お前ら本当に「反スラップ法」って目を通してみたの?

見出しは演出ですが、少しトホホかもです。
 
以下のところから。
VAMPIRE ! - 冗談じゃない

ブログは発言者が特定でき責任の所在も明確である。以下は上記リンク記事からの引用。「ブログという手段が攻撃対象となれば、そこでは自由闊達な意見交換や情報発信は著しく制限を余儀なくされる。」何か冗談じゃない、、、という気がしてきませんか?

当たり前のことだと思ってたんですが、ブログでの「自由な発言」と、「嘘あるいは事実が確認できていない発言」とは、必ずしもイコールなわけではありません。
たとえば、「○○監督の××という映画を見たがつまらなかった」「いやそんなことはない」というのは「自由闊達な意見交換や情報発信」ですが、「○○監督は精神病の治療を受けている」というようなことは、事実が確認できない時点では情報を流すべきではないし、流してしまった情報が事実と異なっていた場合は訂正と謝罪をすべきだ、というのは、別にブログに限らずあらゆる「情報の送り手」にとっては常識だと思っていたのですが。
その程度の「情報流布の制限」も我慢できませんか。その場合は仕方ないので、どうなるかは不明ですが、やはりブログなどではなく匿名の掲示板を利用するのがいいかもしれません。「劣化ウラン弾」の、本当という事実が確認できない情報に悩まされた身としては、ネットの情報に対する信頼度は、発言者が特定できるサイト・ブログでもたいしたことがない、というのが分かっているので、あまり気にはしていませんが。
ちなみに、
烏賀陽弘道氏のイベント開催される 混乱と反省の日々/ウェブリブログ

もし、個人の発言がただちに法的な手段に訴えられてしまうということになれば、

というのは、「共謀罪」に反対している人たちと同じような何かを感じます。
というところで、以下のテキストが引用されているのを読んで驚愕。
newsmemo@sarutoru - オリコン個人提訴裁判を反スラップ法理の切り口でみる

最近以下のサイトで知ったが、反スラップという法理があるようだ。スラップとはStrategic Lawsuit Against Public Participation (公衆の言論を抑圧する戦略的訴訟)。これは、資力のある大組織あるいは稀に個人が、資力のない弱者による批判を封じ黙らせるために、訴訟による過大な負荷を与えることを目的として起こす意図的訴訟を指す。下記サイトでは恫喝訴訟と訳している。

「Public Participation」って「公衆の言論」という意味ではなく「公衆の関与」という意味で、「言論の自由」とは少し関係はあるにしても、「公衆の言論を抑圧する恫喝訴訟」の判例はうまく見当たりませんでした。
ここらへんは、ぼくの法的用語を含む英語力の不足だと思いますので、ちょっと確認を取りたいところです(結果的にお詫びと訂正をすることになるかもしれませんが)。
以下のところによると、
California Anti-SLAPP Project
California Anti-SLAPP Project:Introduction

SLAPPs -- Strategic Lawsuits Against Public Participation -- are civil complaints or counterclaims (against either an individual or an organization) in which the alleged injury was the result of petitioning or free speech activities protected by the First Amendment of the U.S. Constitution. SLAPPs are often brought by corporations, real estate developers, or government officials and entities against individuals who oppose them on public issues. Typically, SLAPPs are based on ordinary civil tort claims such as defamation, conspiracy, and interference with prospective economic advantage.

確かに「言論の自由」に関する判例もありそうなんですが、今の体力ではちょっと当たれそうにない。
こっちも参照か。
Society of Professional Journalists: Anti-SLAPP Model

Because often conflicting constitutional considerations bear on anti-SLAPP statutes, the Act is in many respect an exercise in balance. The triggering "action involving public participation and petition" is defined so that the special motion to strike may be employed against all true SLAPPs without becoming a blunt instrument for every person who is sued in connection with the exercise of his or her rights of free speech or petition. To avoid due process concerns, the responding party's burden of proof is not overly onerous, yet steep enough to weed out truly baseless suits. Finally, to reduce the possibility that the specter of an anti-SLAPP motion will deter the filing of valid lawsuits, the fee-shifting structure is intended to ensure proper compensation without imposing purely punitive measures. In these ways and more, the Act serves both the citizens' interests in free speech and petition and their rights to due process.

SLAPPについて - 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 [ITmedia オルタナティブ・ブログ]

日本では、SLAPPが全然OKということになってしまうと、個人が実名ブログ等で正当な理由に基づいて企業を批判することが困難になる可能性があります。そうなると、結局、批判は匿名掲示板でということになってしまいます。ネット言論の適正化のためにも何らかの形でSLAPPには歯止めをかけてもらいたいものです。

どうなるんでしょうねぇ。「正当な理由に基づいて」の幅が難しい判断であります。
以下のテキストも、元気になったら目を通してみよう。
2000年アメリカサイバースペース法入門(3)

Developments in the Law---The Law of Cyberspace, 112Harv.L.Rev.1574,1610(1999)
Robert M.O'Neil, The Drudge Case:A Look at Issues in Cyberspace Defamation, 73Wash.L.Rev.623(1998)
Michael Hadley, Note, The Gertz Doctrine and Internet Defamation, 84Va.L.Rev.476(1998)
高橋和之松井茂記編『インターネットと法』39-(1999)
山口勝之「サービス・プロバイダーの法的責任(下)」 NBL643号41頁(1998)
後藤啓二「インターネット上の誹謗中傷、詐欺その他違法・有害情報の現状 と対策について(上)(下)」ジュリスト1159号, 1160号(1999)
藤倉皓一郎「アメリカにおける名誉毀損に対する懲罰的損害賠償の機能」同編集 代表『英米法論集』479頁(1987)
望月礼二郎『英米法』233,249頁(新版 1997)

とにかくアメリカでは、どういうことを言った人が、どういう企業・団体に「恫喝訴訟」されたのか、その例がもっと知りたいのだった。
単に「アメリカにはスラップ・反スラップというものがあるらしい」以上の情報が欲しい、ということですね。