植物なの? クズの「クー博士」がご案内します

特定非営利活動法人IKGS
国際葛グリーン作戦山南(初期のころの団体名)
IKGSの活動の始まり1993年
葛(クズ)から活動は始まった
(現在はクズによる緑化は行っていません)

やっぱり。
もうちょっと書きたいのだけれど、今日は眠たいのでこれまでにします。
以下の本を読むとちょっといいのかな。

Amazon.co.jp: 移入・外来・侵入種―生物多様性を脅かすもの: 本: 川道 美枝子,堂本 暁子,岩槻 邦男

(このエントリーは某氏のmixi日記を参考に書きましたが、mixiなので少し言及が難しいのです。某氏様、どうもすみません)
 
これは以下の日記に続きます。
映画『ダーウィンの悪夢』に関する嘘について