アフリカにウナギを捕まえにいく人の話(『アフリカにょろり旅』)

 この本はとても面白かったのでした。椎名誠旅行記とかお好きな人におすすめ。

アフリカにょろり旅

アフリカにょろり旅

★『アフリカにょろり旅』(青山潤/著/講談社/1,680円)【→bk1】【→amazon

世界で初めて、ニホンウナギの産卵場をほぼ特定した東京大学海洋研究所の「ウナギグループ」。このたび、研究員の著者に下った指令は、ウナギ全18種類中、唯一まだ採集されていない種「ラビアータ」を捕獲することだった。―ドイツや台湾の研究チームを出し抜くため、海洋研のターミネーターはアフリカへ。

 だいたいこのアフリカの地図をご参考に。
世界の国々 / アフリカ
 この地図の「マラウイ」「モザンビーク」「ジンバブエ」の3か国、約4151キロをほぼバスを利用して*1、湖・河のウナギを求める、というワンダフルな旅なのです。
 アフリカとは、だいたいこんな感じの土地。p27-28。

(前略)私の印象では、アフリカ人はとにかく熱い。数年前、ケニアを訪れたとき新聞で見た四枚の組写真を思い出した。一枚目と二枚目は、何やらたくさんの若者が、一人の男に暴行を加えている様子だった。そして三枚目では、若者たちが男の手足を持って、どこかへ運んでいる。衝撃のラストは、数本のタイヤをかぶせられた男が炎に包まれている図であった。
「なんじゃこれは!」
 私は思わず口走った。ケニア滞在五年目になる友人によると、「有名な観光地を社会見学中の大学生のグループが、スリを捕まえた。大手柄!」という記事らしい。
「捕まえたんじゃないだろ! 燃やしちゃったんだろ! これが手柄か? エッ!」
 友人はゆっくりと天井を見上げ、
アフリカだからな
 と、静かに言った。

 というわけで、むやみに陽気で血の気の濃い人が多いマラウイバスが通る道路とその脇の数メートルを残してあたり一面が地雷原という、内戦後のすさんだ光景下のモザンビーク、都会は都会らしくて湖のほとりはリゾート地だったジンバブエ、という国を、低予算で現地の人をだましながら*2、苦労して8個体のラビアータを手に入れた著者とその弟弟子の渡邊俊*3。次第に消耗していく二人の、ハードながら楽しい、でも体験したいとはあまり思わない珍道中テキストなのでした。映画『ロード・オブ・ウォー』や『ホテル・ルワンダ*4に出てくるアフリカ・アフリカ人は、いくら何でも嘘だろうと思っていたんですが、若干の真実が混じっているのかも知れず。
 「ラビアータ」というウナギはどんなものかと思って検索してみたら、ちゃんと画像がありました。インターネットってすごいなぁ。正式な学名は「Anguilla bengalensis labiata」というらしいです。
Anguilla labiata - Google 検索
Anguilla labiata - Google イメージ検索
 以下のところには、マラウイで採れる(採れた)魚の画像があります。これはすごい。
Gallery of Non-Cichlid Fish from Lake Malawi
 テキストはこんな感じ。
Lake Malawi Non-Cichlid Fish

True Eels

Occasional specimens of mottled eels (Anguilla bengalensis labiata) are found in Lake Malawi. Most specimens I have seen are very large indeed- at least 1m long. They are believed to eat fish. These eels migrate to the Indian Ocean to spawn. The Kapichira Falls in southern Malawi form the major barrier to fish movement between the Zambezi and Lower Shire Rivers downstream and the Lake Malawi/Upper & Middle Shire River catchments upstream (Tweddle & Lewis 1979). The mottled eel seems to be the only fish able to get past this barrier. They are called 'solomon fish' in Malawi, although I have yet to find out why.

 1メートル以上あるのが普通で、インド洋からやってきて、カピチラ滝が邪魔にならない唯一の魚で、「ソロモン魚」となぜか呼ばれているそうです(パラフレーズ翻訳)。

*1:わかりやすい比較になるかは不明ですが、東北自動車道川口ジャンクションから青森インターチェンジまでが679.5キロ。時速100キロで飛ばして6時間47分だそうです。もちろんアフリカではそんなに飛ばせない

*2:調査研究なんて言ったら許してくれないモザンビークでは、「ただの釣り・魚好き」のフリをしたり、とか

*3:二人の師匠は東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授

*4:映画『ダーウィンの悪夢』は結局見損ないました